世界にダンジョンができたせいでセミリタイアに失敗した男、冒険者になって無双

椎名 富比路

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第五章 FIRE失敗民、最後の戦い!?

第68話 最終話 さらば異世界!?

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 ダンジョン・ショックを起こしたバールが死んだことで、地球と異世界との間で「揺り戻し」現象が発生しているという。

 地球が、もとに戻りつつあるのだ。
 
 ダンジョンから戻っても、ロニはまだ駄々をこねていた。

「嫌だ! せっかく仲良くなったのに、ミツルたちとお別れなんて!」

 オレにしがみついてくるなんて、今までのロニにはなかったことだ。
 かなりショックだったんだな。

 マリエがなだめているが、効果は薄い。

「友達なら、シュリがいるだろ。オーゼだって、あっちの出身だ。ガマンしろ」

「せやで。そこまで拒絶されたら、ワイらも悲しいで」

 ロニを説得してみる。

「そうだけど。ミツルは色々教えてくれた!」

「ええ。こんな美人の奥さんがいるのに、自分から死のうとするようなやつだけど」

 マリエが、オレに嫌味を言う。

「悪かったって! あれが最善だと思ったんだ。オレに思い残すことなんて、なかったんだって! 身重のマリエを、異世界に連れて行くわけには行かないし」
 
「身重?」

「そうなの。どうも、そうらしくて」

 お腹をさすりながら、マリエが告げた。

「おめでとう! だけど……」

 マリエが出産する頃、ロニはいないかもしれない。

「お姉さん、なんとかならないの!?」

 ギルド受付のお姉さんに、ロニは詰め寄った。

「こればかりは、どうしようもありません。確実に、ゲートは閉じつつあります。異世界へのルートも限られるでしょう」

「どうしても、異世界と地球は、行き来できなくなるの?」
 

「はい。あと三〇〇年後には」

 
「……三〇〇年後?」

 ロニが、指を三本立てる。

「はい。三〇〇年経てば、もうあなたがたの世界と地球は、交流がなくなるでしょう」

 そういえばバールのヤツ、「あと三〇〇年は世界ダンジョン化が遅れる」と言っていた。

 世界にダンジョンを発生させたバールの力が逆流しているため、世界が元に戻っていくのは確からしい。
 だが、それは三〇〇年ほどかかるだろうとのこと。

 つまり、オレたちが生きている間に、異世界へのゲートが閉じることはない。


「なあんだあ。驚かさないでよね」

 ロニが、腹を抱えて笑い出す。


「早とちりが過ぎたな。今夜は、オレの家でちょっとパーティするか?」

「ええな。嫁にも断りを入れとくわ。今日くらいは付き合うで」

「酒を飲むか? うちは誰も飲まないんだが」

「用意してくれるんか? ありがたいで!」

 まず、酒屋によるのは確定と。

「なにを食いたい?」

「お鍋!」
 
 みんなで箸をつつき合える鍋を、ロニがリクエストした。

「よし。帰りに、鍋の具材を買おう」
 
 マリエに代わって、オレが運転しよう。

 
 サイドミラーに、ヒガンが。
 
「ありがとうよ、ヒガン」

 ヒガンがオレに、手を振った気がした。
 

(完)
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