クイズ「番組」研究部 ~『それでは問題! ブタの貯金箱の正式名は?』「資本主義のブタ!」『はあっ!?』~

椎名 富比路

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第三問 『ブタの貯金箱』の正式名称は? ~クイズ王 対 出題者の実姉~

笑顔で和解

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 問題を差し替え、番組を続ける。
 やなせ姉が、木の写真を出す。
 
『次の問題です。日本では「フェニックス」と呼ばれている、この木の正式名称は、何?』

 のんは普通に「ヤシの木」と書いた。当然不正解である。
 嘉穂さんが「カナリーヤシ」と書いて正解だ。
 湊は「富田林」と書いた。いや、富田林市にフェニックス通りってあるけどさ!
 姉さんがしまったという顔になる。答えが一緒だったようだ。

「あんたら、何で息を合わせるようにボケ合ってるんだよ!」

 湊と姉さんの頭にピコピコハンマーを打ち込む。

 その後、湊は水を得た魚のようにボケまくる。

 姉さんも張り合うように、湊とボケ回答合戦を繰り広げた。

 その度に、嘉穂さんの笑い声が溢れ出す。
 その笑いが実に楽しげで、その明るさが周りにも伝染していく。


「というわけで、なんと! 小宮山のん選手、初優勝です!」

 
 勝負は結局、軍艦の問題で大きくリードしたのんが、そのまま勝利を収めた。

「やった!」と、のんが勝利のガッツポーズを決める。

 商品として、のんには○×どらやきの割引券が授与された。

「このメンツでトップってすごいのだ!」
「おめでとうございます!」
「しょーたとの特訓が実ったのだ! ありがとうなのだ!」

 勉強したところ、一問も出ていないけどな!
 
 他のメンバーから、温かい拍手が送られる。

 しかし、そんな勝負なんて、嘉穂さんにとってはどうでもよくなっていたと思う。


 収録が終わり、安堵した空気が漂う。
 お腹を抱えながら、嘉穂さんが笑顔を見せる。

「きょ、今日はすごく笑わせてもらいました。楽しかったです」
「こういうのをお望みなら、もっと出てもいいよ」
「是非お願いします」
 
 あれだけ姉さんを怖がっていた嘉穂さんから、そんな言葉が出るなんて。
 もう、嘉穂さんは姉さんに怯えなくなったらしい。

 緊張がほぐれたのか、嘉穂さんは昌子姉と普通に会話している。
 その光景を見て、番組研とクイズ研の間に、不思議な連帯感が生まれた気がした。
 嘉穂さんと姉さんの仲も、少しはマシになったと思いたい。

「ところでさ、嘉穂さんはどうして、姉さんと仲良くしようと思ったの?」

 確か、嘉穂さんが言い出したんだっけ。そんなに急ぐ事だったのかな?

「ふえ!?」

 何があったのか、頭のてっぺんから湯気が出るほどに、顔を赤らめた。

「うーん。なーんでーかなーっ?」
「なんででしょうねー。晶ちゃあん。お姉さんは教えないぞー」

 湊とやなせ姉は、思わせぶりなセリフを吐く。

「しょーたはやっぱりアホだな」

 三人からツッコまれ、僕は首をかしげる。
 
「それはそうと、嘉穂ちゃん、今度ウチに遊びにおいでよ」

「はあ!? 何言ってるの姉さん!」

 僕がたしなめると、姉さんは横目で僕を見た。

「あれーっ? 誰もあんたの為に誘うなんて言ってないんだけど? 嘉穂ちゃんだけ呼ぶなんて言ってないし」
「ウチもいいの?」

 湊が姉さんに言質を取る。

「いいよ。いつでもおいで」
「よっしゃ。一緒にお笑い談義しましょう」
「それより面白い物があるよ」

 いやらしい笑みを浮かべる姉さん。
 
「たとえば晶太の全裸写真とか」

 僕の全裸写真を披露とか、拷問か!

「調子に乗るなよ、姉さん!」
「心配ないって五歳くらいの時の写真しかないから」

 そうじゃないと大問題になるよ!

「全……」

 しかし、ガタッと言わんばかりに嘉穂さんが硬直する。

「お? 嘉穂ちゃん、やっぱり興味ある?」

 姉さんの質問に、嘉穂さんは鼻息を荒くした。
 
 なぜだ?

(第三章 完)
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