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本当の気持ち
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あれから、二人で近くの公園に来ていた。
ブランコに座る。
唯川も隣に座った。
あっという間に日が傾き、周囲に影が落ちていた。
「……この時間、好きなんだ」
唯川が空を見上げる。
「なんで?」
「昼と夜の間。音が変わるから」
「言われてみれば、確かに」
さっきまで聞こえていた車の音も、遠くなっている。
「いぶき、今日はわざわざ来てくれてありがとう」
「うん」
静寂に包まれる。
「前に進もうとするたびに、いぶきと離れていく感じがして、ピアノを続ける意味がわからなくなっていた」
唯川が空を見上げる。
少しずつ冬の星が浮かび上がる。
「だから、いぶきに縋っていた」
「………」
俺も、逃げていた。
青柳さんのところへ。
「いぶきを見てると愛しくて、一緒にいても足りなくて、もっと欲しくなって……。そんな自分も嫌だった」
あの完璧だと思った唯川が、普通の男子に見える。
いや、普通の男子なのかもしれない。
「俺さ、唯川が進んでいくのが、寂しかったんだ」
唯川が俺を見る。
「自分で応援してたのに。音大目指してるの、嬉しかったはずなのに」
足で地面を蹴る。
「比べちゃいけないって、わかってるんだけど」
ブランコがゆっくりと揺れる。
「俺、何も才能ないし」
唯川が俯いた。
「才能って言葉、ずっと重かったんだ」
「え?」
「もっと頑張らないといけないって言われてる気がして、苦しかった」
その横顔が、少し歪んでいる。
「……そうだったんだな」
「でも、今は違う」
唯川が俺を見た。
「いぶきが"好き"って言ってくれたから。俺のピアノも、俺自身も」
その瞳が、煌めいている。
「だから、もっと頑張ろうって思えた」
息を呑むほど美しい微笑み。
「好きな人に、好きになってもらえるって、すごく幸せなんだな」
俺も幸せを感じていた。
不器用に俺を求めてくる唯川を見ていたら、愛しいと思った。
今日、ここにきて、唯川とちゃんと向き合えてよかった。
唯川が目を伏せる。
「これから、いぶきと違う道を歩くことになっても、俺は前を向いて歩いていける」
「……そっか。よかった」
嬉しさの中に、寂しさが少し混じる。
「いぶきは?」
「俺も……お前と違う場所にいても、笑って生きていたい」
「うん」
冷たい風が吹く。
まだ何も見えない。
何も掴めてない。
でも――
「もっと、自信が欲しい」
俺は立ち上がった。
「俺も自信ないよ」
「いや、唯川は自信もてよ」
「うん。今日いぶきが来てくれて、自信ついた」
「よかった」
暫く、二人で空を眺めていた。
「あ、俺、最近ギター習ってるんだ」
「え、誰に?」
「バイト先の人。大学生で、バンドやってる人」
「……ふーん」
それきり唯川は何も言わない。
「……唯川、もしかして」
「別に」
そっぽを向く。
「好きにすれば」
唯川が拗ねている。
「唯川、可愛い」
「……うるさい」
唯川の手を握った。
「俺色々やってみるよ。何か見つけられるまで」
「……うん、応援してる」
「ピアノもやるから」
唯川の表情が、少し柔らかくなった。
「あたりまえだ」
二人で顔を見合わせて笑った。
「……そろそろ、バイト行かないと」
「うん」
「風、冷たくなってきたな」
「そうだね」
「ピアノの練習、無理すんなよ」
「いぶきも、あまり思いつめないで、俺にいつでも連絡して」
そう言って、唯川が俺の手を包んだ。
温かい。
ほんの数秒。
それから、離れた。
「また」
「うん、また」
唯川が去っていく。
俺はその背中を見送った。
街灯が、一つ灯る。
夜が始まる。
ブランコに座る。
唯川も隣に座った。
あっという間に日が傾き、周囲に影が落ちていた。
「……この時間、好きなんだ」
唯川が空を見上げる。
「なんで?」
「昼と夜の間。音が変わるから」
「言われてみれば、確かに」
さっきまで聞こえていた車の音も、遠くなっている。
「いぶき、今日はわざわざ来てくれてありがとう」
「うん」
静寂に包まれる。
「前に進もうとするたびに、いぶきと離れていく感じがして、ピアノを続ける意味がわからなくなっていた」
唯川が空を見上げる。
少しずつ冬の星が浮かび上がる。
「だから、いぶきに縋っていた」
「………」
俺も、逃げていた。
青柳さんのところへ。
「いぶきを見てると愛しくて、一緒にいても足りなくて、もっと欲しくなって……。そんな自分も嫌だった」
あの完璧だと思った唯川が、普通の男子に見える。
いや、普通の男子なのかもしれない。
「俺さ、唯川が進んでいくのが、寂しかったんだ」
唯川が俺を見る。
「自分で応援してたのに。音大目指してるの、嬉しかったはずなのに」
足で地面を蹴る。
「比べちゃいけないって、わかってるんだけど」
ブランコがゆっくりと揺れる。
「俺、何も才能ないし」
唯川が俯いた。
「才能って言葉、ずっと重かったんだ」
「え?」
「もっと頑張らないといけないって言われてる気がして、苦しかった」
その横顔が、少し歪んでいる。
「……そうだったんだな」
「でも、今は違う」
唯川が俺を見た。
「いぶきが"好き"って言ってくれたから。俺のピアノも、俺自身も」
その瞳が、煌めいている。
「だから、もっと頑張ろうって思えた」
息を呑むほど美しい微笑み。
「好きな人に、好きになってもらえるって、すごく幸せなんだな」
俺も幸せを感じていた。
不器用に俺を求めてくる唯川を見ていたら、愛しいと思った。
今日、ここにきて、唯川とちゃんと向き合えてよかった。
唯川が目を伏せる。
「これから、いぶきと違う道を歩くことになっても、俺は前を向いて歩いていける」
「……そっか。よかった」
嬉しさの中に、寂しさが少し混じる。
「いぶきは?」
「俺も……お前と違う場所にいても、笑って生きていたい」
「うん」
冷たい風が吹く。
まだ何も見えない。
何も掴めてない。
でも――
「もっと、自信が欲しい」
俺は立ち上がった。
「俺も自信ないよ」
「いや、唯川は自信もてよ」
「うん。今日いぶきが来てくれて、自信ついた」
「よかった」
暫く、二人で空を眺めていた。
「あ、俺、最近ギター習ってるんだ」
「え、誰に?」
「バイト先の人。大学生で、バンドやってる人」
「……ふーん」
それきり唯川は何も言わない。
「……唯川、もしかして」
「別に」
そっぽを向く。
「好きにすれば」
唯川が拗ねている。
「唯川、可愛い」
「……うるさい」
唯川の手を握った。
「俺色々やってみるよ。何か見つけられるまで」
「……うん、応援してる」
「ピアノもやるから」
唯川の表情が、少し柔らかくなった。
「あたりまえだ」
二人で顔を見合わせて笑った。
「……そろそろ、バイト行かないと」
「うん」
「風、冷たくなってきたな」
「そうだね」
「ピアノの練習、無理すんなよ」
「いぶきも、あまり思いつめないで、俺にいつでも連絡して」
そう言って、唯川が俺の手を包んだ。
温かい。
ほんの数秒。
それから、離れた。
「また」
「うん、また」
唯川が去っていく。
俺はその背中を見送った。
街灯が、一つ灯る。
夜が始まる。
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