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第一章
第2話
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──その夏
梅雨が明けたばかりの七月の午後、蝉の声が校舎に響いていた。
私は母校に用事があって、卒業した高校を訪れた。
OGとして部活の後輩たちを見に行く——それは建前で、本当は別の理由があった。
卒業してから数ヶ月、大学生活に慣れてきた頃になって、ふと高校時代の記憶が蘇るようになった。
数ヶ月ぶりに足を踏み入れた校舎は、懐かしい匂いがした。
制服姿の生徒たちを見ると、通り過ぎた青春が少し蘇る。
私は、担任だった夏雄先生のことが好きだった。
でも、想いを伝える勇気はなかった。
女子に人気があって、ほとんど話すこともできなかった。
話す勇気すらもなかった。
卒業と同時に、その事は思い出として心にしまおうとした。
ただ──ときどき感じる先生の視線に、不思議な違和感があった。
何かを見定められているような。
──その時、職員室から誰かが出てきた。
夏雄先生だった。
あの頃とほとんど変わらない姿。
そして、目が合った。
「水島……?」
私の心臓は、信じられないくらい跳ね上がった。
「久しぶり……今日はどうした?」
穏やかな顔で尋ねてくる先生。
「えーと……部活の後輩を見にきました」
緊張で、思わず目を逸らしてしまった。
先生がこちらに歩いてくる。
一歩ずつ。
その時、足がすくんだ。
まともに話したこともない先生。
どう接していいのかわからなくて、少し怖かった。
「なんで目を逸らすの? 前もそうだったよね」
声のトーンが少し低くなる。
「き、緊張しちゃうんです」
先生はすぐ目の前まで来ていた。
「もしかして……俺のこと好きだった?」
カーッと顔が熱くなる。
なんて答えればいい?
本当のことを言ったら、先生はどんな反応をするんだろう……?
何も言えずに目を泳がせていると、先生はどこか含みのある笑みを浮かべた。
「俺はずっと見ていたよ」
「え…?」
顔を上げた時には、先生はもう通り過ぎていた。
そして、ふいに振り返ってこう言った。
「その白いレースのワンピース、似合うね」
そう言い残して、校舎の外に消えていった。
私はあの瞬間、先生に心を囚れてしまったのかもしれない。
梅雨が明けたばかりの七月の午後、蝉の声が校舎に響いていた。
私は母校に用事があって、卒業した高校を訪れた。
OGとして部活の後輩たちを見に行く——それは建前で、本当は別の理由があった。
卒業してから数ヶ月、大学生活に慣れてきた頃になって、ふと高校時代の記憶が蘇るようになった。
数ヶ月ぶりに足を踏み入れた校舎は、懐かしい匂いがした。
制服姿の生徒たちを見ると、通り過ぎた青春が少し蘇る。
私は、担任だった夏雄先生のことが好きだった。
でも、想いを伝える勇気はなかった。
女子に人気があって、ほとんど話すこともできなかった。
話す勇気すらもなかった。
卒業と同時に、その事は思い出として心にしまおうとした。
ただ──ときどき感じる先生の視線に、不思議な違和感があった。
何かを見定められているような。
──その時、職員室から誰かが出てきた。
夏雄先生だった。
あの頃とほとんど変わらない姿。
そして、目が合った。
「水島……?」
私の心臓は、信じられないくらい跳ね上がった。
「久しぶり……今日はどうした?」
穏やかな顔で尋ねてくる先生。
「えーと……部活の後輩を見にきました」
緊張で、思わず目を逸らしてしまった。
先生がこちらに歩いてくる。
一歩ずつ。
その時、足がすくんだ。
まともに話したこともない先生。
どう接していいのかわからなくて、少し怖かった。
「なんで目を逸らすの? 前もそうだったよね」
声のトーンが少し低くなる。
「き、緊張しちゃうんです」
先生はすぐ目の前まで来ていた。
「もしかして……俺のこと好きだった?」
カーッと顔が熱くなる。
なんて答えればいい?
本当のことを言ったら、先生はどんな反応をするんだろう……?
何も言えずに目を泳がせていると、先生はどこか含みのある笑みを浮かべた。
「俺はずっと見ていたよ」
「え…?」
顔を上げた時には、先生はもう通り過ぎていた。
そして、ふいに振り返ってこう言った。
「その白いレースのワンピース、似合うね」
そう言い残して、校舎の外に消えていった。
私はあの瞬間、先生に心を囚れてしまったのかもしれない。
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