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クリスマスパーティ
しおりを挟む華やかな宮廷音楽が鳴り響き、着飾った貴族たちが口々にゴシップや世論を口にする。
王宮のホールはクリスマスの装飾が施されそこに集まった人々の気分を更に特別な日なのだと認識させていた。
この日は王宮で一足早いクリスマスパーティが行われていた。だが王の具合が良く無いため例年よりかなり装飾も控えられ規模も小さい物だった。
そしてハインツ達王宮医療チームの一員はほぼ強制的にこのパーティへ参加させられていた。
「おい、ハインツ楽しんでるか?」とシャンパンを手渡しながらほろ酔いで話しかけて来るのは同僚のマーティン。
「お前、ここんとこ元気ないしここらで良い子でも探せば?」とハインツを励ましてはいるが、ハインツ目当ての令嬢をちゃっかり狙って来てるのは火を見るより明らかだ。
「あぁ、そうだな。そうするよ。」と、笑ってはいるが明らかに作り笑顔だ。
「ハインツ、お前モテるんだからさ。少しぐらいハメ外せば?そうしないと俺らぶっ倒れちまうぞ。」とマーティンが苦笑いしている。
まぁ、この男が言うのも無理は無い。王の病状があまり思わしく無く王宮医療チームは昼夜問わず交代で勤務している状態だ。
ハインツはマーティンから貰ったグラスを一気に飲み干すと近くにあったテーブルに置き
「先に失礼するよ。まぁ君もほどほどにな。あっ、それから。。。」
「あちらにいる御令嬢。結婚相手を探しているらしい。もしマーティン、君さえ良かったら行ってみたらどうだ?。」とマーティンに告げると次の瞬間、ハインツは既にホールから出ようとしていた。
マーティンがハインツに教えて貰ったその令嬢を見てみると友人とおしゃべりに耽るアンリエッタだった。
「あんなに何もかも持っている男なのにどうしたもんかねぇ。」とハインツの後ろ姿を見ながら呟いた。
彼女が忘れられない。
馬車の中で感情に任せ情欲に濡れた口づけをすると、小さな体を震わせて泣いていた姿が目に焼き付いて離れない。ヤバかった。本能のままあの場所で彼女を奪う所だった。
生まれてこの方、女の事なんて考えた事も無かったのに。
ふと気がつくと目線の先によく知った男を見つけた。フローレンスの絵本の出版社の編集長だ。
「カーチス編集長お久しぶりです。」と思わず声をかけた。そう、この男に泣き付きスーザン先生のヒントを貰ったのだった。
「あぁ、ハインツ殿お久しぶりですな。」
「カーチス殿、お変わりなく羨ましい限りです。そう言えば偶然だったのですがスーザン先生にやっとお会い出来まして。その節はありがとうございました。」
「いゃ、いったい何の話かな?それよりスーザン先生は最近どうされた物か?」
「えっ、彼女に何か有ったのですか?最後にお会いした時はお元気そうでしたよ?」
「いや、3ヶ月ほど原稿が遅れるって連絡があってね。まぁ、体調を崩された訳では無さそうなんだが。何か聞いてないか?」
「いや、私としては何も。」
「そうか、まぁ今の話も忘れてくれ。じゃあ先を急ぐのでな、失礼するよ。」と去って行った。
去って行くカーチスを見送りながら、
フローレンスいったい君はどうしたんだ。私はどうしてこんなに心を揺さぶられるのか?
クリスマスパーティを早々に抜け出し屋敷へ帰った。参加はしたのだからこれで上への面目は立っただろう。
屋敷に戻り着替えもそこそこに父親の書斎を訪ねた。
「失礼します。お父様。」とノックをすると「どうぞ」と声がする。この方は自分を隣国の孤児院から引き取り何不自由無く育ててくれた大切な人だ。
「珍しいなハインツ?どうした?」とおもわずクリスの方から声をかけた。
「お父様お願いがあります。私にどうか力を貸して欲しいのです。どうしても欲しい者が有ります。」と真剣な目をしてクリスに話した。
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