おっさんとJKが、路地裏の大衆食堂で食べるだけ

椎名 富比路

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第三章 夏と海とJK

第49話 やはり馴染みの料理が一番である問題

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 琴子ほどの美人なら、男子は萎縮してしまうのだろう。
 自分も同い年なら、琴子に話しかけたりなんてできなかったかもしれない。

「モテると思った?」
「それなりにはな」
「でも、コメくんは顔で選んでくれたわけじゃないよね」

 孝明は首を振る。
「もちろんだ」

「身体目当て?」
「バカ言うなっ」
「冗談だよ」

 さすがに、その冗談は笑えない。

「コメくん」
「なんだよ?」
「ありがと。あたしの気持ち、分かってくれて」

 孝明は、「うん」とうなずく。

「ホントはね、あたしから告白しようかなーって思ってたの」
 薄々気づいていた。琴子も同じ気持ちだと。

 二人が一緒になるのは、時間の問題だったのだ。

「ケジメを付けたって思っていいのか?」
「男らしかった。あたし、コメくんが『好きになってよかったー』って思ってもらえるような、カノジョになるね」
「期待してる」

 夏の終わり、二人はいつもの顔に戻って、大衆食堂に着いた。


「おう、旅行はどうだった?」


「バッチシ。はい、これあたしたちからお土産」
 琴子がクッキーを、孝明が佃煮を渡す。

「気を使わなくていいんだよ。娘の嫁ぎ先なんだから、行こうと思えばいつでもいけるんだからよ」

「まあまあ、そう言わずに」
 半ば押しつける形で、土産を差し出した。

「何食うんだ?」
「ナポリタン二つ」
「おう」

 パスタがフライパンで踊る。
 この香りを求めて、自分たちはここに帰ってきたのだ。

「それよりおめえら、うまくいったみたいだな?」

 大将の言葉に、引っかかるものがあった。

「え、何が?」



「ずっと手、繋いでるからよ」



 そう言われ、孝明たちは自分たちの手を確認する。


 互いの手が相手の手を、強く握りしめていた。

「いつの間に!」
「全然意識してなかったよ!」

 だからといって、外すのも気が引ける。

「でも、繋いだままだったら食べられないね」
「そうだな」

 名残惜しく、手を離す。 


 ナポリタンの他に、大将は土産も開けた。

「おじさん、あたしたちも食べていいの?」

「いいんだよ。もう一つあるから」
 厨房の奥から、大将は別の土産セットを出してくる。
 家族から宅配で送られてきたらしい。

 佃煮とまんじゅうを、三人でシェアし合う。


 二人はナポリタンを堪能し、店を出た。

 旅行から帰ると、誰か一人は決まって「やはり、家が一番だ」という。
 孝明の場合は、馴染みの味が一番だ。

 が、引っかかることがある。


 が、引っかかることがある。



 琴子は、海外の話をするより、孝明たちと話す方が楽しそうなのだ。



 孝明には、それが気になって仕方がない。
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