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吉兆
しおりを挟む朝の日の出がだんだん早くなり、春を告げる草花である水仙が蕾をつけ始めた頃、その話が厳かに広がり始めた。
その予兆はもうすぐ本格的な暖かな春を迎える我が国の気候にも合っていたと思う。
年明け早々からハインツ達医療チームが王の病気の特効薬を開発したのだ。
主に主導したのがハインツ。効用を調べて気の遠くなる様な調合したのもハインツだった。
主な薬草がシシリー辺境伯の領土で採れる事もわかって来た。それもかなり良質な物が採れる。
ハインツ自身は決して表に出る事はせずに、新聞記者達にシシリー辺境伯の領土で採れる薬草の話しをオープンにした。
連日の様にシシリー辺境伯の名前が新聞各紙で見られる様になった。これが王と同じ病気で苦しむ人たちにとっての朗報だからだ。
そうなるとシシリー辺境伯の身の回りが騒がしくなるのは当然で、息子の縁談の相手としてアンリエッタの名前もチラホラささやかれる様になっていた。
◇◇◇◇◇
「フローレンスさん、ここはどうやって色を塗ったらいいんですかね?」とナタリーが騒いでる。
「ナタリーさん、ここはこうすると塗りやすくなるんですよ。」とナタリーの手の上からそうっと握って教えてやる。
「そうね、確かに塗りやすくなったわ。」と言いつつもせっせと塗っている。ナタリーさんはこうして手仕事をするのが大好きなのね。とフローレンスは微笑ましく思っていた。
ここへ来てから夜がぐっすり眠れる様になった。朝早くから箱庭に手を入れてから教会へ行く。3食もきっちり食べて夜も早めに就寝する。このリズムが良いんだと思う。
そうするとうまくした物で、本来の仕事も捗って来た。少しずつだが編集者に仕事を送れるようになって行った。
サンダース家の皆さんはとても親切で、箱庭作りも奥様やリックさんも良く手伝ってくれる。ここの箱庭はオレンジの木を入れてある。
気候が良いので可愛い白い花もキュートなオレンジ色の果実も楽しめる。
ハーブの種類も少しずつたくさん入れるつもりだ。実用的で目にも楽しいハーブを選んだ。
まだ小さな苗だがノコギリ草やルピナスも入れた。最近はチューリップの可愛らしい芽がたくさん出て来たのでフローレンスの目を楽しませている。
私がここを去る前に一度でもいいから花が咲いたこの箱庭にテーブルを出してお茶を飲んでみたい。と思っていた。
その日の夕食、サンダース家の皆さんと食事を楽しんだ後、旦那様がみんなに話しかけていた。
「陛下の具合が少しずつ良くなって来てるんだそうだ。王宮の医療チームのお手柄だって。」と新聞記事をみんなに見せた。
「まぁ、凄いわねぇ。」と奥様も感心している。
「これは春から縁起がいいね。」とリックさんも話している。
「へぇ、シシリー辺境伯の所の薬草が良いんだってさ。」と新聞を読みながら旦那様はコーヒーを飲んでいた。
「そう言えばフローレンスさん、教会の壁画は後どれぐらいで完成なの?」とリディア奥様が聞いて来られた。
「そうですねぇ、あと2~3週間と言った所でしょうか?」
「もうそこまで来たのね。楽しみね。」
「はい、後少しですので楽しみに待ってて下さいね。」
そんなフローレンスに実家から便りが届いた。
手紙の内容によると一旦帰って来い。だった。
「奥様、実家から一度帰るようにと連絡が来ました。壁画があと少しなのに。」とリディア奥様に愚痴を言うフローレンス。あまり帰りたくないなぁ。と思っている。
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