3 / 11
ギャル弁当
しおりを挟む
「よお盛部」
クラスメイトの町田 民夫が、声をかけてきた。数少ない、ボクの男友達だ。
「みんなの間でウワサになってるな。お前が荘園さんと交際しているって」
「ま、まままさか」
「今は、単なるウワサかもしれない。もしそうなったら、すげえよな。みんなからモブ呼ばわりされているこちらとしたら」
虚空を見上げながら、町田は微笑みかける。
「嫉妬しないの? ボクがゆ……荘園さんとどうになって」
「しないしない! 応援するさ!」
バタバタと、町田は手を振る。
「荘園さんと言葉を交わした時点で、お前は我々モブカーストの星なんだから!」
すっかり、ボクは英雄視されていた。
「そうよ。荘園さんは正直、誤解されがちだな人だと思うのよ」
言うのは、下柳 洋海さんだ。音読みすると、「ようかい」と読める。黒髪ロングなせいもあって、クラスでは「妖怪ちゃん」とからかわれている。町田の幼なじみであり、共にオカルト研究をしている間柄だ。
結愛さんの前に座っている関係上、下柳さんは彼女に話しかけることがあるという。結愛さんにホラー映画を貸した張本人でもある。
「あんまり自分のことを話してくれないけれど、今は幸せそうなのよね」
黒髪ロングの片目だけ出して、下柳さんは町田の席で頬杖を突く。ぼけーっとした表情をしているから、魂が抜けているんじゃないか、と錯覚してしまった。
結愛さんが、教室に入ってくる。
教室内が、張り詰めた空気に変わった。
面白くなさそうに、結愛さんは席に座る。
「おっと、席に戻ろう。じゃあな盛部」
町田が、ボクから離れた。空手部の町田でも、結愛さんを恐れている。それくらい、結愛さんは怖いのだ。本当は、優しい人なのに。
「おい徹、これ」
お昼休み、結愛さんがボクに小さな包みをよこした。
結愛さんの外見からは想像も付かない、ネコプリントのランチボックス用巾着だ。
誰も騒がない。女子さえも。
ヒソヒソ話でもしようものなら、ナイフのような鋭い視線が飛んでくるに違いないから。
「え、えと」
「だから、これ。早く受け取れ」
「あ、ありがとうございます」
結愛さんが作ってくれたお弁当を、抱きしめる。
「コレ持って、屋上。付いてこい」
「あっ。はい」
コソコソと、ボクは結愛さんについて行った。
屋上に着くと、見晴らしのいい場所へ座る。
「開けろ」
「はい……うわああ。すごい」
かわいい……ボクは、思わず声にならないため息をつく。食べるのがもったいないくらいだ。
男の子向きながっつりボリューミーでいて、デコレーションが細かい。
こういうのを「映え」っていうのかな。
「なんだよ。箸付けないのか? まずそうか?」
「違います! こんなかわいいお弁当もらうなんて初めてで! いただきます!」
ボクはお箸を掴もうとする。
だが、結愛さんはボクの手からお箸を取り上げた。
「いいこと思いついたぞ」
玉子焼きを、結愛さんはお箸でブッ刺す。
「ほれ、あーん」
これが、これが伝説のイベント!
ラノベとかアニメだけの世界だと思っていた。恋愛ゲームでしか見たことないよ!
「何してんだよ? さっさと口を開けろ」
「あ、あああーんんん」
口を開けた瞬間、玉子焼きを口内にねじ込まれた。あーんって、ノドに直撃するんだね。
「ゲホゲホ」
「うわああ、スマン。加減がわかんないんだ!」
結愛さんが、ペットボトルのお茶をくれた。
「ありがとうございます」
お茶を飲んで、ボクは一息つく。
「うまかったか?」
「はい。とっても!」
玉子焼きは、少し焦げていた。でも、しっかり味が付いていてボクは好きである。
お弁当に丁寧さを求める人でもない限り、百点満点の出来だ。ボクは点数なんてつけないけどね!
「まだまだあるぞー。全部あーんさせてやるからな」
「あーん」
その後もミートボールやウインナー、俵型おにぎりも口へ詰め込まれた。まるで、ひな鳥にでもなった気分である。
「手作りお弁当で胸が一杯になる」ってセリフがあるけれど、息苦しくなるって意味だったのか。
「ごちそうさまでした」
「うまかったか?」
「幸せです」
うれしすぎて、熱い物が目から一つ零れた。
「な、泣くなバカぁ。あたしまでうれしくなっちゃうじゃん……」
ボクは、結愛さんにハンカチを差し出す。
クラスメイトの町田 民夫が、声をかけてきた。数少ない、ボクの男友達だ。
「みんなの間でウワサになってるな。お前が荘園さんと交際しているって」
「ま、まままさか」
「今は、単なるウワサかもしれない。もしそうなったら、すげえよな。みんなからモブ呼ばわりされているこちらとしたら」
虚空を見上げながら、町田は微笑みかける。
「嫉妬しないの? ボクがゆ……荘園さんとどうになって」
「しないしない! 応援するさ!」
バタバタと、町田は手を振る。
「荘園さんと言葉を交わした時点で、お前は我々モブカーストの星なんだから!」
すっかり、ボクは英雄視されていた。
「そうよ。荘園さんは正直、誤解されがちだな人だと思うのよ」
言うのは、下柳 洋海さんだ。音読みすると、「ようかい」と読める。黒髪ロングなせいもあって、クラスでは「妖怪ちゃん」とからかわれている。町田の幼なじみであり、共にオカルト研究をしている間柄だ。
結愛さんの前に座っている関係上、下柳さんは彼女に話しかけることがあるという。結愛さんにホラー映画を貸した張本人でもある。
「あんまり自分のことを話してくれないけれど、今は幸せそうなのよね」
黒髪ロングの片目だけ出して、下柳さんは町田の席で頬杖を突く。ぼけーっとした表情をしているから、魂が抜けているんじゃないか、と錯覚してしまった。
結愛さんが、教室に入ってくる。
教室内が、張り詰めた空気に変わった。
面白くなさそうに、結愛さんは席に座る。
「おっと、席に戻ろう。じゃあな盛部」
町田が、ボクから離れた。空手部の町田でも、結愛さんを恐れている。それくらい、結愛さんは怖いのだ。本当は、優しい人なのに。
「おい徹、これ」
お昼休み、結愛さんがボクに小さな包みをよこした。
結愛さんの外見からは想像も付かない、ネコプリントのランチボックス用巾着だ。
誰も騒がない。女子さえも。
ヒソヒソ話でもしようものなら、ナイフのような鋭い視線が飛んでくるに違いないから。
「え、えと」
「だから、これ。早く受け取れ」
「あ、ありがとうございます」
結愛さんが作ってくれたお弁当を、抱きしめる。
「コレ持って、屋上。付いてこい」
「あっ。はい」
コソコソと、ボクは結愛さんについて行った。
屋上に着くと、見晴らしのいい場所へ座る。
「開けろ」
「はい……うわああ。すごい」
かわいい……ボクは、思わず声にならないため息をつく。食べるのがもったいないくらいだ。
男の子向きながっつりボリューミーでいて、デコレーションが細かい。
こういうのを「映え」っていうのかな。
「なんだよ。箸付けないのか? まずそうか?」
「違います! こんなかわいいお弁当もらうなんて初めてで! いただきます!」
ボクはお箸を掴もうとする。
だが、結愛さんはボクの手からお箸を取り上げた。
「いいこと思いついたぞ」
玉子焼きを、結愛さんはお箸でブッ刺す。
「ほれ、あーん」
これが、これが伝説のイベント!
ラノベとかアニメだけの世界だと思っていた。恋愛ゲームでしか見たことないよ!
「何してんだよ? さっさと口を開けろ」
「あ、あああーんんん」
口を開けた瞬間、玉子焼きを口内にねじ込まれた。あーんって、ノドに直撃するんだね。
「ゲホゲホ」
「うわああ、スマン。加減がわかんないんだ!」
結愛さんが、ペットボトルのお茶をくれた。
「ありがとうございます」
お茶を飲んで、ボクは一息つく。
「うまかったか?」
「はい。とっても!」
玉子焼きは、少し焦げていた。でも、しっかり味が付いていてボクは好きである。
お弁当に丁寧さを求める人でもない限り、百点満点の出来だ。ボクは点数なんてつけないけどね!
「まだまだあるぞー。全部あーんさせてやるからな」
「あーん」
その後もミートボールやウインナー、俵型おにぎりも口へ詰め込まれた。まるで、ひな鳥にでもなった気分である。
「手作りお弁当で胸が一杯になる」ってセリフがあるけれど、息苦しくなるって意味だったのか。
「ごちそうさまでした」
「うまかったか?」
「幸せです」
うれしすぎて、熱い物が目から一つ零れた。
「な、泣くなバカぁ。あたしまでうれしくなっちゃうじゃん……」
ボクは、結愛さんにハンカチを差し出す。
0
あなたにおすすめの小説
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。
現実とサキュバスのあいだで ――夢で告白した相手が、同居を始めた話
そう
青春
ある日家に突然現れた謎のサキュバスのホルさん!
好感度はMAXなようで流されるがまま主人公はホルさんと日常を過ごします。
ほのぼのラブコメというか日常系小説
オチなどはなく、ただひたすらにまったりします
挿絵や文章にもAIを使用しております。
苦手な方はご注意ください。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスで1番の美少女のことが好きなのに、なぜかクラスで3番目に可愛い子に絡まれる
グミ食べたい
青春
高校一年生の高居宙は、クラスで一番の美少女・一ノ瀬雫に一目惚れし、片想い中。
彼女と仲良くなりたい一心で高校生活を送っていた……はずだった。
だが、なぜか隣の席の女子、三間坂雪が頻繁に絡んでくる。
容姿は良いが、距離感が近く、からかってくる厄介な存在――のはずだった。
「一ノ瀬さんのこと、好きなんでしょ? 手伝ってあげる」
そう言って始まったのは、恋の応援か、それとも別の何かか。
これは、一ノ瀬雫への恋をきっかけに始まる、
高居宙と三間坂雪の、少し騒がしくて少し甘い学園ラブコメディ。
先輩から恋人のふりをして欲しいと頼まれた件 ~明らかにふりではないけど毎日が最高に楽しい~
桜井正宗
青春
“恋人のふり”をして欲しい。
高校二年の愁(しゅう)は、先輩の『柚』からそう頼まれた。
見知らずの後輩である自分になぜと思った。
でも、ふりならいいかと快諾する。
すると、明らかに恋人のような毎日が始まっていった。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる