上 下
10 / 11

ギャルとウォータースライダー

しおりを挟む
「おい徹、こっちだ」
「はーい」

 ボクたちは、流れるプールに入った。
 夕飯になったら落ち合う約束をして、バラバラに行動する。
 妹コンビはロングプールで競争するという。町田カップルは、下柳さんが泳げないので空いているプールでくつろぐらしい。

「でも、大丈夫ですか? お目当ては、ウォータースライダーですよね?」

 流れるプールに身を委ねながら、ボクは結愛さんに尋ねる。

「心配か? だったら一緒に滑ろうぜ」
「は、はい」

 ボクたちは、ウォータースライダーのあるポイントで水からあがった。
 スライダーの列に並び、階段を上っていく。
 結愛さんが先へ行くから、ボクはどうしても結愛さんのお尻を追いかける形に。

「どうした、徹?」
「いえ、なんでも」

 反射的に、顔をそらしてしまった。

「怖いのか? 大丈夫だって。あたしがついてるんだから」
「は、はあ」

 結愛さん、こういうアトラクションは平気らしい。オバケは怖がるのに。

「ん? 何か言ったか?」
「いえ何も!」

 思いが口から出ていた? どうしてボクの考えていることがバレたんだろう?
 とにかく、スライダーに到着した。
 指示を受けて滑り台を下っていく。

「あれ、スピードが出ねえ」

 結愛さんは、滑り台のようにお尻で滑っていた。

「仰向けになるんです。そうすると速くなりますよ」

 最近のウォータースライダーは、何かに乗ってその小さい摩擦で滑り降りるタイプが多い。
 それのせいか、スライダーは座りながら降りるモノ、という考えが定着しているように思えた。

 実際は、仰向けになった方が速くなる。

「こうか?」

 結愛さんは仰向けになって手をクロスさせた。

「わあああああああ!?」

 あまりのスピードに、結愛さんがおっかなびっくりになる。
 ボクも便乗して、仰向けで速度を上げた。チューブに振り回される。でも、そのスリルが心地いい。

「ぴゃあ」と情けない声を出して、結愛さんが着水した。そのすぐ後に、ボクも滑り終える。

「楽しかったでしょ?」
「あ、ああ。そうだな」

 なぜか、結愛さんは辺りをキョロキョロしていた。
 よく見ると、結愛さんの肩紐がなくなっている。まさか。

「あの、結愛さんひょっとして、ブラが?」
「そ、そうなんだ」

 なんと、ブラが水に流されてしまったのだ。だからヒモビキニで大丈夫って聞いたんだけれど!

「ありました! 取ってきます!」

 向こう側の壁際に、お目当てのビキニが浮かんでいた。
 誰も来ない間に、向こう岸へ。

「ヒャッホーッ!」

 何者かが、ボクの脇腹にドロップキックを喰らわせる。誰かと思えば、マオちゃんじゃないか!

「ごほおお!」

 マオちゃんに蹴られて、ボクは結愛さんのビキニを掴んだまま沈んでいく。

「徹っ! しっかりしろ徹!」

 自分の肌が露わになることも気にせず、結愛さんがボクの元にかけつけてくれた。

「結愛さん。これを」
「そんなのいいんだよ! 大丈夫か?」

 ボクの無事を確認しつつ、結愛さんはブラをつけ直す。

「平気です。水の中だったのでダメージはありません」
「よかった。ありがとなー」

 その後、マオちゃんの手も借りて、無事に結愛さんの貞操は守られた。
しおりを挟む

処理中です...