【完結・番外編追加中】三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚した件につきまして

七転び八起き

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第40話

 二人でベッドの中でくつろぎながら、スマホで賃貸物件を見ていた。

 勇凛くんにお願いして腕枕をしてもらいながら。
 幸せすぎる。

「どの辺に住みますかね……」

 これからあの会社で働くなら、あっちに近い方がいいのか──

 でもなるべく近づきたくないし、プライベートまで汚染されたくない。
 ずっと働く気なんてない。
 認めさせるまでいる期間限定だ。

「勇凛くん」
「はい」
「ラウンド2の近くで探そう」

 我ながらアホな提案である。

「……いいですね。俺もっと歌上手くなるように練習します」

 ……そっちか!

「今度物件見に行こうか?」
「はい、行ってみましょう」

 嫌なことはひとまず置いておいて、私たちは夫婦としての日常を堪能していた。

 * * *

 ──月曜日

 出社して早々、上司と面談。

「すみません、一身上の都合により、退職します」

 上司は顔をしかめている。

「まいったな。君の後任が思いつかない」

 診断書のおかげで残業はかなり減り、負担は上司に回った。
 心なしかやつれている。
 私に丸投げしていた罰だ。

「退職後はどうする?」
「別の企業に行きます」

 まだこの上司の方がマシなのかもしれない。
 勇輝さんは私を潰しにきそうな気がする。

「今まで無理をさせてすまなかった」

 上司に頭を下げられた。
 驚いて言葉に詰まった。

「……はい。正直かなりしんどかったです。後任の人はちゃんと配慮してあげてください」

 新卒で入社してからここにずっと勤めてきた。
 いい思い出はあまりない。
 むしろキツかった。
 ただ、なんとかそれでも持ち堪えていた自分を褒めたい。

 上司との面談が終わって、廊下を歩いていると──
 森川さんが待ち伏せていたかのように立っていた。

「辞めるんだ」
「はい。色々あって」
「もしかして……“ 勇凛くん”関係?」

 鋭いなこの人は。

「……あの会社に入らないといけなくなったんです」
「は……?あの会社って林ホールディングス……?」
「はい」
「何があったんだよ」

 森川さんは珍しく動揺している。

「私は人質みたいなもんですよ」

 勇凛くんをあの会社に縛るための。

「意味がわからない」

 私だってこんなことになるなんて、微塵も思っていなかった。

「森川さん、色々ありがとうございました」

 森川さんに頭を下げた。

「……結婚の次は退職か」

 森川さんは私の横を通り過ぎた。
 ……と思ったら振り返った。

「連絡先聞くのはアリ?」

 連絡先……。辞めるのに?
 もう話すことなんてない。

 私が答えられずにいると、森川さんはボールペンをだして、私の手をとった。
 そして手の甲に番号を書いた。

「え!?」
「なんかあったらいつでも連絡して」

 そう言ってオフィスに戻った。

 なんて強引なんだ!
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