ダンジョンを出禁にされたJK二人組は、母校の旧校舎型ダンジョンを守護するバイトを始めました。

椎名 富比路

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第四章 島全体がダンジョン! ダンジョン部たちのなつやすみ

第34話 おもしれー女

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 あたしたちは、フェリーを待つ。

 朝は飛行機で関西方面まで飛んで、夜の間に船に乗り込む。
 明日の朝でバスに乗り換えて、現場に到着予定だ。
 
「船なんて、数年ぶりに乗ったのだ」

 デリオン姫は、ずっと外の景色を眺めている。

「そこまで、飛行場がないからなー」

 今から向かう場所は限界集落なため、飛行機が降りられる場所がない。
 そのため、船での移動となる。

「おー。ごはん売り場が全部、自販機なのだ」

 この船に、調理スタッフはいない。ジュースだけではなく、お菓子もうどんもすべて冷食だ。レンチンして食べる仕組みである。

「名店のラーメンが、自販機で売られているのだ。選んだラーメンを自販機が解凍してくれる、って書いてある」

「いいね! あたし、これにする」

 あたしは夜食に、煮干しラーメンをチョイスした。

 他のメンバーは、焼きおにぎりやら、たこ焼きをシェアしながら、軽めに食べている。

 煮干しラーメンは回答に時間がかかるのか、まだ出てこなかった。
 ようやく、電子レンジが止まる。
 
「できた! うわ、まだ凍ってる!」

 マシントラブルがあったのか、ラーメンのスープが溶け切っていない。

「そんなー。結構高かったのに」
 
「まあまあ。そんなこともあるわよ、モモ。これでも食べなさい」

 はるたんが、あたしの口にたこ焼きを放り込んだ。あっつい!

「あちゃー。まだ開発途中だからな。よくあるんだよ」

 少年っぽい感じの人物に、声をかけられた。

 といっても、Tシャツを突き破らんばかりに胸が大きい。はるたんと、タメを張れるくらいだろうか。
 風呂上がりなのだろう。身体から湯気が少々立っている。だが髪からは、男もののシャンプーの香りがした。

「そうなん? 案外最新かと思っていたけど、トラブルもあるんだな」

「ああ。なあ、あんた。そのラーメン、オレにくれよ。代わりに、同じのを買ってやる。交換しようぜ」

 この女子、オレ女か。

「えー、悪いよ。このままで」

「いいからいいから。オレは普段から食べ慣れてっからさ。ちょっとくらい凍ってるのがウマいんだよ」

 同じラーメンを注文している間、オレ女は勝手にあたしの凍ったラーメンを食い始める。スープが固まった氷を、ゴリゴリと音を鳴らしながらかじっていた。

「あーこの氷がさぁ、煮凝りみたいでウマいんんだよ」

 この女、かなり特殊な味覚を持った人物らしい。

「船旅、いいよな。オレ、よくバイクで船乗るんだよ。今日もだけど」

「そういう旅行も、楽しいよなあ」

「なー。学生のうちに、色々回りてえって思ってさ。あー、うまかった」

 オレ女が、手を合わせた。
 
 あたしも、ラーメンを食べ終える。
 ウチで食べるラーメンは最高だが、これはこれで味わいが深い。

「ピオニー、集まりますよー」

「あーん。すぐ行く。待たせておいてくれ!」

 廊下で声をかけられ、ピオニなる少女は立ち上がった。 
 
「オレはピオニ。獣王じゅうおう ピオニ」

七星ななほし 洲桃すもも。ラーメンごちそうさん」

「いいって。じゃな」
 
 変わったやつだったな。

 でも、これであいつとの出会いが終わりだとは思えない。


 会場であるは、見るからに限界集落だった。
 麝香じゃこう学園も、例外ではない。金盞花きんせんかの旧校舎と、いい勝負である。

 ドワ女、巳柳みやなぎとも、あいさつをかわした。あちらは、専用のバスで来たらしい。さすが、ウチとは規模もガチ度も違う。

「聞いていた通り、一般参加の冒険者もいるのだ」

 この合宿は、オリエンテーリングだけが目的ではない。
 ちゃんとしたダンジョンであり、普通に魔物だって出る。危険度が高いせいで、限界集落になっているのだ。住民が妖怪だから、対処できているだけで。
 とはいえ、一般の冒険者も受け入れるほどには、危ない。

 そんな中、どえらいオーラを放つ一団が。

「あれが、前回優勝チームよ」

 その名も、【勇者連合高校】である。
 勇者……つまり、ダンジョン攻略者を育成するために設立されたガチ勢工場だ。

「みなさん、おはようございます。これで全員ですね? では、ご説明を」

 代表者の麝香学園生徒会長、嵐山あらしやま氏がグラウンドの壇上に上がろうとしたときだった。

「おーい!」と、ナナハンが爆音を上げて校門に入ってきた。不良、って感じでもない。
 
 バイクに乗って、デニムショーパンの女性が現れる。あの格好、どこかで。

「もう! 八時に合流してっていいましたよね!?」

「悪い悪い。道に迷った。っていうか朝飯足りなくてさ、コンビニに寄ってた」

 ヘルメットから出てきたのは、フェリーで会ったオレ女、ピオニではないか。
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