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27、不審な死に方

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 ローガン先生の提案はブルックリンの一家に安定をもたらした。収入が何とかなると分かると、お母さんも完全とは言えないが元気を取り戻し、ブルックリンが魔道具店に出勤する時に、保育園に預けているチャーリーとミアをお迎えに行き、夕食も作れるようになっていた。

 ブルックリンも魔道具店の仕事に慣れ始めた頃、その人たちはやって来た。

「失礼するが、このお家で最近ご主人が亡くなられたと聞いてやってきたのだが?こちらでよろしかったかな?」と玄関で話しているのは立派なあごひげを持つ堀の深い顔立ちの男だった。制服も立派でどこかで見た事があると思ったのもそのはず、魔法省の官僚の制服だった。

 そうそう対抗戦で見たわ。

 その男の傍には同じ制服を着たキツネ顔の男も控えている。今日はお母さんは近所の寄り合いで、出払っている。

「失礼ですがどちら様ですか?」と尋ねてみると、「――これは失礼しました。私は魔法省のランバートと言うもの。この男は部下のデニスだ。今日はお母さんはお見えかな?」と言っている。

 ミヤが「お姉ちゃん、一緒にお風呂入って~。」とブルックリンの服の裾を掴み甘えて来ている。このミヤもそうだし、チャーリーもお父さんが亡くなった後、情緒不安定になって最近やっと落ち付いて来た所だったのだ。

「すいませんが、母は近くなんですが只今出かけておりまして。今日は近所の話し合いで遅くなると言っていました。明日なら家にいると思います。」と話すと「分かりました。お母さんが戻って来られたら、明日もう一度伺うとお伝え下さい。では突然お邪魔して申し訳なかった。」と言うとブルックリンに一礼して帰って行った。


 暫くするとお母さんが帰って来た。「お母さんお帰りなさい。」と出迎えると、魔法省の人間が訪ねて来た事を伝えた。

「――――そうなの?ブルックリン。さっきの近所の話し合いも実は魔法省がらみだったのよ?何でもこの辺りに魔物が出る回数が増えてきて、家の戸締りや柵の設置を強化するように、って事だった。何でも質の悪い魔物もいて、人間のエネルギーを吸い取ってしまうような奴も中には居るらしいよ?本当に怖いわね。」・・・ああ、くわばらくわばらと話すと、

「ブルックリン、仕事でもあんまり遅くなっちゃだめよ?」とリビングの椅子に腰かけながら一気にまくし立てた。その前にブルックリンはお茶を置きながら、「――――もしかしたら今日ここに来た魔法省も魔物がらみかもね。」と話した。


 次の日にブルックリンが魔道具店に出勤していた時に、魔法省の2人が訪ねて来たらしい。

 お母さんの話によると、どうもお父さんの事故も魔物がらみだった疑いがあるらしく、ここ最近、亡くなる2~3週間までぐらいから、ご主人に変わった所が無かったか?と聞かれたと言っていた。

「そう言えば、事故の割にはお父さんの体が綺麗だったのよ。アラン先生がそう言ってたのを思い出したわ。全然体に傷が無いのに、道端で倒れていた所を発見されたからアラン先生の所に事故です。って運び込まれたのよね。」と思い出しながらブルックリンに話した。もちろんこの事は魔法省の方々にも言った。とお母さんは言う。

 ただ、この辺りにそう言った不審な亡くなり方をしている方が最近多くて、魔法省の出番と相成ったそうな。

「――――、ふーん、そうだったんだ。」とその時はさほど考える事もしなかったが、これはこの後の大災害につながる序章だった。

 この死亡理由がはっきりしない事件は、この後も増え続け、魔法省や騎士団をきりきり舞いさせて行く事となった。
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