3 / 9
「おやすみなさい」で、ブヒる姫
「カタカタ、ッターン」で、ブヒる姫
しおりを挟む
翌日、本格的な部活動が始まった。
「具体的に、何をするの?」
「まあ当分は、論文作成かな?」
部活動である以上、何かの成果を出す必要がある。
動画はもちろん、研究レポートなど。
「難しそう」
「大丈夫。ASMRは、懐が深いから」
ひところでASMRといっても、様々な種類がある。PCのキーボードを叩く音もそうだ。ゲーミングPCなんてのもあって、ワケがわからない。
情報料理教室で譲ってもらった余り物のキーボードを、音更さんは無造作にガチャガチャ鳴らした。
「今のがメンブレン。一般的にデスクトップPCで使われるキーボードね。で、これがパンタグラフ」
続いて音更さんは、自前の薄型ノートをパチパチと鳴らす。
「これがメカニカルね」
カチャカチャという機械音が、部室に響き渡る。
「うるさいね」
「そうなんだよ。あたしもそこまで好きじゃなくてさ」
音更さんが、流行のゲーミングキーボードを人さし指だけでカチャカチャ言わせる。
ちなみに、音更さんが持っているのは、テンキーに近いキーボードである。ジャンク屋のワゴンで仕入れた「左手用キーボード」なるものらしい。一二円で売っていたという。音を聞きたいだけだから、実用性はなくていい。
「当時は軸……内部構造のことね。その軸が四種類だけみたいだったんだけど、最近はメーカーが独自に開発してて、もうゴチャゴチャになってる。ユーザーの触り心地に合わせているみたい」
やたら甲高い音を立てる軸や、コツコツとメンブレンに近い音を出す軸だったりした。
「タイプライター型キーボードとかあったんだけど、高い割に安定感なくてさ。いい商品じゃないとダメみたい」
言いながら、音更さんは薄型ノートを叩く。「懐かしのタイプライターを触ってみる」という動画を流し始めた。
昔懐かしい、といっても当時を知らないんだけれど。
「ガションガションっていって、気持ちが落ち着くね」
「でしょ? これがASMRなの。リズミカルな音が心地いいでしょ?」
まるで自分がアップした動画のように、音更さんが説明する。
なんとなく、良さがわかってきた。
「でもこの音、よく聞くと打鍵音じゃないね」
俺は、音声が出ているスピーカーに耳をこらす。
紙に文字をタイプしてる音だった。
「ホントだ。耳を澄ませてみると、打鍵の音は普通みたい。パンチングの音なんだね」
タイプ音自体は、キーボードの童画と大差はない。
「発見したね」
ひと言告げて、俺は大変なことをしていると気づく。
音更さんと顔が近かったのだ。
「ンピュププププププププププププププーッ!」
机の前で、音更さんが崩れ墜ちた。腕で顔を隠す。
「もう不意打ち」
耳まで赤くして、音更さんはひいひいと笑い続ける。
「下校時間だよ。立とう」
「無理無理。顔見せられない」
ツボに入ってしまったらしく、音更さんは立ち上がれない。
「はあーっ。もう反則」
「ゴメンって」
ようやく落ち着いた音更さんを、どうにか立たせた。
「声ヤバい。妊娠する」
「そんなに?」
クラスでも高嶺の花で、女子からも距離を置かれている美少女から、衝撃的な発言が飛ぶ。
「うん。ねえ、連絡先交換してなかったよね?」
「考えたら、そうだった。いいの?」
音更さんは快く承諾してくれた。
夢みたいだ。クラス一の美少女と、連絡先を交換できるなんて。
俺の耳の方が、赤くなりそうだった。
「具体的に、何をするの?」
「まあ当分は、論文作成かな?」
部活動である以上、何かの成果を出す必要がある。
動画はもちろん、研究レポートなど。
「難しそう」
「大丈夫。ASMRは、懐が深いから」
ひところでASMRといっても、様々な種類がある。PCのキーボードを叩く音もそうだ。ゲーミングPCなんてのもあって、ワケがわからない。
情報料理教室で譲ってもらった余り物のキーボードを、音更さんは無造作にガチャガチャ鳴らした。
「今のがメンブレン。一般的にデスクトップPCで使われるキーボードね。で、これがパンタグラフ」
続いて音更さんは、自前の薄型ノートをパチパチと鳴らす。
「これがメカニカルね」
カチャカチャという機械音が、部室に響き渡る。
「うるさいね」
「そうなんだよ。あたしもそこまで好きじゃなくてさ」
音更さんが、流行のゲーミングキーボードを人さし指だけでカチャカチャ言わせる。
ちなみに、音更さんが持っているのは、テンキーに近いキーボードである。ジャンク屋のワゴンで仕入れた「左手用キーボード」なるものらしい。一二円で売っていたという。音を聞きたいだけだから、実用性はなくていい。
「当時は軸……内部構造のことね。その軸が四種類だけみたいだったんだけど、最近はメーカーが独自に開発してて、もうゴチャゴチャになってる。ユーザーの触り心地に合わせているみたい」
やたら甲高い音を立てる軸や、コツコツとメンブレンに近い音を出す軸だったりした。
「タイプライター型キーボードとかあったんだけど、高い割に安定感なくてさ。いい商品じゃないとダメみたい」
言いながら、音更さんは薄型ノートを叩く。「懐かしのタイプライターを触ってみる」という動画を流し始めた。
昔懐かしい、といっても当時を知らないんだけれど。
「ガションガションっていって、気持ちが落ち着くね」
「でしょ? これがASMRなの。リズミカルな音が心地いいでしょ?」
まるで自分がアップした動画のように、音更さんが説明する。
なんとなく、良さがわかってきた。
「でもこの音、よく聞くと打鍵音じゃないね」
俺は、音声が出ているスピーカーに耳をこらす。
紙に文字をタイプしてる音だった。
「ホントだ。耳を澄ませてみると、打鍵の音は普通みたい。パンチングの音なんだね」
タイプ音自体は、キーボードの童画と大差はない。
「発見したね」
ひと言告げて、俺は大変なことをしていると気づく。
音更さんと顔が近かったのだ。
「ンピュププププププププププププププーッ!」
机の前で、音更さんが崩れ墜ちた。腕で顔を隠す。
「もう不意打ち」
耳まで赤くして、音更さんはひいひいと笑い続ける。
「下校時間だよ。立とう」
「無理無理。顔見せられない」
ツボに入ってしまったらしく、音更さんは立ち上がれない。
「はあーっ。もう反則」
「ゴメンって」
ようやく落ち着いた音更さんを、どうにか立たせた。
「声ヤバい。妊娠する」
「そんなに?」
クラスでも高嶺の花で、女子からも距離を置かれている美少女から、衝撃的な発言が飛ぶ。
「うん。ねえ、連絡先交換してなかったよね?」
「考えたら、そうだった。いいの?」
音更さんは快く承諾してくれた。
夢みたいだ。クラス一の美少女と、連絡先を交換できるなんて。
俺の耳の方が、赤くなりそうだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる