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43、ギフト能力鑑定
しおりを挟む「まず、お母さんにこちらを読んでもらいたい。」と1枚の紙をエミリアさんがお母さんに渡した。
「実際にある出来事なんだけど、どこまで教えて良いのかなんだよ。」
「ギフト能力があるって言う所までか、どんな能力があるのかまでか。能力者を嫌がる人もいるんだ。身内にも居たら嫌だと言う奴が。」と皆んなを見ながら説明した。
「まぁ、知らない方が幸せって言う事さ。」
「お母さん、もし同意するならこちらの紙にサインを欲しい。」と更に1枚の用紙を渡しペンも添えた。
しばらくカノンちゃんお母さんは考えていた。
カノンちゃんはここまで来るのに疲れたんだろう。無理もない。ソファの上でぐっすりと眠っている。その姿をカノンちゃんの髪の毛を撫でながら複雑な表情で見つめている。
お母さんの目の色が変わった。心が決まったようだ。
ペンを手に取り、サラサラっとサインを入れた。
記入した用紙をエミリアさんに渡しながら
「カノンを見てやって下さい。私は全てを受け入れます。宜しくお願いします。」と頭を下げた。
「わかったよ。お母さん。よく決断なさった。」と言うと席を立ち、カノンちゃんの方へと近寄った。
「済まないがお母さん以外は席を外して貰えるか?まだ能力を出してない体は、見るのに時間がかかるし、慎重に行かないと何かあった後では困るのでな。」と皆んなを見て言ったので、一旦部屋を出た。
どれぐらい時間が経ったのだろうか?
「もういいよ。皆んな入っておいで。」と中から声がかかった。
お母さんが皆を見ている。
エミリアさんがソファで眠っているカノンちゃんを見下ろしながら、
「あぁ、この子はギフト能力者だよ。このエミリアさんがこの子の体質改善をしてあげよう。」その言葉に全員でホッとした表情を見せる。
「まだこれからだから断定はしない。がこの子の能力は恐らく肉体改善。お兄ちゃんと同じ系統だね。まだ幼いから、詳しくは分からないけど私の見立てでは補修かな?これからこの子の能力回路を開くよ。これで食欲が能力に干渉されなくなるはずだ。」
「お母さん、1週間この子を私に預けて欲しい。出来るかい?急に開くのは危険なんだ。様子を見ながら少しずつ開こう。」
「1週間ですか?」
「ああ、近くにホテルがあるから通っておいで。お母さんが居なかったら、この子は困るだろう。」
「治るんですね、治るんですね。ありがとうございます。本当にありがとうございます。」とうとうカノンちゃんのお母さんが泣き出した。
「まぁ楽しみにしておいで。お母さん、この子の回路が開けたらお母さんのご飯を欲しがるだろうから、たくさん食べさせておやり。」とエミリアさんは笑いながらお母さんに伝えてた。
◇◇◇◇◇◇
アルフォンスとオスカーは共に一旦王都に帰っている。上に今回の件の報告をするらしい。
ここへは私とタチアナとミリアン先生が残った。ミリアン先生はエミリアさんにくっ付き色々と学んでいる様だ。これでアトランティスの原因不明の病気が減ると良いな。
ちなみにミリアン先生もエミリアさんに能力を見てもらったらしい。
「何の成果も得られませんでした。」とがっかりした様子だった。
そして最終日。私たちはエミリアさんに呼ばれた。
「アニエスお姉ちゃん、タチアナお姉ちゃん!」とカノンちゃんが駆け寄ってきた。
うん、やっぱりかわいい。抱き上げると気のせいかちょっとふっくらした?
「今回の件、ありがとうございました。」とカノンちゃんのお母さんがお礼を言ってこられた。「食欲も凄いんですよ。」と嬉しそうだ。
「さぁ、カノン、お姉ちゃん達にカノンの力を見せておやり。」とエミリアさんが言うと「うん!」と大きく頷き元気よくエミリアさんに駆け寄った。
エミリアさんは小刀でピッと自分の頬の皮膚とちょっぴり切るとすぅーと血が出てきた。
「お願いね、カノン。」と優しくエミリアさんが言うと「うん!」とカノンちゃんその部分に手を当てた。
「エミリアおばちゃん、もういいよ?」とカノンちゃんが言うと、エミリアは手に持っていたハンカチでカノンちゃんの手を綺麗にしてやり、そして自分の頬の血を拭き取った。そこには何も残ってなかった。
「凄いね、カノンちゃん!!」と皆んなで褒めると「へへへっ」得意そうに笑った。
「これで治療は終わりだ。能力の回路を開くのは少々危険なんだ。1週間貰ったのは能力の回路を開きながら普段の様子を見てたんだ。もうこの子は大丈夫。お母さん、これから母1人子1人だろうが辛くても頑張るんだよ。」と穏やかにお母さんを励ましていた。
それぞれが帰り支度を始めた。そんな時だった、
「アニエス、後でちょっと時間取れるかい?」とエミリアさんが話しかけてきた。
「他の人もいるからそんなには時間取れないだろう?すぐに済ませるよ。」と周囲を見ながらささやいた。
「わかりました。王都に帰る準備が出来たらエミリアさんにひと声かけます。」と返事をした。
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