三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚した件につきまして

七転び八起き

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第44話

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 ──翌日

 私の目は真っ赤に腫れていた。
 昨日家に帰ってから大泣きしてしまった。
 悔しくて。
 目をある程度冷やしてから出社した。

 しかし──

「何その目……」

 森川さんが私の顔を見て驚いている。
 大きなマスクを買ってなるべく顔を隠していたのにバレた。

「色々あるんですよ……」
「またかよ」

 お前に私の気持ちがわかるか!
 私は無視してデスクに戻って引き継ぎ書を作った。

 * * *

 仕事が終わってビルから出ると──
 なぜか森川さんが待ち伏せていた。

「何してるんですか」
「聞いてあげようと思って」
「いいですよ。別に」
「川崎さんさー。もう俺たちバラバラになるわけじゃん?」
「そうですけど……」
「腹割って話そうよ」

 もう話すことなんてないし、この人の気持ちは前聞いたし。

「信用してよ」
「そんなこと言われても……」
「奢るから」
「………」

 ───

「私悔しくて悔しくて!あんなやつの秘書とか絶対やりたくない!!」
「うん……」

 飲み屋で森川さんと話してるうちに、だんだん怒りが湧いてきて、ずーっと森川さんに愚痴っていた。

「クソだと思いませんか?あんなのが副社長とか、日本も終わりですよ!」
「仕事とプライベートは別だと思うけどな……」
「はい!?」
「なんでもない」

「でも、何もなくてよかったな。昨日」
「はい。本当、なにごとかと思いましたよ」
「あのさ……。そんなに辛いなら、もうやめろよ」
「え?」
「あの会社の御曹司とガチでやり合うなんてバカだよ」
「は!?」

 ヒートアップしていく私を客が見ている。
 見かねた森川さんに外に出された。

 夜風が肌に当たって少し冷静になった。

「スミマセンでした」

 森川さんはため息をついた。

「スマホかして」
「え?なんでですか?」
「確認したいことがある」

 確認……?

「すぐ返してくださいね」

 森川さんは私のスマホを受け取るなりどこかに電話をかけた。

「え、誰に電話してるんですか!?」

 勝手に何してるのこの人!
 私が取り返そうとしても身長差で届かない。

「あ、旦那さん?奥さんが手に負えないから迎えに来てくれる?」

 ──まさか

「なに勇凛くんに電話かけてるんですか!!」

 今日は勇凛くんバイト最後の日なのに!
 通話が終わると森川さんはスマホを返した。

「夫婦で話し合えよ。ちゃんと」

 この人に話すんじゃなかった!
 その時頭に森川さんの手が乗った。

「自分大事にしろよ」

 そう言って行ってしまった。

 ***

 すぐに勇凛くんから電話がかかってきた。

『七海さん大丈夫ですか!?』

 勇凛くんの声──
 昨日電話できなかったから一日ぶり。
 涙が出た。

「勇凛くんごめんね……」
『え、なにがですか?とりあえず今すぐ行くんで待っててください!』

 ──しばらくすると勇凛くんが走ってきた。

 純粋で真っ直ぐな勇凛くん。
 眩しい。

「七海さん大丈夫ですか?あの人に何かされたんですか?」
「ううん。違うの。実は──」

 私は勇凛くんに全部話した。

「……今から本社行きます」

 勇凛くんが呟いた。
 その表情は怒りに染まっている。

「待って。それだとあの人の思う壺だよ」
「こんなやり方はあまりにも酷すぎます。俺だけならまだしも……」
「お兄さんは私が邪魔なんだよ。だから私に仕掛けてきたんだよ」
「それが卑劣なんです」

 勇凛くんの拳は爪が食い込むくらい強く握られている。

「勇凛くん。私、認めさせたいの。私自身の力で。弱音吐いちゃったけど、でもそれは諦めたくないからなの」

 勇凛くんは困っている。

「じゃあ七海さんが耐えるだけなんですか……?」

 胸が痛む。
 夫婦で支え合おうって私も言ってるのに。

「……耐える。でも、無理そうだったらまた相談する。私はまだ頑張りたい」

 勇凛くんは俯いた。

「何もできなくて不甲斐ないです……」
「そんなことないよ。私、今まで生きてきた中で、こんなに誰かのために頑張ろうって思えたのが初めてなんだ」

 勇凛くんの手を握った。

「勇凛くんとずっと一緒にいたいから」

 勇凛くんは手をゆっくり握り返してくれた。
 穏やかな笑顔に少し戻った。

「家まで送ります」

 勇凛くんは納得していないかもしれない。
 でも私は自分ができることを精一杯やりたい。

 そう思った。
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