恋に堕ちる─別れさせ屋としての最後の仕事。彼と出会って私はまた恋をする。─

七転び八起き

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第3話 拒絶

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 夜。スマホの画面を見ると、メッセージが届いていた。

『今度の夜、水族館に行きませんか』

 胸の奥が震えた。
 デート……なの?
 何を考えているのか分からない。

 けれど、これが最後。
 もし何も起こらなければ、それで仕事は終わり。
 そう思いながらも、もう会えなくなると考えると、寂しさが込み上げてくることに気づいてしまった。

 これは仕事、彼は依頼人の恋人、私はただ彼の依頼人への想いを確かめるだけの道具にすぎない。
 それを自分に何度も言い聞かせた。

 ***

 水族館の入口。ライトアップされた波模様が足元を照らしている。
 早川蒼真は既に来ていて、私を見つけると軽く手を上げた。

「来てくれて、ありがとう」
「きれいですね」

 彼の笑顔を見ると胸が締め付けられる。
 中へ入ると、青い光に包まれた幻想的な空間が広がっている。
 水槽の中で魚の群れが泳ぎ、光が揺れる。

「何度見ても不思議だ。魚の群れ、息が合ってる」
「まるで一つの生き物みたいですね」
「確かに」

 彼の少し笑った顔を見ていると、気づかされる。この人に惹かれていることに。

 ***

 大きな水槽の前。色とりどりの魚たちが優雅に泳いでいる。
 彼が静かに言った。

「こうして見ると、時間を忘れますね」
「はい」

 言葉は短いのに、隣に立つだけで心が揺れる。
 その揺れを押し込めるように、必死で目を逸らした。

 ***

 出口近くのガラス張りの通路。
 夜景が広がり、ガラス越しに港の灯が揺れている。

 ふと、彼がこちらを振り返り、顔が近づいてきた。
 これはまずい……でも、望んでいる自分がいた。

 次の瞬間、彼の口から出た言葉が、その余韻を一瞬で壊した。

「別れさせ屋なんだよね?」

 時間が止まったように感じた。

「最初から知ってた。どんな人間なのか、興味があった」

 静かな声に、恐怖で全身がこわばる。

「俺のこと、まんざらでもないだろ」

 私のことを見下すような台詞に心が抉られる。
 否定も肯定もできず、口が動かない。
 彼は視線を逸らし、夜景を一瞥した。

「もう二度と、俺に近づくな」

 その背中が人混みに溶けていく。
 私はただ立ち尽くし、胸の奥に残った温もりと冷たさに震えていた。

 任務は失敗。

 でも、それよりも辛いのは——彼に軽蔑された事実だった。
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