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アウラ叔母さま

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「アウラ叔母さまおはようございます。」とコーネリアは屋敷近くのアパートメントに住む叔母さまを訪ねていた。

 大切な商品達を預けるためだ。

「ふわぁ。おはよーコーネリア。今日も早いわねぇ。」と今起きた所なんだろう、欠伸をしながらボサボサの頭で眠気まなこの叔母さまが答えた。

「うん、今日もスティーブンに勝った!」

「コーネリア、屋敷の鶏に名前を付けて早起きの勝負しているのはきっと貴女だけよ。」と呆れ顔で水差しからコップに水を注ぐとごくごくと飲み干していた。

「アウラ叔母さま昨日も遅かったの?」とコーネリアが聞くと「あぁ、スポンサーがしつこくてねぇ。」と愚痴った。

 アウラ叔母さまはこの地方で活躍する歌姫だ。

 昨日も割と大きなお屋敷に呼ばれて歌声を披露して来たらしい。
夜も更けていくのにいつまでもスポンサーが歌わせようとするのは良く有る話なんだそう。

 アウラ叔母さまはコーネリアが考察した所、他の女性の歌声に比べると音域が広いのだ。

 その声を守る為かアウラ叔母さまは絶対にたばこは吸わないし、偏食などもしない。きちんとその辺りは管理している。
この姿勢はコーネリアは同じ女性としてとても尊敬している。

 そして「ホルモンが影響するからね~~。」
といつも恋をしている。今の恋人はある劇場のオーナーさんらしい。この辺りはあまり教えてくれない。

「企業秘密」と言う奴だ。

 でもアウラ叔母さまはコーネリアに気を使ってくれてて平日の学校がある時は絶対に恋人を泊めない。

 なので週末はコーネリアは絶対にここには来ない様にしている。月に一度のお泊まりは平日のみだ。馬に蹴られたく無いからね。

「コーネリア、あんたご飯食べたの?」
「うん、今日は厨房からくすねた。」と笑うと
「それは良いわ。どんどんくすねなさい。」とアウラ叔母さまも笑っていた。

「じゃあ今日は夕方ここに寄るね。商品よろしく頼むね。」とアウラ叔母さまにひと言伝えるとさっさとアパートを出て学校へ向かった。

 学校に着き教室へ入るとカレンが待っていた。
カレンは大切な友人であり貴重な仲間である。
そう、彼女は仕事のパートナーだ。

 主に情報収集。そして彼女の商品は人形では無く同人誌だ。今回は彼女の作品もコーネリアの納品内容の1つだ。

 人形とカップリングの同人誌。
取り分はカレンが2、コーネリアが8だ。もちろんお互いにバラバラに売る事も多い。

「おはよ。コーネリア。今日納品だよね?」と朝からヒソヒソと話し出す。
コーネリアも負けじと「そうよカレン。ちゃんと持ってきたでしょうね?」

「当たり前よ。こんな上客。逃す手は無いわ。」と話すと目がキラッと輝いた。

 そうだコイツは守銭奴だったわ。だからこそ、この子をパートナーにしたんだった。

「今日は大丈夫?私もついて行こうか?」と言ってくれたが「大丈夫よ。ちょっと他に用事が有るし1人で行くわ。代金、明日渡すから楽しみにしてて。」と言うと始業のチャイムが鳴ってそれぞれ席に着いた。

 放課後、カレンから商品を預かりチェックした。うん、今回も上出来ね。思わずカレンと目を合わせ頷く。

「じゃあカレンさよなら、また明日ね!」と教室で別れアウラ叔母さまのアパートメントへ寄った。

「ただいま~~。アウラ叔母さま。」とドアを開けると「あぁ、コーネリアお帰り。これから納品?」と聞いてきた。
「そうなんだ。あと30分後にカフェ・ル・エスタで待ち合わせなの。」と最近街に出来たばかりのお洒落なカフェの名前をアウラ叔母さまに話した。

「気をつけて行きなよ。」とアウラ叔母さまに言われ「うんわかった。無理はしない。」と返事をし、商品達をまとめた。カレンの薄い本も添える。

「じゃあ行ってくる。」とアウラ叔母さまに告げて待ち合わせ場所へ向かった。途中の公園のトイレに立ち寄ると変装をし外見を変えた。

 カフェ・ル・エスタに着き打ち合わせ通りの席に座った。相手の目印は白のワンピースに胸元に赤い薔薇。そして麦わら帽子。

 5分ほど待つと打ち合わせ通りの人物がやって来て席に座った。

「商品は持ってきてありますか?」と聞かれ
「はい。」と答えると袋の中身をチラッと見せた。
「間違いは無い様ですね。こちらはお代金です。確認を。」と封筒を渡された。

 一瞬で数えると恭しく紙袋を差し出した。
「こちらです。どうぞ。」と渡すとささっと白いワンピースの女性は店から出て行った。

 その後ろ姿を見ながら小さな声で「毎度あり。」と呟くとすぐさま店のトイレを借りて変装を解き、何食わぬ顔で店を出た。

 代金は大切に鞄にしまい一目散にアウラ叔母さまのアパートメントへ帰った。

 ドアは開いていたが叔母さまは見当たらなかったので、そのまま家へと帰った。

 あちゃ~、今日は運が悪い。自分の部屋に入ると部屋がぐちゃぐちゃに荒らされていた。

 そう、お兄様の仕業でしょうね。機嫌が悪いとたまにこうして部屋が荒らされる。
お母様に言った所で無視されるしね。人形が気持ち悪いと以前は言ってたから最近は無かったんだけどね。売り上げはアウラ叔母様の所だから金目の物なんて無いのに。

 仕方がないので片付けを始める。今回は物が壊れて居ないだけマシか。
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