ダイヤの輝き─番外編集─

七転び八起き

文字の大きさ
9 / 11
新婚旅行

第八話

しおりを挟む
 ──とうとう

 ハワイを楽しむ最後の日。

 明日、日本に帰る。

 あっという間に過ぎていった時間。

 夢のようなひと時だった。

 今日は、ホエールウォッチングをして、あとはゆっくりする予定だ。

 私と先生は船の上にいた。

「先生、鯨まだですかね」

 返事がない。

「先生??」

 振り返ったら、船の壁側を向いて屈んでいる。

「先生どうしたんですか?」

 先生の顔を覗き込んだら、顔が真っ青だった。

「先生大丈夫ですか!?」

「酔った……」

 船酔い!
 船に乗る前、俺は大丈夫とか言ってたのに!
 先生に乗り物酔いの薬と、ガムをあげた。
 先生に持って行けと言われたものだ。
 先生は薬を飲んだ後、椅子に座って項垂れていた。

 先生が弱っている。
 私が守らないと!

 先生の背中をさすったり、手を握ったりした。
 しばらくすると、少し落ち着いてきた。

「ごめん……」
「いえ、大丈夫ですよ。お互い様ですから」

 その時、船の遠くの方から歓声が聞こえた。

 鯨が少しだけ見えた。

「先生!鯨ですよ!見えない時もあるんですよ!私たちラッキーです!」

 先生は私にもたれかかってきた。

「よかったな」

「はい!!」

 キラキラした海に微かに見えた鯨の姿を見られて、私は大満足だった。

 先生は大変だったけど。

 よく考えると、この旅行、ほぼ私が行きたいところを周っていて、先生が行きたい場所を聞いた記憶がない。

「先生は他に行きたいところありますか?」

 その時、先生が指を絡ませてきた。

「俺はお前がいるならどこでもいい」

 先生──

「ありがとうございます」

 私は幸せ者だ。


 船を降りた後、近辺を散歩していた。

「先生、もう明日には日本に……現実に戻らないといけないんですね」

 現実でも一緒だけど、先生と過ごしたハワイでのひと時は、特別だ。

 ビーチで海を眺めて、思い出に浸っていた。

 その時、先生に後ろから抱きしめられた。

「……俺と結婚して幸せか?」

 驚いて先生を見ると、不安そうな表情をしている。

「俺はお前にひどい近づき方をして、傷つけた。あの時、まともな近づき方ができていればと後悔している」

 先生は弱気になっていた。

「先生、私にとって今が全てなんです」

 私は先生の頬にキスをした。

「俺は、あの時のお前も大切にしたかった。今白乃が幸せだとしても、俺はずっとあの時の事を忘れない」

 私も忘れない。
 先生との出会い、再会、そして三年後から今までのことも。

「その思い出は、私にとって宝物なんです」

 先生は何も言わなかったけど、手は温かかった。

 ◇

 夜は野外のカジュアルなレストランで、音楽を聴きながら美味しい料理を食べて、お酒を飲もうとしたら先生に止められて、怒られた。

 ホテルに帰って、最後の夜を夜景を見ながら堪能した。
 またお互い行けそうな時があったら来たいな。

 隣で先生が雑誌を読んでいた。

 隙あり!!

 私は先生にキスをした。
 先生は驚いていたけど、その後ひたいにキスをしてくれた。
 手を繋いで、ただ隣に座っているだけで幸せだった。


 その夜、先生はすごく優しかった。
 私を慈しむように、大切にしてくれた。
 先生が温かくて、私の何もかもが満たされていく。

「先生、好きです」

 生徒の時に言えなかった言葉を、いつも言ってしまう。

「俺も」

 ただその幸せな時間に、身を委ねた。

 ◇

 次の日、日本に向かって飛行機が出発した。

 飛行機の上から見るハワイもとても綺麗だ。

 その後、しばらくしたら眠気がやってきて、私も先生も飛行機の中で寝ていた。
 手を繋いで。

 また先生と色々なところに行きたい。
 色々な景色を見たい。

 そう思った、幸せなひと時だった。


 ──fin──

 こちらの番外編を読んで頂きありがとうございました。
 次は他の番外編をアップします!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

旦那様の愛が重い

おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。 毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。 他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。 甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。 本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

田舎の幼馴染に囲い込まれた

兎角
恋愛
25.10/21 殴り書きの続き更新 都会に飛び出した田舎娘が渋々帰郷した田舎のムチムチ幼馴染に囲い込まれてズブズブになる予定 ※殴り書きなので改行などない状態です…そのうち直します。

【続編】ダイヤの指輪─先生と私の歩む未来─

七転び八起き
恋愛
◇こちらの作品は以下の作品の続編です。 「ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─」https://www.alphapolis.co.jp/novel/306629704/557024090 ◇あらすじ 主人公の水島白乃(みずしましの)と、婚約者の夏雄先生のその後の物語です。 まだちゃんとした夫婦になってない二人はどうなるのか。 そして、先生の従弟の遼が出会った不思議な女の子、篠山あやめ。彼女は遼にどう影響を与えるのか。 それぞれの未来が動き出す。 ◇前作のあらすじ◇ 主人公の水島白乃(みずしましの)は、高校三年生の時の担任の夏雄先生に恋をした。 卒業して再会した夏雄は別人のようだった。 夏雄の歪んだ愛、執着に翻弄される中、白乃はさらに夏雄に惹かれいく。 様々な困難を乗り越え、二人は結ばれた。

処理中です...