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14、エリーの魔力回路

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「今日は楽しみだね~。エリー、僕久しぶりに本気が出せそうだ。」とクリス様がわざわざ決勝の相手であるエリーを教室まで迎えに来たのだ。

「まぁ、そんな恐れ多いです。クリス様が誰よりも強いのは皆さんご存じでしょう?」とエリーも優雅に微笑んで見せた。
この辺りはエリーの意地もあるかも知れない。

 気のせいか校内もザワ付いている。廊下を歩く2人を遠巻きにたくさんの生徒が見ている。

 フィールドに着くと今日は2人の先生が待っていた。

「エリー、今日は先生2人がかりで防御壁を貼るんだよ。大袈裟だよね~。」とエリーを見ながら笑っている。

「おっ、2人とも来たか。」とケニー先生がこちらを見て話しかけて来た。
「この審判を何年もやって来たが、この決勝の審判だけは慣れんよ。気が気でないわい。」と呟く様に話した。

「エリー・クリスティアン、並びにクリス・バーンズの決勝戦をこれから始める。2人ともフィールドへ入れ。」この言葉がケニー先生から発せられると静まり返る観客。

「2人とも準備は良いか?」

「「はいっ。」」

「それでは始め!!」

 エリーはすぐに結界を3重に重ねる。

 クリスからたくさんの頭を持った龍が口から火を噴きながらエリーの方へ襲い掛かってくる。でも指輪が反応して居ない。
それに恐れずエリーはたくさんの蝶をクリスに放った。

 キラキラと舞いながらクリスの方へ向かう蝶達。

 クリスは蝶を一瞥するとパチンッと指を鳴らし一瞬にして蝶を消し去った。サラサラと崩れる蝶達。

「ははっ、蝶に魔法付与とは凄いね。僕の結界を1つ持ってかれたよ。」と苦笑いした。

「でも、これならどうだろう?」と言いつつ杖を出して来た。

「天上の賢者よ。その矢を用いて活路を見いだせ。」と言い放つとクリスの後から大きな天界の人と思わしき弓を構えた老人が雨の様にエリーに向かい矢を降らせた。

「キャー!!」と叫ぶ観客達。
「・・・・クリスが杖を出すなんて。」と呟くアルザス。

エリーは頭上の矢を見ると炎の呪文を唱えサッと払う仕草をすると今度は矢を全て焼失させたのだった。

「凄い魔力量だね。さすが、一筋縄では行かないか?それに結構な量の譲渡だね。もう髪色が戻ってるよ。」と言われ髪色を見るとそこに有ったのは赤髪だった。

 エリーはクリスから指摘されたその髪を一房グッと左手で摘むと無意識だったがキスを落とした。

その瞬間エリーが光り輝きクリスを始め先生や観客もエリーの姿を見失った。

かなりの光量の光が収まり人々がフィールドを目で確認出来る様になった時、フィールドに2人とも揃っていたがその有り様が先ほどと全く変わっていた。

 巨体の巨人に踏まれるクリスの姿が有ったのだ。

 クリスは訳がわからず、どうして?何があった?と思いながらエリーの方を見ると、エリーが摘んでいたのは一房の髪のはずが、エリーが摘んでいたのは1本の杖だった。

 エリーの作り出した巨人を一振りの杖で退けたクリスは立ち上がると思わず叫んだ。

「ひゃあ、ここに有ったか。やはり君だったんだね。そしてさすがアレクサンドラ。まさかエリーの髪に杖を隠すとは。見つからない筈だ。」と歓喜している。

「じゃあ僕もそろそろ本気で行かないとこれはヤバいね。」

 両名、お互い杖を繰り出し一歩も引かない構えを取った。

 お父さん、お母さん。とエリーが呟いている。なぜか心が温かい。ポカポカする。

 エリーの体から何かは分からないが大きな力が出て来た。吸い込まれる様にクリスの体の力が抜けていく。

 そしてクリスの結界が溶け出している。クリス は貼り直そうとするが力を振り出せない。

「なぜ、なぜだ??でも全然恐ろしくない。まるでこれは。。。」

 母の胎内にいる様な心地良さだ。嫌な事も苦しい事も忘れられる。

 しばらくして「バタッ」と倒れたクリス。

「神の御光」とエリーが呟いた。

「しっ、勝者エリー・クリスティアン。」とケニー先生のコールが聞こえ先生方の防御壁が消失した。

 その途端膝から崩れ落ちるエリー。

 そこへフィールドに進入した男がエリーを抱え上げるとケニー先生にひと言告げ保健室へ連れて行った。

 その男とはフリッツだった。

「さすがアレクサンドラ。杖をそんな所に隠してましたか。そしてここまで予測してエリーに杖を託したのですか?
エリーの強大な魔力回路と自分の魔力の連結。
最後のエリーの力は。エリーの魔力回路のなせる技ですね。」

「まぁ、あの思い上がった餓鬼には良い薬だよ。少しは大人しく人の話しを聞く様になるだろう。」

 そう呟くとエリーを保健室へ運んでベッドへ横にすると顔に張り付いて居た髪を払ってやり、何事もなかったかの様に保健室から出て行った。

 その数分後、クリスが運び込まれて来た。

 中央にカーテンを引かれては居るが保健室のベッドに横になる2人。

 しばらくするとエリーのベッドの側で腰掛けて話しかけるマリーの姿があった。

「。。。☆$#*〆」と呪文を唱える。

「さすがアレクサンドラ。不祥の息子とは言え私の子を負かすなんてね。」

 目を開けるエリー。いや今はアレクサンドラだ。

「当たり前さ。私を誰だと思ってるんだい?舐めて貰っちゃ困るね。ははは。」と笑っている。

「でもこうして笑ってられるのもこれが最後だ。私はこれでこの世から去る。そしてもうこの子はこれで誰にも負けないだろう。もしが来ても返り討ちにしておやり。」

とマリーに向かって微笑んでそのまま目を閉じた。

「さよなら、アレクサンドラ。私の友よ。」とマリー先生は呟くとクリスのベッドを一瞥し保健室から出て行った。
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