ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─

七転び八起き

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第二章 三年後

第31話

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 それから毎日、先生は家まで送ってくれた。

 でも、実習が終わったら私たちはまた離れ離れになるんだ。
 私がしんみりしていると、先生がそっと手を握ってくれる。
 それだけで、胸が満たされてしまう。

 家の近くに着いたとき、先生にキスをされた。

 ——幸せだった。

 このまま時が止まればいいのに、と思った。

 先生は、私の実習が終わったら、どうするつもりなんだろう。
 ……今は、それ以上考えないようにした。

 * * *

 とうとう、最終日。

 担当したクラスの生徒たちにお別れの言葉を伝えた瞬間、涙が出てきた。
 この三週間、私にとってはかけがえのない時間だった。
 クラスの何人かの子も泣いてくれて、それがまた嬉しくて、切なかった。

 放課後、担当していたクラスの男子生徒に告白された。
「ありがとう」とだけ告げた。

 私はあの時、先生に気もちを伝える勇気なんてなかった。
 勇気を出して言ってくれた事が、嬉しかった。
 気持ちには応えられなかったけれど。

 私が職員室に戻ろうとすると、夏雄先生が廊下で立っていた。

 もしかして、見られていた……?

 先生の表情がよくわからない。

「えーと……」

 でもなんだか、怖い。

「三週間、お疲れ」

 先生はぶっきらぼうに言った。

 ああ、とうとう終わってしまうんだ。

「先生と毎日一緒にいられて、幸せでした……」

 もう終わってしまう。  
 夢のようなひとときが。

 学校の先生達や職員の人達にお礼の挨拶をして、これでもうここに来る事もなくなるのかと思うと、とても寂しくて切なくて、窓から見える夕陽をずっと眺めていた。

 帰りは他の実習生と一緒に帰ろうと思っていたけれど、先生が「送る」と言った。
 駐車場まで二人で歩いて、先生の車の助手席にゆっくり座る。

「明日休みだから、遠くまで行くか」
「どこに行くんですか?」
「特に決めてない」

 私達はほとんど会話をせず、ただ流れていく景色を見ていた。
 そして私が連れて行かれたのは、夜景がきれいな公園だった。
 車から私たちが出たあと、先生はずっと黙っていた。

 私たちは明日から、また何事もなかったように元の生活に戻るのかな。

「先生、何で三年間何も連絡くれなかったんですか……?」

「……ごめん」

 一体この三年に何があったんだろう。

「先生……私、ずっとあの時のままですよ。先生への気持ちは変わりません。たとえもう会えなくなっても……」

 夜風が二人の間をすり抜けた。

「俺はもうお前に会う資格はないと思っていた」
「え……?」
「三年も放置して逃げていた」

 どういう事だろう。

「色々時間がかかった。それが終わるまで連絡はしないように、勝手に決めていた。そしてそのうち色々自信をなくしていた。」

 今までの先生とは思えない弱気な発言だった。

「もう諦めようとした。お前がまた現れるまでは」

 先生はポケットから何か出した。
 それを私に渡した。
 小さな箱だった。

「これは……?」
「開けていいよ」

 私はゆっくり箱を開けてみた。

 ──それは

 とても眩い宝石がついたネックレスだった。

「まさか……、ダイヤモンド?」

 驚いて先生の方を見た。
 すると、先生はそのネックレスを私の首に付けてくれた。

「お前の首輪」

 首輪……。

「私は犬ですか」

 でも、とても嬉しかった。

 先生は、言葉はあまりくれないけど、別の形で伝えてくれる。

「これ、一生大切にします」

 たとえこの先どうなっても、私にとって、先生との時間はかけがえのないもの。
 私の人生の中で。

 その後、駐車場に戻って車に乗った時、先生と唇が重なった。

 ただただ、この人を好きで好きで、それでここまで辿り着いた。

 理屈じゃない。
 私はこの人が居ないとダメなんだと、心からそう思った。
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