19 / 28
元魔法少女と淫獣枠
合コンの数合わせ感覚で、勇者を呼び出すなよ
しおりを挟む
「お前なあ。いくらじっちゃんと仲がよかったからって」
腕を組みながら、青年が眉間にシワを寄せる。
わたしたちは、辺境の村にたどり着く。
ランの転送魔法で。
「こんなことができるなら、いつだって帰れたじゃん」
「体力がなくなっていたんだよ。こんなの普通、何年に一回くらいしかできん」
この間やっつけた「天ノ邪悪から力を奪ったおかげで、転送魔法が再び使えるようになったのだとか。
帰るつもりがなかったので、使わなかっただけらしい。
「で、この男性が、勇者?」
「そうそう」
「合コンの数合わせじゃねえんだぞ、ランっ」
ひいき目に見ても、勇者てツラではない。
初対面で申し訳ないが。
まるで、非モテ要素を全部固めてできたような。
「変な客まで連れてきてさぁ。誰なんだ?」
わたしたちを確かめるかのような視線を、勇者はこちらに向けてきた。
「いいじゃねえか。せっかくこのラン様が顕現したんだからよぉ」
「だいたい、厄介ごとしかよこさねえじゃんか。で、今日はなんのようだよ?」
「モテ要素を全部じいさまにスティールされたお前さんに、嫁候補をこさえてきた」
勇者の目の色が変わる。
「嫁だあ? 誰だよ?」
「こいつだ」
ランは、ナナミを前に差し出す。
「あの、月代ナナミです」
「ど、どうも。三代目カスガです。勇者をやっています」
わたしも、互いにあいさつをする。
テーブルに招き、勇者はお茶まで出してくれた。
カスガという勇者は、ランの主人である勇者の孫だとか。
「異形とだけ交信できるスマホ」も受け継いでいて、ランと久々に連絡したという。
祖父が死ぬ間際、勇者カスガから力を受け継いだが、祖父のようにモテたりはしていないそうだ。
で、「ちょうどいいから」とランが都合をつけたらしい。
「父親は、受け継がなかったんだな?」
「じっちゃんが死ぬ頃には、もう五〇だったしな。キツイってさ」
家族が先にできてしまったので、危険なことはしたくなかったという。
三〇になったばかりのカスガ孫が、勇者業を引き受けた。
ナナミの方も、自分の身の上を語る。
「魔法少女ですか。すごいな。オレなんかより、ずっと人の役に立ってます」
「でも、今はただの飲んだくれで」
「とんでもない。今でも、誰かの役に立とうとしている。立派ですよ」
卑屈になるナナミを、勇者は立てる。
悪い男では、なさそうだが。
「それでランさん、私はここで何をすれば?」
「えっとな。普通の男は好みじゃねえんだろ? だったら、ここに住めばどうだ?」
腕を組みながら、青年が眉間にシワを寄せる。
わたしたちは、辺境の村にたどり着く。
ランの転送魔法で。
「こんなことができるなら、いつだって帰れたじゃん」
「体力がなくなっていたんだよ。こんなの普通、何年に一回くらいしかできん」
この間やっつけた「天ノ邪悪から力を奪ったおかげで、転送魔法が再び使えるようになったのだとか。
帰るつもりがなかったので、使わなかっただけらしい。
「で、この男性が、勇者?」
「そうそう」
「合コンの数合わせじゃねえんだぞ、ランっ」
ひいき目に見ても、勇者てツラではない。
初対面で申し訳ないが。
まるで、非モテ要素を全部固めてできたような。
「変な客まで連れてきてさぁ。誰なんだ?」
わたしたちを確かめるかのような視線を、勇者はこちらに向けてきた。
「いいじゃねえか。せっかくこのラン様が顕現したんだからよぉ」
「だいたい、厄介ごとしかよこさねえじゃんか。で、今日はなんのようだよ?」
「モテ要素を全部じいさまにスティールされたお前さんに、嫁候補をこさえてきた」
勇者の目の色が変わる。
「嫁だあ? 誰だよ?」
「こいつだ」
ランは、ナナミを前に差し出す。
「あの、月代ナナミです」
「ど、どうも。三代目カスガです。勇者をやっています」
わたしも、互いにあいさつをする。
テーブルに招き、勇者はお茶まで出してくれた。
カスガという勇者は、ランの主人である勇者の孫だとか。
「異形とだけ交信できるスマホ」も受け継いでいて、ランと久々に連絡したという。
祖父が死ぬ間際、勇者カスガから力を受け継いだが、祖父のようにモテたりはしていないそうだ。
で、「ちょうどいいから」とランが都合をつけたらしい。
「父親は、受け継がなかったんだな?」
「じっちゃんが死ぬ頃には、もう五〇だったしな。キツイってさ」
家族が先にできてしまったので、危険なことはしたくなかったという。
三〇になったばかりのカスガ孫が、勇者業を引き受けた。
ナナミの方も、自分の身の上を語る。
「魔法少女ですか。すごいな。オレなんかより、ずっと人の役に立ってます」
「でも、今はただの飲んだくれで」
「とんでもない。今でも、誰かの役に立とうとしている。立派ですよ」
卑屈になるナナミを、勇者は立てる。
悪い男では、なさそうだが。
「それでランさん、私はここで何をすれば?」
「えっとな。普通の男は好みじゃねえんだろ? だったら、ここに住めばどうだ?」
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」
三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。
クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。
中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。
※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。
12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。
身体だけの関係です 原田巴について
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789
作者ツイッター: twitter/minori_sui
小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話
穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
AV研は今日もハレンチ
楠富 つかさ
キャラ文芸
あなたが好きなAVはAudioVisual? それともAdultVideo?
AV研はオーディオヴィジュアル研究会の略称で、音楽や動画などメディア媒体の歴史を研究する集まり……というのは建前で、実はとんでもないものを研究していて――
薄暗い過去をちょっとショッキングなピンクで塗りつぶしていくネジの足りない群像劇、ここに開演!!
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる