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アトリエ
しおりを挟む私の方から見ても分かるぐらいアンリエッタが震えている。
お母様に至っては目の周りが赤くなっていた。
「じゃあ、私はこれで失礼するよ。これから出かけなければ行けないからね。」と言うと席を立ち食堂から出て行った。
「あっ、貴方。」と言いながらお母様も後を追いかけた。もちろんアンリエッタもお母様に付いて行った。
玄関先で何か言い合っている。
フローレンスはそぉっと離れへ戻った。先にマリーがアトリエの荷造りを始めてくれていた。
「ありがとうマリー。」と声をかけフローレンスも隣で作業を始めた。新しいアトリエはここから徒歩5分ほどなので屋敷のスタッフも何名か運ぶのを手伝って貰った。
新しいアトリエは小綺麗でミニキッチンが付き、日当たりも良かった。簡易ベッドもあり仮眠も取れる。
机を入れると結構狭くなってしまったが、まぁアトリエなのでこれで良いだろう。
さぁ、これから足りない絵の具や壊された道具
を買い足しに行こう。
伯爵家の馬車をこちらへ回してもらい、街へ出た。そう言えば欲しかった本があった。
先に本屋さんへ行こう。
アンリエッタに絵の具セットを壊されて沈んでいた気持ちが少し上向いた。
本屋さんで有名なガーデナーの本を買い、自分の本も見てみた。印刷の色の出具合を見たかったのだ。まぁ、これぐらいかな?
本当ならもう少し暗めに出てると思ったんだけど。
独りごちながら絵の具を買いに店に入った。
「あぁ、新色がある。」と呟くと手に取りじっくりと眺めた。良い色だわ。次の作品に使えるかしら?
いけない、今日はたくさん絵の具を買わなければならないんだった。と思い出し手際よく買い物カゴへ入れて行った。新しいブラシも何本か入れた。ペン先、インク、定規、水入れ。
気がつくと結構な量だ。
何とか買い物を済ませてアトリエに帰った。
買って来た物を配置してようやく仕事が出来る環境になった。
喉が渇いたのでミニキッチンでコーヒーを作った。一口飲み、ふぅ、とひと呼吸すると気持ちが落ち着いて来た。あっ、おやつでも買っておけば良かった。残念。
その時ドアをノックする音が聞こえた。
鍵を外しドアを少し開けてみるとお父様だった。
「あぁ、お父様どうぞお入りください。」と案内し、椅子を出した。
「どうだ?仕事は再開出来そうか?」
「はい、先ほど買い出しに出かけたのでひとまずは再開出来ます。」
「そうか良かった。あっ、そう言えばクリス侯爵様が3日後にお前を屋敷へ招きたいから迎えを寄越す。と連絡があった。どうだ行けそうか?無理なら私から断っておくが。」
「いえ、大丈夫ですよ。わかりました。時間は何時ごろですか?」
「あぁ、食事を共にしたいとおっしゃられてて、11時ごろに我が家へ馬車を着けて下さるらしい。」
「わかりました。お父様。手土産は何が良いでしょう?」
「その辺は私が用意しておこう。あと、帰りも送ってくださるらしい。くれぐれも粗相の無いようにな。」
「そうですね。失礼の無いようにしなくては行けませんね。気を付けておきますわ。お父様。」
「ところであれからハインツ様とはどうなんだ?」
「特には何もありませんよ?」
「そうか。わかった。」
「お父様、そろそろ夕食ですわね?私も馬車で屋敷にご一緒しますね。」
「あぁわかったよ。一緒に帰ろう。」
私はお父様が馬車で待っていて下さる間に、カーテンを閉めアトリエの戸締りをし馬車に乗り込みました。
鍵がかけられる。ってやっぱり安心するわね。
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