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第二章 勇者の妹、王国の姫と仲良くなる。
第8話 ボス退治
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ダンジョンに到着すると、ヤギ頭魔族が大量に現れた。
「ザコは引き受けた。【アース・クロー】!」
先日のように、土魔法で拘束を狙う。
数名の魔族が、土でできた爪によって串刺しに。
だが大半は、土魔法から逃げた。
さすがにお利口さんだな。前回のようには、いかないか。
「ベップおじさん!」
「問題ねえ。【アース・バイト】!」
まあそんなヤツラには、着地ポイントにデカい落とし穴をプレゼントする。
魔物たちは大きく口を開けた落とし穴に落下し、そのまま食われる。
幼い少女をさらおうとするヤツは、奈落に落とす。
ミラベルや、サクラ姫の様子を見る。
ハチを撃退するより簡単に、魔物を倒していた。
新アイテムを活用して、ミラベルはピコハンで魔族をドツき回している。
目を回して、魔族たちが消滅していった。
サクラ姫の方も、同様である。
これだけの数でも、一人で戦えたのか。
ちょっと、姫のことを舐めていたな。
助けなくてもよかったかもとは思わないが、あまりにも強すぎて唖然とした。
さて、残るはボスモンスターだけである。
「出てこい。魔王の子分!」
「ずいぶんと豪華なお客さんじゃないか!」
六本の足で、アラクネがノシノシと歩いてくる。
見た目こそ、それなりにデフォルメされているが、『勇☆恋』本編に出てくるアラクネ並に手ごわそう。
ちなみに、ゲーム本編だと、こいつは序盤の大ボスクラスである。
それが、こんな低レベルそうに現れるとは。
これは、オレのバフが命綱だ。
「あまり強くなさそうだけど、威勢だけはいいね」
「勝負はこれからさ。クモ女」
「そうかい。じゃあ恐怖に身悶えながら死ぬがいいさ!」
アラクネが、口から糸を吐く。
粘性の糸が、ミラベルの武器を奪おうとした。
「【ファイア・ボール】!」
糸の先端に、ファイアボールを当てた。
「そんな小さな火くらいで、アタシの糸が燃えると思っているのかい?」
アラクネの言うとおり、ファイアボール程度の炎では、ヤツの糸は燃やせない。
だが、軌道を変えることはできる。
余計な粘り気を発生させ、壁に取り付けた。
「ミラベル!」
「うん!」
オレの指示を受けて、ミラベルは糸を綱渡りで突撃する。
「くっ」
糸を切り離して、アラクネは逃げようとした。
アイスアーマーで、糸を凍らせる。
「それえ!」
ゴツン、と、ミラベルがアラクネのアゴに一撃を食らわせた。
魔法攻撃力を上げての攻撃だから、結構ダメージが入ったはず。
だが、そんな攻撃でやられるようでは、魔王の配下は名乗れない。
「やるねえ。ちょっと油断してたよ。だが、次は本気でいかせてもらうからね」
尻から糸を大量に吐き出し、大きな巣を作る。
やっぱクモは、巣を作ってからが勝負だよな。
アラクネの姿も、一〇〇%クモの顔に。
「ミラベル。これからは、ああいった昆虫型モンスターと戦うことになる。今のうちに慣れておこうな」
「うん。【ハートビート】!」
ハート型のファイアボールを、ミラベルが放つ。
ミラベルほどの天使となると、打ち出す火球もファンシーになるのだ。
マジ天使である。
だが、そんな天使のキュートな攻撃にも、アラクネは耐えた。
耐えなくてもいいのに。
「ちょいとキツめのビンタを食らった程度だねえ。今度は、こちらからいくよ!」
アラクネが、毒液を吐き出した。
オレは、ミラベルとサクラ姫を抱いたまま跳んだ。
汚染された地面が、そのままダメージゾーンとなる。
つまり、この巣に飛び込まなければならない。
そういった損な役回りは……もちろんオレっしょ!
「それえええ!」
オレは小脇に抱えていたミラベルとサクラ姫を、投げ飛ばす。
直後、自分から巣に巻き付いた。
「アハハ! 仲間の女の子を守るために、わざわざ罠に飛び込むなんてね! いい男だけど、そういう男に女は振り向かないんだよ!」
たしかに、優しすぎる男は女にはバカに見えるのかもしれん。
「それでもいい。推しが傷つく姿を見るくらいなら、オレがそのダメージを負ってやる! 全部抱きしめてやるぜ! 【アイスアーマー】!」
オレは氷魔法で自分の全身を凍らせて、クモの巣から脱出した。自分にクモの巣を引き寄せた。超粘性の糸を、手でグルグルと巻き取っていく。
さっき氷魔法で、固くすれば糸は粘り気を失うってのは調査済みだ。
巻きつける度に、氷魔法で粘り気を奪っていく。
トルコアイスを混ぜてる感じだな。
「なあ!?」
そんな捨て身の攻撃なんて、想定していなかったのだろう。
巣を失ったアラクネが、糸を吐こうとする。
「ミラベル、サクラ姫、やっちまえ!」
サクラ姫が、アラクネの頭を王笏でドツき、口を封じた。
アラクネが複数の足で、サクラ姫を突き刺してくる。
空中戦だというのに、サクラ姫は攻撃に負けない。絶妙な体捌きで、たった一本しかないクモの糸に乗ったまま相手の攻撃を避け続ける。体操の選手ばりの、フィジカルを見せた。
「【ハートビート】、フルパワー!」
ハートの形をした炎を、ミラベルがアラクネの顔めがけてゼロ距離で放つ。
「さっき効かなかった魔法じゃないか! そんな攻撃を何発受けてもアタシは……げえ!?」
アラクネを包むほど特大に、ハートの火球が膨れ上がった。
魔物が、ハートの炎に包まれる。
目をバツ印にして、アラクネが消滅した。
[魔物の配下【アラクネ】討伐に成功しました]
オレの眼の前に、アナウンスが表示される。
同時に、ダメージ床が消滅した。
落ちてきたミラベルとサクラ姫を、キャッチ。
「さて、帰るか」
王城に戻ると、歓迎ムードで迎えられた。
「娘を守ってくれて、礼をいう。褒美をとらすぞ」
「結構です。次の旅がありますので」
アラクネから、ドロップアイテムを大量にもらっている。
これで、ミラベルの装備がより強く、かわいくなるだろう。
ただ、これでサクラ姫とはお別れだ。
一国の王女様ってのは、不自由である。
「じゃあ最後に、お出かけしようよ」
「いいわね。ゼイビアック、今日は馬車はいらないから。街へは、徒歩で遊ぶわ」
老執事に告げて、城の外へ。
思い出づくりとして、サクラ姫と一緒に街を回る。
屋台を回って、アンティークショップでお互いにプレゼントを交換し合う。
この光景、どこかで……。
また眼の前に、メッセージが表示された。
【デートイベント (仮)】
特定の魔物を討伐すると、報酬として「攻略対象とデート」ができます。
推しとの尊いひとときを、楽しんでください。
【補足】
攻略対象を決めたプレイヤーでも、他の攻略対象とのデートは一応できます。
が、推し以外と二人きりにはなれません。
あなたは既に、【勇者の妹:ミラベル】と添い遂げています。
一度決めた推しを、大事になさってください。
ふむふむ。
これが本来、サクラ姫が攻略対象になったときのイベントになると。
ただ、オレはミラベルを恋人として設定している。
なので、サクラ姫を落とすことはできない、と。
姫を推しているプレイヤーが、姫を外へ連れ出す流れになるのか。
で、姫が冒険に出ていく、と。
旅を続けていくうちに、愛が芽生えてハッピーエンド、ってわけか。
うまいこと、できているな。
つまりサクラ姫の元にも、オレみたいなプレイヤーがやってくるってわけだ。
サクラ姫に関しては、別のプレイヤーと幸せになってもらおう。
「ミラベル、あなたたちとの冒険は楽しかったわ。世界が平和になったら、また果樹園にいらっしゃい」
「ありがとう、サクラ姫」
王城に戻って、サクラ姫とミラベルが固い握手をかわした。
「ベップ。あなたも元気で」
「おう。また会おう。サクラ姫」
オレもサクラ姫と、握手をする。
さて、次の街へ向かうとするか。
(第二章 完)
「ザコは引き受けた。【アース・クロー】!」
先日のように、土魔法で拘束を狙う。
数名の魔族が、土でできた爪によって串刺しに。
だが大半は、土魔法から逃げた。
さすがにお利口さんだな。前回のようには、いかないか。
「ベップおじさん!」
「問題ねえ。【アース・バイト】!」
まあそんなヤツラには、着地ポイントにデカい落とし穴をプレゼントする。
魔物たちは大きく口を開けた落とし穴に落下し、そのまま食われる。
幼い少女をさらおうとするヤツは、奈落に落とす。
ミラベルや、サクラ姫の様子を見る。
ハチを撃退するより簡単に、魔物を倒していた。
新アイテムを活用して、ミラベルはピコハンで魔族をドツき回している。
目を回して、魔族たちが消滅していった。
サクラ姫の方も、同様である。
これだけの数でも、一人で戦えたのか。
ちょっと、姫のことを舐めていたな。
助けなくてもよかったかもとは思わないが、あまりにも強すぎて唖然とした。
さて、残るはボスモンスターだけである。
「出てこい。魔王の子分!」
「ずいぶんと豪華なお客さんじゃないか!」
六本の足で、アラクネがノシノシと歩いてくる。
見た目こそ、それなりにデフォルメされているが、『勇☆恋』本編に出てくるアラクネ並に手ごわそう。
ちなみに、ゲーム本編だと、こいつは序盤の大ボスクラスである。
それが、こんな低レベルそうに現れるとは。
これは、オレのバフが命綱だ。
「あまり強くなさそうだけど、威勢だけはいいね」
「勝負はこれからさ。クモ女」
「そうかい。じゃあ恐怖に身悶えながら死ぬがいいさ!」
アラクネが、口から糸を吐く。
粘性の糸が、ミラベルの武器を奪おうとした。
「【ファイア・ボール】!」
糸の先端に、ファイアボールを当てた。
「そんな小さな火くらいで、アタシの糸が燃えると思っているのかい?」
アラクネの言うとおり、ファイアボール程度の炎では、ヤツの糸は燃やせない。
だが、軌道を変えることはできる。
余計な粘り気を発生させ、壁に取り付けた。
「ミラベル!」
「うん!」
オレの指示を受けて、ミラベルは糸を綱渡りで突撃する。
「くっ」
糸を切り離して、アラクネは逃げようとした。
アイスアーマーで、糸を凍らせる。
「それえ!」
ゴツン、と、ミラベルがアラクネのアゴに一撃を食らわせた。
魔法攻撃力を上げての攻撃だから、結構ダメージが入ったはず。
だが、そんな攻撃でやられるようでは、魔王の配下は名乗れない。
「やるねえ。ちょっと油断してたよ。だが、次は本気でいかせてもらうからね」
尻から糸を大量に吐き出し、大きな巣を作る。
やっぱクモは、巣を作ってからが勝負だよな。
アラクネの姿も、一〇〇%クモの顔に。
「ミラベル。これからは、ああいった昆虫型モンスターと戦うことになる。今のうちに慣れておこうな」
「うん。【ハートビート】!」
ハート型のファイアボールを、ミラベルが放つ。
ミラベルほどの天使となると、打ち出す火球もファンシーになるのだ。
マジ天使である。
だが、そんな天使のキュートな攻撃にも、アラクネは耐えた。
耐えなくてもいいのに。
「ちょいとキツめのビンタを食らった程度だねえ。今度は、こちらからいくよ!」
アラクネが、毒液を吐き出した。
オレは、ミラベルとサクラ姫を抱いたまま跳んだ。
汚染された地面が、そのままダメージゾーンとなる。
つまり、この巣に飛び込まなければならない。
そういった損な役回りは……もちろんオレっしょ!
「それえええ!」
オレは小脇に抱えていたミラベルとサクラ姫を、投げ飛ばす。
直後、自分から巣に巻き付いた。
「アハハ! 仲間の女の子を守るために、わざわざ罠に飛び込むなんてね! いい男だけど、そういう男に女は振り向かないんだよ!」
たしかに、優しすぎる男は女にはバカに見えるのかもしれん。
「それでもいい。推しが傷つく姿を見るくらいなら、オレがそのダメージを負ってやる! 全部抱きしめてやるぜ! 【アイスアーマー】!」
オレは氷魔法で自分の全身を凍らせて、クモの巣から脱出した。自分にクモの巣を引き寄せた。超粘性の糸を、手でグルグルと巻き取っていく。
さっき氷魔法で、固くすれば糸は粘り気を失うってのは調査済みだ。
巻きつける度に、氷魔法で粘り気を奪っていく。
トルコアイスを混ぜてる感じだな。
「なあ!?」
そんな捨て身の攻撃なんて、想定していなかったのだろう。
巣を失ったアラクネが、糸を吐こうとする。
「ミラベル、サクラ姫、やっちまえ!」
サクラ姫が、アラクネの頭を王笏でドツき、口を封じた。
アラクネが複数の足で、サクラ姫を突き刺してくる。
空中戦だというのに、サクラ姫は攻撃に負けない。絶妙な体捌きで、たった一本しかないクモの糸に乗ったまま相手の攻撃を避け続ける。体操の選手ばりの、フィジカルを見せた。
「【ハートビート】、フルパワー!」
ハートの形をした炎を、ミラベルがアラクネの顔めがけてゼロ距離で放つ。
「さっき効かなかった魔法じゃないか! そんな攻撃を何発受けてもアタシは……げえ!?」
アラクネを包むほど特大に、ハートの火球が膨れ上がった。
魔物が、ハートの炎に包まれる。
目をバツ印にして、アラクネが消滅した。
[魔物の配下【アラクネ】討伐に成功しました]
オレの眼の前に、アナウンスが表示される。
同時に、ダメージ床が消滅した。
落ちてきたミラベルとサクラ姫を、キャッチ。
「さて、帰るか」
王城に戻ると、歓迎ムードで迎えられた。
「娘を守ってくれて、礼をいう。褒美をとらすぞ」
「結構です。次の旅がありますので」
アラクネから、ドロップアイテムを大量にもらっている。
これで、ミラベルの装備がより強く、かわいくなるだろう。
ただ、これでサクラ姫とはお別れだ。
一国の王女様ってのは、不自由である。
「じゃあ最後に、お出かけしようよ」
「いいわね。ゼイビアック、今日は馬車はいらないから。街へは、徒歩で遊ぶわ」
老執事に告げて、城の外へ。
思い出づくりとして、サクラ姫と一緒に街を回る。
屋台を回って、アンティークショップでお互いにプレゼントを交換し合う。
この光景、どこかで……。
また眼の前に、メッセージが表示された。
【デートイベント (仮)】
特定の魔物を討伐すると、報酬として「攻略対象とデート」ができます。
推しとの尊いひとときを、楽しんでください。
【補足】
攻略対象を決めたプレイヤーでも、他の攻略対象とのデートは一応できます。
が、推し以外と二人きりにはなれません。
あなたは既に、【勇者の妹:ミラベル】と添い遂げています。
一度決めた推しを、大事になさってください。
ふむふむ。
これが本来、サクラ姫が攻略対象になったときのイベントになると。
ただ、オレはミラベルを恋人として設定している。
なので、サクラ姫を落とすことはできない、と。
姫を推しているプレイヤーが、姫を外へ連れ出す流れになるのか。
で、姫が冒険に出ていく、と。
旅を続けていくうちに、愛が芽生えてハッピーエンド、ってわけか。
うまいこと、できているな。
つまりサクラ姫の元にも、オレみたいなプレイヤーがやってくるってわけだ。
サクラ姫に関しては、別のプレイヤーと幸せになってもらおう。
「ミラベル、あなたたちとの冒険は楽しかったわ。世界が平和になったら、また果樹園にいらっしゃい」
「ありがとう、サクラ姫」
王城に戻って、サクラ姫とミラベルが固い握手をかわした。
「ベップ。あなたも元気で」
「おう。また会おう。サクラ姫」
オレもサクラ姫と、握手をする。
さて、次の街へ向かうとするか。
(第二章 完)
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