夜明けの旋律─二人の繋いだ手の先に待ち受けるもの─

七転び八起き

文字の大きさ
24 / 50

クリスマスプレゼント

しおりを挟む
 唯川の家からバイト先に向かっているうちに、外は真っ暗になっていた。

 バイト先のコンビニに着いたら、バックヤードの入り口の横で青柳さんが煙草を吸っていた。
 ギターを背負っていた。

 目が合った。

「いぶきくん、お疲れ~」

 気怠い笑顔を浮かべる。

「お疲れ様です。どこかで弾いてたんですか?」
「うん、知り合いのバンドに頼まれてギター弾いてきた」

 煙草の火を消す。

「いぶきくん、仲直りした?」
「え?」
「あの子と」
「……はい」
「よかったね。安心した」

 青柳さんがバックヤードのドアを開けた。

「青柳さんのおかげです。ありがとうございます!」

 頭を下げた。
 すると、大きな手が頭を優しく撫でた。

「今日バイト終わった後、少し時間もらえる?」

 今日はギターはやらないで帰ろうと思ったが、青柳さんとはちゃんと話したいと思った。

「はい。大丈夫です」

 そのあと、制服に着替えて、三時間バイトに専念した。

 ***

 もう少しで終わるというところで、突然の雨が降ってきて、雨宿りに色んな客が店に入ってきた。

 傘を持っていなかった。
 帰り際、店長が忘れ物の傘を貸してくれた。
 青柳さんは既に着替えて待っていた。

「雨降ってきちゃったね」
「俺は大丈夫です」
「よかった」

 青柳さんと傘を差して歩く。

「今日さ、ギター抜きにして、うちで何か食べて少し話そうよ」
「え、いいんですか?」
「ピザ食べたくなって」

 冬の冷たい雨が頬に触れた。

「あ、そういえばクリスマスもうすぐですね」
「今年は彼女いないし、予定もないから何も楽しくないわ」

 青柳さんは笑っている。

「青柳さんはどこに実家があるんですか?」
「静岡」
「静岡……行ったことないんで、いつか行ってみたいです」
「卒業したらお金貯めて色んなところに行けるね」

 ――卒業したら……
 そこにあるのは自由なのか、あてもない荒野なのか……

 ふと浮かぶ唯川の顔。
 あいつは卒業したらどこに行くのだろう。
 予想もつかない未来に不安が募る。

「いぶきくんはその子とクリスマス一緒にいるの?」
「え? いや、約束とかしてないです。ただ、毎年家族でクリスマスは過ごしてます」
「そうかー。でも、二人にとって初めてのクリスマスなんじゃないの?」

 面白そうに青柳さんが聞いてくる。

「からかわないでください……」
「ごめん! そんなつもりはないよ。ただ、羨ましいと思っただけ」

 青柳さんは、気づいているのだろうか。

「青柳さん、俺が言ってる”友達”の唯川は、男なんです」
「うん。知ってるよ」
「気になりませんか?」
「あまり」

 こういう恋の形は、世間一般ではタブーで、あまり堂々と人に言えるものではない。

「好きなら男でも女でもいいでしょ。幸せならさ」

 少し恥ずかしくなった。

 青柳さんの家に着いた。
 濡れた傘を畳んで入った。

 青柳さんの家の中に入ったら、アコースティックギターが二本あった。

「え、また買ったんですか?」
「知り合いに安く譲ってもらった」
「じゃあもう一本はどうするんですか?」

 青柳さんは、一本を持って俺に差し出した。

「いぶきくんにあげる」
「え」
「早いけどクリスマスプレゼント」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

放課後の旋律~君と僕の秘密の放課後~

七転び八起き
BL
高校生の柏木いぶきは、放課後に偶然聴いた美しいピアノの音に導かれ、音楽室で一人ピアノを弾く唯川悟史と出会う。「ピアノを習いたい」というまっすぐな言葉をきっかけに、悟史はいぶきにピアノを教え始める。 ピアノと悟史への憧れを抱くいぶき。過去に何かを抱え、人前で弾けなくなっていた悟史。週に二回のレッスンを重ねるうちに、二人の距離は少しずつ縮まっていく。 夏に響く二人の音。

雪色のラブレター

hamapito
BL
俺が遠くに行っても、圭は圭のまま、何も変わらないから。――それでよかった、のに。 そばにいられればいい。 想いは口にすることなく消えるはずだった。 高校卒業まであと三か月。 幼馴染である圭への気持ちを隠したまま、今日も変わらず隣を歩く翔。 そばにいられればいい。幼馴染のままでいい。 そう思っていたはずなのに、圭のひとことに抑えていた気持ちがこぼれてしまう。 翔は、圭の戸惑う声に、「忘れて」と逃げてしまい……。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

告白ごっこ

みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。 ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。 更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。 テンプレの罰ゲーム告白ものです。 表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました! ムーンライトノベルズでも同時公開。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

処理中です...