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古代都市編
第46話 反ルミノイド運動
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ラウルスシティ沈没緊急対策室は、「ヌシを迎え撃つための体制を取る一方で、万一のための市民の避難の準備を整えるので、落ち着いて欲しい」という声明を出した。
とにかく、流言飛語には囚われないようにと念を押すことも忘れなかった。
「流言飛語ねえ……」
ハンス・セラムは地下工場区画の薄暗い一室で、テレビに向かって吐き捨てるように言うと、加工機のスイッチに手を伸ばしてアイドリングモードに切り替えた。
機械は唸りを止め、静かにトレーを吐き出した。
ハンスはトレーの上のものを取り出すと手に取って動作確認をする。
「ふーん、旧時代のものでも問題なく作れるものだな」
右手でグリップを握り、AK-47ライフルを構えた。木製代わりのプラスチックの銃床が頬に冷たく感じる。
その鈍く光る銃口の先には、ニュースサイトからプリントアウトされて壁に貼られた、カーラとルリの顔写真があった。
「ユミカ、マナ、仇は取ってやるからな……」
ハンスのデスクのPCモニターには、公園でカーラにぬいぐるみを貰った女の子とその母親の写真が貼られていた。
――
「反ルミノイド運動家?」
ラウルス・プリーマの高層階、タクティカルルームでのミーティング中、ノーマンはアルケーに聞き返した。
「彼らは『ゼロリターン』と名乗っている。暴走カーラの一件から急激に勢力を伸ばしてきた一派だ。ルミノイドもマザーオーブも存在しなかった旧文明世界への回帰を標榜している」
「私たちに良くない思いを抱いている人たちがいても不思議ではないわね」
カーラが目を伏せて、当然のように言った。アルケーはカーラを一瞥すると言葉をつなげた。
「地下工業エリアの労働階級層が中心になって組織している。彼らの考えはこうだ、ルミノイドやマザーオーブがいなければ、ヌシも、暴走も、犠牲もなかった。つまり原因はルミノイドだと。……人間はいつの時代も、最も分かりやすい存在を『原因』にしたがるものだ」
「よくわかんねーけど、面倒くさい連中はどこにでもいるもんだな」
紅茶チューブを咥えながら加藤が呟く。それを見たルリが隣で「お行儀が悪いですわよ」と咎めた。
「それで、その方々になにか問題でもありますの?」
「ある」
「どうも、地下工場区画に生産計画以上の電気が流れているようだ」
「つまり?」
「何かを密造している気配がある。今の状況で平和的な物を作っているとはとても考えにくいな」
「カーラやルリに普通の兵器が通用するとは思えないがな」
「彼らにはルミノイドを壊すのは不可能だ。だとしたら、何をすると思う?」
ノーマンはアルケーの問いに顎に手を当てながら考えた。
「ここの襲撃。関連施設の破壊と妨害工作かな。……しかし、そこまでするかな? 自分が乗ってるボートの底に自分で穴を開けるようなものだぞ」
「僕はやると思っている。人間は思考を単純化してしまう生き物だ。先の崩壊よりも、今、目の前の恐怖を排除しようとするものだよ」
「レミングスじゃあるまいし……」
「この星に降り立ってたから300年、ラウルスシティは何の戦乱も天災も起こらずに来たんだ、脅威に対するストレスに脆弱になっている。何が起こっても不思議じゃないさ」
「失楽園か……」
ノーマンがため息を吐く。
「仏教的解釈で言えば、人類が自立の道を歩み始める転換期とも考えられるが、今はそれを論じても詮無いな。僕らは僕らにやれることに傾注した方がいい」
「そうね、賛成だわ」
「今はそういう連中がいるという事を知っておいてくれ。一応、ここの警備は厳重にしてはいる」
「他に何か、わかった事や新しい事実はないのか?」
「ヌシ迎撃作戦に中央政府のお墨付きが付いたくらいだな。カーラやルリの双肩に僕たちの運命を賭けるしかないのは、正直心苦しいが」
「あなたから『心苦しい』なんて言葉がでるとは思わなかったわ」
「今のやり方は論理的に美しくない」
カーラが困った顔のまま微笑むと、ルリが肩をすくめる。
「お兄様が私たちを頼るなんて稀有な事、それこそ一万年に一度あるかないかですわね。お姉さま、頑張るしかありませんわ」
「ふふ、本当そうね」
カーラとルリは笑いあう、ノーマンと加藤も釣られて笑う。アルケー1人が面白くなさそうな顔で腕を組んでいた。
「あと、明後日に暴走事件の慰霊祭が中央公園で執り行われる」
皆んなの表情が固くなった。暴走カーラによる攻撃で起こったビルの破片の雨や爆発、阿鼻叫喚の地獄絵図が思い出された。
「僕たちは慰霊祭には参加しない、ここで待機だ」
加藤が体をもじもじさせる。
「嫌な予感がするな……」
「うん、慰霊祭にテロが起こる可能性もある、警戒するに越したことはない」
アルケーの耳元で呼び出し音が鳴った。
耳に刺している情報端末のスイッチを入れると警備センターからのインフォメーションだった。
一言二言話してから、アルケーが無言で右手を翳すと、タクティカルルームの中央モニターに外の様子が映し出される。
「……!」
モニターを見たカーラが息を呑んだ。
そこには、中央公園に集まったゼロリターン達の「反ルミノイド」デモが起こっていた。
とにかく、流言飛語には囚われないようにと念を押すことも忘れなかった。
「流言飛語ねえ……」
ハンス・セラムは地下工場区画の薄暗い一室で、テレビに向かって吐き捨てるように言うと、加工機のスイッチに手を伸ばしてアイドリングモードに切り替えた。
機械は唸りを止め、静かにトレーを吐き出した。
ハンスはトレーの上のものを取り出すと手に取って動作確認をする。
「ふーん、旧時代のものでも問題なく作れるものだな」
右手でグリップを握り、AK-47ライフルを構えた。木製代わりのプラスチックの銃床が頬に冷たく感じる。
その鈍く光る銃口の先には、ニュースサイトからプリントアウトされて壁に貼られた、カーラとルリの顔写真があった。
「ユミカ、マナ、仇は取ってやるからな……」
ハンスのデスクのPCモニターには、公園でカーラにぬいぐるみを貰った女の子とその母親の写真が貼られていた。
――
「反ルミノイド運動家?」
ラウルス・プリーマの高層階、タクティカルルームでのミーティング中、ノーマンはアルケーに聞き返した。
「彼らは『ゼロリターン』と名乗っている。暴走カーラの一件から急激に勢力を伸ばしてきた一派だ。ルミノイドもマザーオーブも存在しなかった旧文明世界への回帰を標榜している」
「私たちに良くない思いを抱いている人たちがいても不思議ではないわね」
カーラが目を伏せて、当然のように言った。アルケーはカーラを一瞥すると言葉をつなげた。
「地下工業エリアの労働階級層が中心になって組織している。彼らの考えはこうだ、ルミノイドやマザーオーブがいなければ、ヌシも、暴走も、犠牲もなかった。つまり原因はルミノイドだと。……人間はいつの時代も、最も分かりやすい存在を『原因』にしたがるものだ」
「よくわかんねーけど、面倒くさい連中はどこにでもいるもんだな」
紅茶チューブを咥えながら加藤が呟く。それを見たルリが隣で「お行儀が悪いですわよ」と咎めた。
「それで、その方々になにか問題でもありますの?」
「ある」
「どうも、地下工場区画に生産計画以上の電気が流れているようだ」
「つまり?」
「何かを密造している気配がある。今の状況で平和的な物を作っているとはとても考えにくいな」
「カーラやルリに普通の兵器が通用するとは思えないがな」
「彼らにはルミノイドを壊すのは不可能だ。だとしたら、何をすると思う?」
ノーマンはアルケーの問いに顎に手を当てながら考えた。
「ここの襲撃。関連施設の破壊と妨害工作かな。……しかし、そこまでするかな? 自分が乗ってるボートの底に自分で穴を開けるようなものだぞ」
「僕はやると思っている。人間は思考を単純化してしまう生き物だ。先の崩壊よりも、今、目の前の恐怖を排除しようとするものだよ」
「レミングスじゃあるまいし……」
「この星に降り立ってたから300年、ラウルスシティは何の戦乱も天災も起こらずに来たんだ、脅威に対するストレスに脆弱になっている。何が起こっても不思議じゃないさ」
「失楽園か……」
ノーマンがため息を吐く。
「仏教的解釈で言えば、人類が自立の道を歩み始める転換期とも考えられるが、今はそれを論じても詮無いな。僕らは僕らにやれることに傾注した方がいい」
「そうね、賛成だわ」
「今はそういう連中がいるという事を知っておいてくれ。一応、ここの警備は厳重にしてはいる」
「他に何か、わかった事や新しい事実はないのか?」
「ヌシ迎撃作戦に中央政府のお墨付きが付いたくらいだな。カーラやルリの双肩に僕たちの運命を賭けるしかないのは、正直心苦しいが」
「あなたから『心苦しい』なんて言葉がでるとは思わなかったわ」
「今のやり方は論理的に美しくない」
カーラが困った顔のまま微笑むと、ルリが肩をすくめる。
「お兄様が私たちを頼るなんて稀有な事、それこそ一万年に一度あるかないかですわね。お姉さま、頑張るしかありませんわ」
「ふふ、本当そうね」
カーラとルリは笑いあう、ノーマンと加藤も釣られて笑う。アルケー1人が面白くなさそうな顔で腕を組んでいた。
「あと、明後日に暴走事件の慰霊祭が中央公園で執り行われる」
皆んなの表情が固くなった。暴走カーラによる攻撃で起こったビルの破片の雨や爆発、阿鼻叫喚の地獄絵図が思い出された。
「僕たちは慰霊祭には参加しない、ここで待機だ」
加藤が体をもじもじさせる。
「嫌な予感がするな……」
「うん、慰霊祭にテロが起こる可能性もある、警戒するに越したことはない」
アルケーの耳元で呼び出し音が鳴った。
耳に刺している情報端末のスイッチを入れると警備センターからのインフォメーションだった。
一言二言話してから、アルケーが無言で右手を翳すと、タクティカルルームの中央モニターに外の様子が映し出される。
「……!」
モニターを見たカーラが息を呑んだ。
そこには、中央公園に集まったゼロリターン達の「反ルミノイド」デモが起こっていた。
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