夜明けの旋律─二人の繋いだ手の先に待ち受けるもの─

七転び八起き

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自覚

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 初めて、人と裸で向き合った。

 唯川の体温を直に感じた。

 柔らかくて暖かかった。
 心地よかった。

 唯川と唇を重ねる。
 優しい。

 ゆっくりと心が解けていく。

「触ってもいい?」
「いいよ」

 唯川の指が優しく触れる。
 鍵盤を滑っていた指。
 俺の手を導いていた指。

 初めての感覚だった。

「大丈夫?」
「……うん」

 唯川は慎重だった。
 慎重に踏み込んでくる。
 未知の世界に誘われる。

「いぶき」
「何……?」
「ちゃんと繋がりたい」
「……え?」

 唯川は恥ずかしそうにしている。

「いぶきは知らない?男同士だとどうするか……」
「知らないわけじゃないけど……」

 唯川は引き出しから何か出してきた。

「何それ」

 何かを手に持っている。

「こういうのを使わないといけないんだって」
「調べたの?」
「うん……」

 あの唯川が、知らないところでこっそり調べていた事を思い浮かべると、少し笑いが込み上げてきた。
 それを必死に耐えた。

「わかった。じゃあ、唯川の調べたようにしよう」
「いいの?」
「うん」

 不思議と好奇心が湧いてきた。

「つめたっ!」
「ごめん……」
「いや大丈夫」

 唯川が一生懸命準備をしている。

「これでいいのかな」
「わからない」
「とりあえず、やってみよう」

 唯川は細い指をゆっくり忍ばせた。

「どう?」
「……唯川の指が穢れる」
「何言ってるんだよ」
「大事にしろよ、ピアノやるのに、命だろそれ」
「そうだよ。だから、いぶきにしかしない」

 その言葉が嬉しかった。

 違和感はあるし、いいものとも言えない。
 ただ、こんな唯川を見られるのは自分だけなのだと思うと、誇らしかった。

「いぶき、痛かったらごめん。我慢できなかったらやめるから」
「うん」

 唯川がゆっくりと入ってくる。

 ──苦しい……痛い。

「いぶき、ごめん」
 申し訳なさそうにしている唯川。

「いや……きっと初めては、こうなるんだよ。たぶん」
 フォローする俺。

 一向に前に進まない状況。

「いぶき力抜いてみて」
「わかった……」

 息を吸ってゆっくり吐いた。
 その時、深い部分に一気に到達した。

「いたっ!!」
「ごめん、ごめん」
「いや、大丈夫……」

 大丈夫なのかはわからない、何かあったら病院に行くしない。

「いぶき、全部入ったよ」
「うん……よかった」

 俺を気遣いながら、暫くして唯川は果てた。
 唯川のその姿は、今まで見た誰よりも、魅力的だった。

「いぶき、ありがとう……」

 乱れた呼吸の中、唯川が囁く。
 そして、俺の側に横たわった。

 二人で天井を見上げる。

「痛かったよね」
「……少し」
「ごめん」

 相変わらず申し訳なさそうにしている。

「唯川」
「うん」
「好き」

 唯川が驚いている。

「もう一回言って」
「無理」

 やっと、自分の中で答えが出た。
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