夜明けの旋律─二人の繋いだ手の先に待ち受けるもの─

七転び八起き

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灯る音楽

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 放課後。
 家に帰った後、祖母の家に向かった。
 背中にギターケースを背負って。

 玄関のドアを開ける。

「ただいま」
「あら、いぶき」

 祖母が出てきた。
 ギターケースを見て、目を丸くする。

「それ、ギター?」
「うん。もらったんだ」
「まあ」

 祖母は驚いている。

「両方やるの?」
「うん」

 祖母が、少し目を細めた。

「おじいちゃんも、ギター弾いてたのよ」
「え、そうなの?」
「ええ。若い頃」

 祖母が懐かしそうに言う。

「知らなかった」
「もう随分前のことだから」

 祖母がお茶を淹れてくれた。

「弾いてみせて」
「うん。ピアノ弾いてからでいい?」
「ええ」

 二階のピアノの部屋に上がった。

 ギターケースを置いて、ピアノの前に座る。
 鍵盤に手を置く。
 音を鳴らす。

 ゆっくりと。
 一音ずつ。

 音が、部屋に広がる。
 最後の音が消える。

「いぶきがまたピアノ弾いてくれてよかった」

「悟史くんと仲直りしたのね」
「うん」

 次は立ち上がって、ギターケースを開ける。

 青柳さんにもらったアコースティックギター。
 青柳さんにもらった青いピック。
 抱える。

 弦を抑えて、鳴らす。
 習ったコードを押さえる。

 ピアノとは違う震える響き。
 まだ拙い音。

「素敵ね」

 祖母が微笑んでいる。

「まだ全然だけど」
「いいのよ。楽しそうだから」

 ギターを置いた。

「おじいちゃん、上手だった?」
「ええ。よく弾いてたわ」

 祖母が窓の外を見る。

「あの頃はフォークミュージックが流行ってた」
「フォーク…?」
「今度聞かせてあげる」

 まだ知らぬ、音楽に期待を膨らませて、また弦を弾いた。

 ***

 家に帰って、夕飯を食べた。

 弟たちが騒いでいる。

「兄ちゃん、ギター弾けるの?」
「まだ練習中」
「聞きたい!」
「もうちょっと上手くなったらね」

 母が笑っている。

 部屋に戻って、制服を着替えた。

 スマホを見る。
 唯川からメッセージが来ていた。

『金曜、何時?』
『6時に駅で』
『わかった』

 ライブは七時から。
 唯川と一緒に行く。
 少し緊張する。

 でも、楽しみだった。

 ***

 金曜の夕方。

 駅に向かった。
 改札の前で待つ。
 人が行き交う。

 少しして、唯川が来た。
 黒いコートに、マフラー。

「待った?」
「さっき来たとこ」
「よかった」

 二人でライブハウスがあるビルまで歩く。

「ライブハウス、初めて?」
「うん」
「俺も」

「いぶき」
「ん?」
「ギター楽しい?」
「うん」
「そっか」
「でもピアノもちゃんと弾いてるよ」
「うん」

 スマホで地図を見る。

「こっちみたい」

 繁華街を抜けて、少し路地に入る。
 古いビルが見えた。

「あれかな」

 入口に、小さな看板があった。
 階段が、地下に続いている。

「行こう」

 階段を降りる。
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