おっさんとJKが、路地裏の大衆食堂で食べるだけ

椎名 富比路

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第二章 JKと幼なじみ人妻教師

第31話 文化祭は模擬店希望者ばかりでモメる問題

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 校長先生と、生徒指導の根本ねもと 里依紗りいさを交え、取材の許可をもらう。

 終業式を終えて、生徒はいないはずだ。いるとしても、文化祭の出し物を何にするか決めるクラスだけだろう。

「では、根本先生、よろしくお願いします」
「よろしくー」
 孝明は営業スマイルで対処しているのに、里依紗はフレンドリーに接してくる。
 幼なじみとは言え、度を超していた。

「それにしても、驚いちゃった。まさか、コーくんが記者さんなんてねー。サラリーマンだとは聞いていたけど」
「まあまあ。では、話を続けましょう」

「はいはいはーい」

 咳払いして、里依紗を押さえ込む。

 打ち合わせ自体は、スムーズに行われた。津村はあくまでも撮影係と天城の護衛役だ。
 女性の天城がインタビュアーなら、相手も緊張しないだろうと。

 主に里依紗が一方的に話しているだけだが。



 この形式が組まれたのは、二〇一〇年代初期だ。
 模擬店希望者があまりにも多すぎたため、生徒会が模擬店の商品にテーマを掲げた。
 生徒会に採用されたら出店OKとしたそうである。



「各企業も注目しているとか」

「そうなんですよー。実際に企業へスカウトされて、そのまま就職しちゃった子もいるくらいでしてー」
 里依紗がゴキゲンで、天城の質問に答えた。

「それでも学生のアイデアですからね。あまり過度に期待されても困るのですが。『老舗のまんじゅうを家庭で再現する方法』は、度肝を抜かれましたけど、その子は元料理人でしたし」


 対照的に、校長は謙遜する。

「そうですねー。我々教師としては、『どれがすごかったか』よりも、『生徒が何かを考え、新しきを作り出すこと』こそ、大切かなと考えております」
 里依紗も、口ではノリノリに語るが、本心は生徒の成長を何よりとしているらしい。

「ありがとうございます。ところで、我が社は新興の小さい編集社です。それなのに、快く取材に応じてくださったのは?」

「よその態度が大きかったのでー。お断りしているんですよー」
 ため息と共に、里依紗が不満を漏らす。

 事情は、孝明も知っていた。

 某出版社の息子が来て、好意的な記事を書く代わりに生徒を紹介しろと強要してきたのである。不祥事が発覚して、出版社は営業を差し止め、そのバカ息子は警察に逮捕されたが。

「なので、信頼できる情報サイトを探しておりまして」
 里依紗の期待を真っ向から裏切っている孝明は、気が気ではなかった。

「さ、左様でございますか」

 まさか、生徒と親しくしている人物がいるとは思うまい。

「どうしたんです、先輩?」

「なんでもねえ」
 天城の問いかけに、孝明は耳打ちで答える。

「では、次回は秋頃に数度ほどお伺い致します。よろしいでしょうか?」
「どうぞどうぞ。密着取材なさっても構いませんよー」
「それですと、生徒さんが緊張なさいます。あとですね……」

 生徒の顔などは伏せると念を押す。
 前回は、フリーライターの身内が身バレしてしまい、大事になった。

「もちろん、お願いします」
 
 打ち合わせは、どうにか終わる。

 車を取りに、校門へと歩く。

「こんにちはー」
 大量の荷物を持った、お提げの女子生徒が、孝明の後ろを過ぎ去っていった。


「は、はい。こんにちは」
 琴子と鉢合わせたくない。孝明はスタスタと早足になる。


「怯えてらっしゃいますね、先輩」
「バカ言え。不審者と思われたくないだけだ。用が済んだらさっさと出……!?」


 目の前に、見知ったJKが走ってきた。


「好美《よしみ》ちゃん、持つよ」


 琴子が現れ、孝明はサッと津村の影に隠れる。


 お提げの少女の持つ手荷物を、琴子は半分持って上げていた。これから帰るのだろう。


「JK相手に緊張なさっていますか?」


「そんなんじゃねえよ! 帰るぞ」
 知らぬ間に大声になってしまい、孝明はとっさに口を塞ぐ。
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