美しい箱庭で愛する人と暮らしたい。義妹よ邪魔をしないで下さい。

釋圭峯

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薔薇の花束より嬉しかった事。

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あれからクロース侯爵家親子は満足して帰られたそうで、最近、クリス侯爵様が私を自宅屋敷の庭園へご案内したいとおっしゃっているそうだ。

最近作り始めた部分が有るのでアドバイスが欲しいそうだ。


それとはまた別の意味で頭を悩ませる事が出来た。


「お嬢様、また来たのですが。。。」
とメイドのマリーが申し訳なさげに1通の封筒を私に渡して来た。

「マリーありがとう。まぁ、開いてみるわね。」と答え自分の机に向かった。

引き出しからペーパーナイフを取り出しピッと開いた。

流れる様な美しい文字が現れた。そして2枚の観劇のチケット。



 貴女と楽しいひと時を過ごせる事を望みます。

         ハインツ・クロース



とだけ書かれていた。はぁ、またか。

「マリー、悪いけど送り返して頂戴。」とマリーに声をかけるとマリーは怪訝な表情をしていた。

「お嬢様、もうあのお方何度もですし、私が言うのも差し出がましいのですが、、。」と言いにくそうに口を開いた。

「このチケットもかなりの高額のプレミアムチケットです。1度きちんとお会いしてはっきりとおっしゃられてみては如何でしょう?」と提案して来た。


そうね。まぁ一理あるわね。これ以上送って来られるのも正直迷惑だわ。なんと言ってもアンリエッタの目線が凄いのだ。目線だけなら殺されそう。

「ではマリー、承知した事を書いて送り返して頂戴。あと申し訳ないけど観劇を観る為のドレス一式を用意して置いて。」と頼んだ。

初見でそこまではわからなかったけど、ハインツ様って結構強引な方なのね。物静かな方に見えたけど。人は見かけに寄らないものね。

さぁ、仕事仕事。


数日後、離れに再びマリーの姿があった。

「フローレンスお嬢様、ハインツ様からのお返事です。当日はこちらへ迎えに来るとおっしやってます。」

「まぁ、仕方ないわね。マリー、準備の方宜しく頼むわね。」

「わかりましたお嬢様。任せておいて下さい!」と胸を叩いた。


マリーは薄紫のサテンとオーガンジーのドレスを用意してくれた。首元には小さなミニ薔薇の造花をあしらったチョーカーを。足元には同じ造花をリボンに付けたベルベットの編み上げのパンプスを。歩くたびに揺れるミニ薔薇が可愛いわ。


観劇当日、ハインツ様は前にお会いした時とはまるで違うイメージで来られた。

初めてこの屋敷へ来た時はスラックスとシャツと言ったカジュアルな出立ちだったが、今日は流石に正装だ。

前髪もきちんと整え後ろへ流し、ドレスコードがしっかりとある所なのだろう。きちんとタイを締め共布のチーフも挿してある。

何と言っても凄かったのはその手に持った真っ赤な薔薇の花束。


玄関ホールでフローレンスの前でひざまづき、

「フローレンス嬢、今日の貴女は輝く月の妖精の様だ。私など霞んでしまう。私の姿を暫く貴女の記憶に留めておけるよう本日の記念に。」とフローレンスに手渡したのだ。

これには伯爵夫妻もアンリエッタも驚いていた。本人の姿からもあまりにも様になりすぎている。

フローレンス本人に至っては恥ずかしさの余り顔が真っ赤に染まってしまい顔を上げられなくて困ってしまった。


「お嬢様、時間に遅れてしまいます。花束をお預かりしておきますね。」とマリーが気を利かせて雰囲気を変えてくれた。


ハインツ様にエスコートされ、馬車に乗車した。見送って下さったお父様に向かって「では行って参ります。」と挨拶したのだが、お父様の後ろにいたサマンサお義母さまとアンリエッタがニコリともしていなかったのだ。


2人ともずっと恐ろしい表情でフローレンスを睨みつけていた。

フローレンスはいつもなら目線を外すのだが、あえてそこで視線の真っ向勝負に出た。
睨みつけられている目線を外さずに正面から受け止めて見せたのだ。

たが、次の瞬間2人とも目を見開き一斉に伏せてしまった。

何が起きたの?まさかと思い慌てて振り向くとハインツ様が顔の表情を歪ませフローレンス越しに2人を睨みつけていたのだ。

これにはさすがにサフィノワ伯爵も気がついた。背後の2人に「お前たちは下がりなさい。後で話がある。」と2人を玄関ホールから追い出した。

「ハインツ様、飛んだ失礼を致しました。あの2人には私から厳重に注意しておきますので。」と言葉を濁した。
「お構いなく。」とハインツ様はひと言でお父様の謝罪の言葉を流すとさっさと馬車を出した。

しばらくフローレンスは話し出す事が出来なかった。どう何を話せば良いのだろうか。

そんな考えがハインツに伝わったのか、「フローレンス嬢、今日は招待を受けてくださりありがとうございます。」と笑いながら話し出したのだ。

少し間が分からず理解が出来なかったが、やっと自分を取り戻した。

「ハインツ様、私の方こそありがとうございます。締切が迫っていた為、中々お話をお受け出来ず申し訳ありませんでした。」

「とんでも無いですよ。私がフローレンス嬢にお会いしたい一心でやった事です。それより今日の内容はご存じでしたか?」と話を回し始めて下さいました。

フローレンスはこれにはすっかり気持ちがほぐれ劇場へ着くまでの時間をハインツ様との会話で楽しみました。
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