美しい箱庭で愛する人と暮らしたい。義妹よ邪魔をしないで下さい。

釋圭峯

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演劇とお食事と。

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せっかくのプレミアムチケットなのに。

正直言って演劇の内容は頭に入って来ませんでした。

ハインツ様は席に座ると直ぐにフローレンスの手を握っていらしたのです。思わず放そうとハインツ様を見ると素敵な笑顔で笑っていました。

幕間に他のお客様が挨拶に来られても離しては下さらずフローレンスは恥ずかしさから顔を伏せたままです。

フローレンスの事を聞かれても「この方はとても恥ずかしがり屋さんなんだ。私は今この人を口説いているんですよ。今日の所は察して頂けると幸いです。」と爽やかに断っていました。

観劇が終わると、「レストランを予約してあります。どうかお付き合い頂けませんか?」としっかりフローレンスをエスコートし連れて行った。

レストランの食事は、どれも素敵で勿体無くて
ゆっくりとよく噛んで食べた。
ハインツはとても話上手でフローレンスを飽きさせる事がなかった。


帰りの馬車の中で、「フローレンス嬢、今日はお付き合い下さりありがとうございました。
実は知り合いに園芸専門店の人間が居るのですが、店で来週からクリスマス関連商品の展示会をするそうなんです。良かったらご一緒しませんか?腐葉土やコニファーなども多数出すそうですよ?」

フローレンスを自制心を試すような素敵なお誘いだ。

「すいません、仕事の事も有りますので直ぐにはお返事は出来かねます。」と返事は一旦保留にして貰った。

「わかりました。また日時をお知らせします。」と告げると馬車は伯爵家の玄関ポーチに着いた。

「お帰りフローレンス。」とお父様の声がする。馬車の扉が開くと真っ先にお父様が見えた。その後にはマリー。あの2人は居なかった。

「お父様ただいま戻りました。」と挨拶すると先にハインツ様が馬車から降りられ、私の手を取りゆっくりと降ろしました。


そしてお父様に向かい「本日は大切なお嬢様との素敵な時間を過ごせてとても幸せでした。またお誘いしたいと思っています。どうか宜しくお願いします。」と一礼していた。

「いえいえとんでもないです。恥ずかしい娘ですが何卒宜しくお願いします。」とお父様も一礼し挨拶を返していた。

ハインツ様は「では今宵は失礼します。」と会釈をしてから馬車に乗り込みそのまま帰って行かれた。

恋愛初心者のフローレンスにはハード過ぎるひと時だった。「心臓が持たないわ。」と呟くと離れへ帰って行った。

本宅から離れの玄関までは途中から素敵な石畳みになっている。

フローレンスが気に入った煉瓦があり、庭師やマリーと苦労してコツコツと並べた石畳みだ。
雨に濡れても色が素敵なので、ここを通る度にいつも良い気持ちになる。


離れを眺めながら石畳みの上を歩く。


最初の違和感は窓ガラスだった。妙な胸騒ぎがして急いで玄関を開けると、フローレンスの机の上が絵の具でぐちゃぐちゃにされ、それはベッドや窓ガラス、壁紙にも及んだ。


本来ならここに綺麗に飾られていたのだろう、ハインツ様に頂いた薔薇の花束が引き抜かれ、生けてあった花瓶が粉々に割られていた。

薔薇の花束は踏み躙られた跡があり、見るも無惨な状態だった。


「ひどい。何て酷い事を。」あまりの惨状にこれは1人では埒が開かないと判断し本宅へと手伝いを呼びに行った。

フローレンスが血相を変えて本宅へ来たので本宅のスタッフは全員驚いている。
「マリー、マリーは何処ですか?」とマリーを呼ぶと部屋の奥から出てきた。

「どうされました?お嬢様。」
「離れが、離れが荒らされているの。どうしよう。マリー手伝って。」と頼み込み他に手伝って貰えそうな人を数名連れて離れに戻った。

マリーを始めスタッフは玄関を開けた瞬間
「これは、これは酷い。」と呆然と見ていた。


「マリー、旦那様を呼んで来るんだ。1度みて貰っておいた方が良い。」と他のスタッフの1人が言い出しました。

「そうします。私、旦那様を呼んできます。」とマリーがお父様を呼びに駆け出して行った。
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