【完結・番外編追加中】三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚した件につきまして

七転び八起き

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第2話

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 駅までの道をバイト君と歩く。

「仕事ってどうですか?」

 唐突に聞かれて返事に困る。

「大変ですね……。会社や職種で違うけど、私は忙しい場所にいて。プライベートな時間削られてますね」

 バイト君は俯いてる。

「俺、来年から社会人なんです。うまくやっていけるか不安で」

 すると、学生なのもあと数ヶ月か。

「今のうちに沢山遊びなよ」

 そのうち友達と会える日も減っていく。
 私がそうだ。皆疎遠。
 会おうとすると予定が合わない。

「そうですね。ただ──」

 バイト君は立ち止まった。

「本気の恋がしたいです」
「え?」

 真剣な顔だった。

「え、君モテそうだけど、今までどうだったの?」
「それなりに女の子とは付き合ってきました。でも、本気で好きになった子はいないかもしれません」
「急がなくても、社会人になってからも出会いは沢山あるし、君ならすぐにいい人見つけられるよ」

「……見つけたんです」
「え?」
「俺、あなたと本気で恋がしたいです」

 恋──

 そんな感情、どこかへ置いてきた。

「私三十路なの。君みたいな若い男の子と遊んでる余裕ないんだ。仕事も忙しいし」

 こんなビジュアル最高な子と恋愛してみたかった。
 もっと若ければ。
 時間が経過すれば、私は老けて、この子は年相応の子と恋愛をしたくなるだろう。
 そんなの惨めだし、時間の無駄だ。

「じゃあ、さようなら」

 私はその場を去ろうとした。
 その時腕を掴まれた。

「待ってください!俺は本気です!」

 振り返って見た彼の目は真剣だった。

「なんで私なの?さっき初めて会ったばかりじゃん」
「ビビッときたんです。この人だって」

 ビビッと……?
 たしか姉ちゃんも旦那さんと結婚する前にそんなこと言ってたな。
 なんだ、ビビッとって。

「君来年から社会人ってことは、二十二歳くらいでしょ?年の差八歳。現実的に見て、無理があるよ」
「年齢とか関係ないですよ」

 彼が掴んだ私の腕に力が入る。

「関係あるよ。君は今しか見えてない」

 バイト君は俯いている。
 早く手を離してくれ。

「どうすれば俺を受け入れてくれますか……」

 まだ粘る。

「君が私と結婚することを前提になら考えてあげるよ」

 バイト君は私を見据えた。

「わかりました」

 考え直させようとしたのに引かない。

「俺の本気、証明します」
「え?」

 バイト君はスマホを取り出した。

「連絡先教えてください。明日また会いましょう」

 どういうこと?
 なんなの?

「明日ちゃんとしますから」

 何を?

「……わかったよ、連絡先くらいなら交換してあげるよ」

 折れてしまった。

「ありがとうございます。待ち合わせについてまた連絡します」
「う、うん」

 何が起こるんだいったい!

「名前教えてください」
「……川崎七海なみだよ」

 バイト君はスマホに入力している。

「あの……君の名前は?」

 流石にバイト君とは呼べない。

「林勇凛ゆうりです」

 勇凛君か……。

「じゃあ、明日私早いからもう帰るね」

「家まで送りますよ」
「いや、いいって!君も早く帰りな」

 私はそのあと全速力で走った。
 地下鉄の駅に向かって。

 あんな冗談か本気かわからない言葉に動揺して、三十路社畜女が情けない。
 しっかりしろ私!
 地下鉄の改札を出て、ホームに降りて、来た電車に飛び乗った。

 真っ暗な地下鉄の窓の外。
 地上に出た時に、月が見えた。
 丸い月。
 満月だろうか。

 その時、スマホに通知がきた。

『勇凛です。突然驚かせてすみませんでした。でも俺は本気です。明日また話しましょう』

 どうしよう……。

 満月を見上げながら、彼の顔を思い出していた。
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