七人のバ美肉 ~美少女V事務所を立ち上げたら、オッサンたちしか来なかった~

椎名 富比路

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第九章 バレンタインライブ!

第104話 ある意味ユニコーン

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 あの一件は、一応落ち着いたはずだ。

「だけど、凶器を持っていたので、結局警察沙汰に」

 目撃者の一般人が通報してしまい、警察が来る羽目になったという。

「話し合いもできて、殺意も否定したので、なにごともなかったことにしたんだけど」

 けじめということで、裁判を開くことにしたそうだ。

「大変だったな」

「相手は、ストーカーだからね」

 被疑者女性は素人時代から、ずっと魅罪みつみにつきまとっていたらしい。

「いわゆる同担拒否ってやつ?」

「そうそう。独占欲が強いんだよ。言っても利かないし」

「ユニコーンだな。ある意味」

 自分以外の交際相手を認めない、あるいは交際自体をよしとしないリスナーを、伝説上のモンスターにたとえることがある。

「とにかく、その人は自分以外の女性との接触を許さない人だったな」

「それで、夜職を辞めた感じ?」

「まあ、そんなところ」

 で、Vになって元ホストの求心力で一躍スターになったのだが、またしてもその女性が現れたと。

「で、さすがに社長も危険を感じてくれてさ。二度と顔を見せないようにって、厳しく対処してくれて」

 とはいえ、魅罪がぜんぜん違う世界に行ってしまったことで、彼女の興味は完全に薄れていたそうだ。

「あの人が好きだったのはホストであって、俺自身ではなかったわけよ」

「それはそれで、寂しいな」

「いや。清々してる。あんな思いは、もうゴメンだね」

 とはいえ魅罪は、辞める気持ちはあったという。

「これ以上、事務所に迷惑はかけられない。でも社長に相談したら、小雪こゆきが引き止めてくれた」

「もちろんだ。オレは、居場所のない奴らに居場所を作ってやりたいって思って、このグループを作ったんだから」

 酔いつぶれていると思われた小雪が、ムクリと頭を持ち上げた。
 
「へえ。そうだったのか?」

「そうだ、つばさちゃん。オレは、自分が事務所からいらないんじゃないかって思っていた時期があってさ。ある意味、これは賭けだったんだ」

 伸び悩みの時期で、小雪は新しい売り込み方を模索していた。それでも行き詰まって、最終的にV活を選ぶ。

「結果的にはよかったよ。仲間にも出会えたし、同じように悩んでいる人たちっているんだなと思えた。そう考えたらさ、オレの悩みなんて小さいもんだったよ」

「飛ぶ鳥を落とす勢いで人気が出ている今では、考えられないけどな」

「吹っ切れたらな、なんでもやってやろうって思えるようになったんだ。おかげで、今が一番充実している」

 すごいな。VTuberになるってのは。

 エンタメは夢を与える仕事というが、自分を鼓舞するために飛び込む業界でもあるってわけだ。

「だからよ。ユニコーン一匹に潰されるなんて、おかしいだろ。やってらんねえって」

 そんな思いから、小雪は魅罪を引き止めたという。

「これからも、ハチャメチャにやっていこう。魅罪」

「おう、リーダー」

 二人は、ジンで乾杯した。

「つばさちゃん。こういうの、いいな」

「男の友情だな、ゆーなちゃん」

 オレたち全員、バ美肉だけどなっ。
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