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第六章 魔獣少女、最後の戦い

第46話 魔獣少女を越えた魔獣少女

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 鼻血を出したオーディンが、ユキちゃんに似せた顔を捨てる。

「な、なぜだ!? 友人の顔に似せてしまえば、絶対に攻撃できないと思っていたのに!?」
「目の前にホンモノがいるのに、どうしてニセモノを殴れないと思ったのです?」

 ユキちゃんを目の前から消させれていたら、手を出せなかったかも。ユキちゃんに憑依されたままでも、危なかった。
 花嫁を傷つけまいと、自ら実体化したのが幸いした。
 これで、容赦なく殴れる。
 
 アキさんに憑依したら、魔獣少女と使い魔との関係を断ち切れるバロール先輩の出番だ。

 しかし、わたしは。

「先輩、手を出さないでくださいね。あいつは絶対に、わたしが殺します」

 この魔獣だけは、自分の手で始末したい。

『出すもんかよ。テメエの方が、オレサマより強いからな』
「そうなんですか?」

 いつの間に、そんな力を。自分でも、信じられないが。

『仲間を傷つけられたヒトエの怒りは、オレサマよりはるかにパワーが上なんだよ。おそらくオレサマのダチより強いぜ』

 魔獣少女最強と謳われた、九尾の狐ヘカトンケイルさえ越えるとは。

「わたしに、そんな力が」
『それだけ、お前が強くなったってわけだ。オレサマも、正直ビビってんだ』
「先輩が?」

 バロール先輩さえ、恐れるほどなのか。

『ああ。まるでダチが乗り移ったみたいだ』
「ならば、お友だちの分まで戦います!」
『ありがとよ。ぶちかましてやれ!』

 わたしは、刀を構えてオーディンに立ち向かう。

「くそお!」

 オーディンも、ヤリを手にする。

「突けば必ずヒットするグングニル! 貴様の力をもら……な!?」

 わたしは、手で軽く押しただけで、グングニルとやらの軌道をそらす。

「バカな!? ヤリの先がヒットしない!」
「一応『ヒット』は、していますよ」

 投げれば必ず命中する能力は、本当らしい。だが、「当たるなら」どこでもいいようだ。なので、わたしは棒の部分に自分から手を当てていく。こうすれば、一応ヒット扱いだ。致命傷には至らない。

『ヒトエてめえ、どうやって考えついた?』
「先輩がドラゴンと戦っているときです」

 あの攻撃も、撃てば必ず命中するような仕組みだった。先輩の戦い方を見て、わたしはマネをしたまで。

「なんという。バロールの入れ知恵か?」
『違うね。オレサマは肉体強化の魔法しか使ってねえ。全部、ヒトエのアイデアと戦闘能力だぜ』
「おのれ貴様!」

 確実にヤリで心臓を突こうと、オーディンが攻撃を仕掛けてくる。

「これまで魔獣少女バトルの総括として、運営をして回っていたが、魔獣少女を越えた少女など見たことがない! しかし、これで終いよ!」

 雑な攻撃なことで。そんな刺突で、わたしを狙おうなんて。

 刀の背で軌道を大きく反らし、反撃の斬撃を食らわせた。

「ちいいい!」

 腕の腱を切られ、オーディンが悶絶する。

「勝負ありました。ですが、まだ攻撃は止めません!」
「ひ!」

 さしものオーディンも、恐れをなす。

 ここからは、虐殺タイムだ。

 刀の背を叩き込んで足を折り、背中を切りつけて立てなくする。

「ひいいいい!」

 逃げようとするオーディンに馬乗りになって、拳を何度も叩き込む。

「おおおおお!」

 まだ抵抗するか。一本拳を、耳の奥に直撃させる。

 人間相手には、イヴキさんにしかかけようとしなかった。コイツは人間ではない。容赦なく打ち込める。

 鼻血を出し、オーディンが悶絶した。

 だが、暴れすぎて拘束を解かれてしまう。

「こいつ、魔獣少女の力を使わないほうが強い!」
『さっきから言っているだろうが。オレサマは、肉体強化しかやってねえ』
「かくなる上は、最後の手段で!」

 オーディンは、ユキちゃんに乗り移ろうとした。

 やはり、その手でくるだろうな。ケガも回復をするだろうし。


 だが、直前でユキちゃんにアイアンクローを食らう。

「ハア!? なぜ……」
「やられっぱなしで、こっちが参るとでも思ってたのかよ?」

 ユキちゃん、口調が変わっていますが?

「あの、ユキちゃん?」
「違うね。俺は、九尾の狐ヘカトンケイルだ」
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