上 下
232 / 269
海の家は、罪な家

カロリーネの人脈

しおりを挟む
 わたしはカウンター席に座って、鉄板焼きを焼いてもらいます。

「焼きそばと、お好み焼きをお願いします」

「どのようにいたしましょう?」

「お好み焼きは、定番の豚玉で。お肉は昨日いただいたので、シーフードを」

 イカ入りの焼きそばを、注文しました。

「承知しました」

 カロリーネさんが、ハチマキをします。本格的ですね。

 鉄板に、豚のバラ肉を焼きます。続いて、小さい器に一人分の生地をスプーンでこね始めました。

「空気を入れるのが、ポイントなのだそうです」

 ほほーお。

「では、参ります」

 混ぜた生地を、鉄板の上へ落とします。

 じゅわああ、と、おいしそうな音が鳴り響きました。音も楽しむのが、鉄板焼ですよね。

 二丁のコテで、カロリーネさんがイカの切り身を焼いていきました。焼きそばの具です。そういえば、彼女は戦闘時も二刀流でしたね。

 ああ、もうこの光景だけでも罪です。ニヤニヤしてしまいますよ。

 カロリーネさんがコテを交互に動かし、イカと野菜を焼いていきます。キャベツにモヤシ、薄切りのニンジンですね。
 もう味が想像できてしまいますよ。

 で、麺に水気を軽く含ませました。またコテが、交互に入っていきます。

「コテさばきが、うまいですねぇ」

 従者とはいえ、カロリーネさんは騎士出身です。お料理がお得意なので驚いたものでした。

「高校当時は、ハシオ先輩にしごいてもらいました」

「ハシオさんと、お知り合いなのですね?」

 なんでも、元騎士団でつながりがあったそうで。ハシオさんが三年のとき、カロリーネさんは一年生だったそうで。

「ミュラーさんも、ご存知なのでは?」

「すいません。男性には、興味がなくて……臨時の先生だったっぽいんですが、覚えていません」

「ああーっ」

 剣術や鉄板焼の技術は、ハシオさんから手際を教わったそうです。それを自己流まで高めて、いつしか先輩を越えてしまったとか。好きは、経験を上回るのですね。

「まさか、二刀流が焼きそばづくりで花咲くとは思いませんでした」

 カロリーネさんは、実に楽しげです。

 話をしているうちに、豚玉がいい香りになってきました。

 豚玉を、カロリーネさんがひっくり返します。

「お好み焼きに、マヨネーズは?」

「お願いします」

 焼きそばにソースをかけて、コテで混ぜ混ぜ。

「目玉焼きを上に添えますか?」

「ぜひ!」

 最後に、目玉焼きを載せてもらいます。

 豚玉も、できあがりました。

 ああもう。この光景が目の前にあるだけで、わたしは幸せですよ。ダメになりそうです。
しおりを挟む

処理中です...