おっさんとJKが、路地裏の大衆食堂で食べるだけ

椎名 富比路

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第四章 文化祭と秘密とJK

閑話2-1 学食は当たり外れが大きい問題 前編

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 孝明が夏風邪で寝込んでいる時期と同じく、好美まで。

『今日はご一緒できなくて、ごめんなさい』

 メッセージアプリの文面を見ながら、琴子はため息をつく。

 好美は始業式だけ出席し、翌日に寝込んだ。

 仕方なく、今日は学食で済ます。
 好美に弁当の作り方を教わるまでは、よく学食を利用していた。
 味はまあまあで、値段は手頃だ。

 きつねうどんをトレイに載せて、見知った顔の元へ。

 授業が昼までなので、生徒は他に誰もいなかった。

「んー? 何か用かな?」

根本ねもと 里依紗りいさ先生の座る席に近づく。

 彼女の献立は、カツカレーである。もう半分残っていない。

「お邪魔しまーす」
「どうぞどうぞ、話があるの?」

 空席が目立つのに、担任の元へわざわざ出向くのだ。何かあると思われて当然だろう。

「うん。質問があって」
「文化祭の屋台で何をするか、かな?」

 それもある。だが、それは生徒が決めるべきだ。担任に聞いても仕方がない。

「根本先生は当時、部活の顧問と結婚したんだよね?」

 自分よりずっと大人の男性と、根本は交際していた。何か参考になるのではないか。

「おっ、大人の男性と付き合うってさ、どんなカンジなの?」
「あんた、オトナのオトコと付き合ってるの?」

 慌てて、琴子は両手をブンブンと振る。

「違う違う。聞いてみたいだけ。ほら、あたし、不倫でできた子じゃん。親には聞きづらくてさ。どうやってコミュニケーション取っていいのか、よく分かんなくてさ」

 ウソだ。

 親とはそこそこ話す。
 この間の海外行きは、祖母の具合が悪くなったから、見舞いに行ったのである。

 母が日本人と外国人のハーフであり、琴子はクォーターだった。
 親戚筋で唯一、琴子が黒髪で黒目なのもそれが理由である。

 祖母は優しくて大好きだ。
 が、親戚からはうとまれ、邪険にされている。
 それより、両親が琴子に何度も謝ったことの方が辛かった。

 虚空を見上げ、根本先生はボーッとした顔になる。記憶を辿ろうとしているのか。
 先生の答えを待ちながら、琴子はすっかり冷めたきつねうどんをすすった。

「別にー。手の掛かる子どもをあやす感覚に近いかなぁ? 先生は、ダンナしか男を知らないから、一概には言えないんだけどさ。多分、他の男性だって同じだと思うよ」
「ありがとうございます」


「参考にならなくてごめんねー」
 根本先生が苦笑する。

「もう一つ、質問していい?」
「おっ、好奇心旺盛だね。何でも聞いて」 


 もう一歩、踏み込んでみた。


「先生ってさ、関西出身だよね?」
 

 わずかに、根本先生の表情が曇った気がした。
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