71 / 71
第五章 FIRE失敗民、最後の戦い!?
第68話 最終話 さらば異世界!?
しおりを挟む
ダンジョン・ショックを起こしたバールが死んだことで、地球と異世界との間で「揺り戻し」現象が発生しているという。
地球が、もとに戻りつつあるのだ。
ダンジョンから戻っても、ロニはまだ駄々をこねていた。
「嫌だ! せっかく仲良くなったのに、ミツルたちとお別れなんて!」
オレにしがみついてくるなんて、今までのロニにはなかったことだ。
かなりショックだったんだな。
マリエがなだめているが、効果は薄い。
「友達なら、シュリがいるだろ。オーゼだって、あっちの出身だ。ガマンしろ」
「せやで。そこまで拒絶されたら、ワイらも悲しいで」
ロニを説得してみる。
「そうだけど。ミツルは色々教えてくれた!」
「ええ。こんな美人の奥さんがいるのに、自分から死のうとするようなやつだけど」
マリエが、オレに嫌味を言う。
「悪かったって! あれが最善だと思ったんだ。オレに思い残すことなんて、なかったんだって! 身重のマリエを、異世界に連れて行くわけには行かないし」
「身重?」
「そうなの。どうも、そうらしくて」
お腹をさすりながら、マリエが告げた。
「おめでとう! だけど……」
マリエが出産する頃、ロニはいないかもしれない。
「お姉さん、なんとかならないの!?」
ギルド受付のお姉さんに、ロニは詰め寄った。
「こればかりは、どうしようもありません。確実に、ゲートは閉じつつあります。異世界へのルートも限られるでしょう」
「どうしても、異世界と地球は、行き来できなくなるの?」
「はい。あと三〇〇年後には」
「……三〇〇年後?」
ロニが、指を三本立てる。
「はい。三〇〇年経てば、もうあなたがたの世界と地球は、交流がなくなるでしょう」
そういえばバールのヤツ、「あと三〇〇年は世界ダンジョン化が遅れる」と言っていた。
世界にダンジョンを発生させたバールの力が逆流しているため、世界が元に戻っていくのは確からしい。
だが、それは三〇〇年ほどかかるだろうとのこと。
つまり、オレたちが生きている間に、異世界へのゲートが閉じることはない。
「なあんだあ。驚かさないでよね」
ロニが、腹を抱えて笑い出す。
「早とちりが過ぎたな。今夜は、オレの家でちょっとパーティするか?」
「ええな。嫁にも断りを入れとくわ。今日くらいは付き合うで」
「酒を飲むか? うちは誰も飲まないんだが」
「用意してくれるんか? ありがたいで!」
まず、酒屋によるのは確定と。
「なにを食いたい?」
「お鍋!」
みんなで箸をつつき合える鍋を、ロニがリクエストした。
「よし。帰りに、鍋の具材を買おう」
マリエに代わって、オレが運転しよう。
サイドミラーに、ヒガンが。
「ありがとうよ、ヒガン」
ヒガンがオレに、手を振った気がした。
(完)
地球が、もとに戻りつつあるのだ。
ダンジョンから戻っても、ロニはまだ駄々をこねていた。
「嫌だ! せっかく仲良くなったのに、ミツルたちとお別れなんて!」
オレにしがみついてくるなんて、今までのロニにはなかったことだ。
かなりショックだったんだな。
マリエがなだめているが、効果は薄い。
「友達なら、シュリがいるだろ。オーゼだって、あっちの出身だ。ガマンしろ」
「せやで。そこまで拒絶されたら、ワイらも悲しいで」
ロニを説得してみる。
「そうだけど。ミツルは色々教えてくれた!」
「ええ。こんな美人の奥さんがいるのに、自分から死のうとするようなやつだけど」
マリエが、オレに嫌味を言う。
「悪かったって! あれが最善だと思ったんだ。オレに思い残すことなんて、なかったんだって! 身重のマリエを、異世界に連れて行くわけには行かないし」
「身重?」
「そうなの。どうも、そうらしくて」
お腹をさすりながら、マリエが告げた。
「おめでとう! だけど……」
マリエが出産する頃、ロニはいないかもしれない。
「お姉さん、なんとかならないの!?」
ギルド受付のお姉さんに、ロニは詰め寄った。
「こればかりは、どうしようもありません。確実に、ゲートは閉じつつあります。異世界へのルートも限られるでしょう」
「どうしても、異世界と地球は、行き来できなくなるの?」
「はい。あと三〇〇年後には」
「……三〇〇年後?」
ロニが、指を三本立てる。
「はい。三〇〇年経てば、もうあなたがたの世界と地球は、交流がなくなるでしょう」
そういえばバールのヤツ、「あと三〇〇年は世界ダンジョン化が遅れる」と言っていた。
世界にダンジョンを発生させたバールの力が逆流しているため、世界が元に戻っていくのは確からしい。
だが、それは三〇〇年ほどかかるだろうとのこと。
つまり、オレたちが生きている間に、異世界へのゲートが閉じることはない。
「なあんだあ。驚かさないでよね」
ロニが、腹を抱えて笑い出す。
「早とちりが過ぎたな。今夜は、オレの家でちょっとパーティするか?」
「ええな。嫁にも断りを入れとくわ。今日くらいは付き合うで」
「酒を飲むか? うちは誰も飲まないんだが」
「用意してくれるんか? ありがたいで!」
まず、酒屋によるのは確定と。
「なにを食いたい?」
「お鍋!」
みんなで箸をつつき合える鍋を、ロニがリクエストした。
「よし。帰りに、鍋の具材を買おう」
マリエに代わって、オレが運転しよう。
サイドミラーに、ヒガンが。
「ありがとうよ、ヒガン」
ヒガンがオレに、手を振った気がした。
(完)
21
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜
もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。
ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を!
目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。
スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。
何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。
やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。
「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ!
ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。
ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。
2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
外れスキルと言われたスキルツリーは地球の知識ではチートでした
あに
ファンタジー
人との関係に疲れ果てた主人公(31歳)が死んでしまうと輪廻の輪から外れると言われ、別の世界の別の人物に乗り替わると言う。
乗り替わった相手は公爵の息子、ルシェール(18歳)。外れスキルと言うことで弟に殺されたばかりの身体に乗り移った。まぁ、死んだことにして俺は自由に生きてみようと思う。
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる