夜明けの旋律─二人の繋いだ手の先に待ち受けるもの─

七転び八起き

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一瞬の永遠

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 月曜日の朝。

 バス停を降りると、吐く息が白かった。
 ポケットに手を突っ込んで、校門をくぐる。
 首元が冷たい。

 昇降口で靴を履き替えた。
 廊下を歩いていると、向こうから唯川が歩いてきた。
 黒いコートを着ている。

 目が合った。
 一瞬、時間が止まったような感覚。

 唯川の白い肌。
 細い指。
 土曜日に触れた体温が、鮮明に蘇る。

 唯川が視線を逸らした。
 俺も慌てて顔を背ける。

 すれ違う。
 足音だけが響く。

 数歩進んでから、思わず振り返った。
 また目が合った。

 唯川が小さく笑って、そのまま角を曲がって消えた。
 心臓が、うるさい。
 深呼吸をすると、冷たく乾いた空気が体の中に広がった。

 教室に向かった。

 ***

 教室に入ると、前田と長嶋が既に席についていた。

「おはよ」

「おっ、いぶきおはよー」
 前田がニヤニヤしている。

「なんだよ」
「いや、なんかさ」

 長嶋も笑っている。

「いぶき、唯川となんかあった?」
「は?」

「絶対なんかあったでしょ」

 前田が身を乗り出してくる。

「何もないよ」
「嘘だ~。さっき廊下で二人見たし」
「……別に」
「あ、今動揺した!」
「してないよ」
「絶対なんかあったな」

 長嶋が茶化してくる。

「もういいだろ」

 鞄を机に置いて、座った。
 前田と長嶋は笑いながら、それ以上は言ってこなかった。

 もうバレてるのかもしれない。
 二人はふざけてるけど、言いふらすようなやつらではない。
 ただ、認めると色々面倒だ。

 何事もなかったかのように午前中を過ごした。

 ***

 昼休み。
 屋上に上がった。

 ドアを開けると、冷たい風が吹きつけてきた。
 フェンスに寄りかかって待つ。

 少しすると、ドアが開いた。
 唯川が出てきた。

 目が合う。

「ちょっと話したいことがあって」
「うん」

 唯川が少し距離を空けて隣にたった。

「寒いな」
「うん」

 二人で空を見上げる。

「俺ギター習ってるってこの前言ったよね」

 唯川が頷く。

「その人にライブ誘われたんだけど、一緒に行ってくれる?」
「ライブ?」
「その人がステージでギターやるみたいで。聞きにきてほしいって」

 唯川の表情が、わずかに曇った。

「……唯川にも来て欲しいって」
「え?」
「唯川とのこと話してて」
「そうだったんだ」
「嫌だった?」

 唯川が俯く。

「よくわからない。でも、いぶきがそうしたかったなら、いいよ」
「ごめん」

 寒さが堪える。

「寒いから戻ろうか」
「うん」

 屋内に入って、階段を降りる。
 その後、人目につかない場所で、唯川にキスをした。

 唯川の目が見開かれる。
 そのあと目を伏せた。

「学校だよここ」
 唯川が小さく呟く。

「……音楽室で俺に触ってきたのは誰だ」

 何も言わなくなった。

 手に触れる。
 またキスをする。
「好き」

 唯川の瞳が潤む。
「俺も」

 唯川は誰よりも綺麗で、純粋で、特別だ。
 この気持ちは今まで生きていた中で、一番胸を熱くした。

 ずっと続くかわからない。
 でもこの想いは一生忘れない。

 遠くでチャイムが鳴る。

「戻ろう」
「うん」

 教室に戻ると、午後の授業が始まる。

 青柳さんのライブ。
 唯川と一緒に音楽を聴く。
 それだけで、楽しみで仕方なかった。
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