夜明けの旋律─二人の繋いだ手の先に待ち受けるもの─

七転び八起き

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巡る季節

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 4月

 高校三年になった。
 今日は始業式。

 唯川と待ち合わせして校門をくぐった。

 学校に行くと、クラス分けが表示されていた。

 自分の名前を探した。
 すると、それよりも先に、唯川の名前を見つけた。

 そして、自分の名前は、その何個か下に記載されていた。

「あ、同じクラス」

 二人で顔を見合わせた。

 新しい教室に入る。

 座席を確認すると、唯川と隣だった。

 唯川が少し笑った。

 ***

 帰りのホームルームが終わって、二人で昇降口まで向かう。

「よかった。高校最後の一年がいぶきと一緒で」
「うーん、バレないようにしないとなぁ」
「そうだね。今までクラス離れてたから気づかれにくかったかも」
「まあ前田にはバレてるんだよね」
「え?」
「何も言ってないのに、バレてた」
「それは……仕方ないね」

 嬉しかった。
 一緒のクラスになれたことが。

「普通にしていよう。もし何か言われても、その時はその時だ」
「うん」

 唯川が頷く。

 桜の木からは、既に新緑が見える。

「じゃあ、俺はこれからレッスンだから、行くね」
「うん」

 唯川が歩いていく。

「あ」
 唯川が振り返った。

「いぶき、先生が、いぶきに会いたいって」
「え?」
「いぶきのこと少し話しちゃってて。そしたら、聞きたいって」
「……考えておく」
「ごめん」
「ううん、嬉しい」

 唯川は少し笑って、去った。

 ***

 バイトの後、青柳さんの家にいた。

「いぶきくん、進路決めた?」
「まだです」
「そうか~」

 青柳さんがギターを弾く。
 とてもいいメロディだった。

「それ何て曲ですか?」
「ん?これは昔の卒業ソングだよ」

 青柳さんがスマホで動画を見せてくれた。

「すごくいいです」
「これ、ピアノの弾き語りの曲なんだよね」

 弾きたい、唯川に聞かせたい。

「じゃあ、ギターでやってみようか」
「はい」

 青いピックを持つ。
 青柳さんと合わせる。

「あの…青いピックの人と会ってどうでしたか?」
「変わってなかった。でも別の夢を見つけたみたい」

 青柳さんは特に悲しそうではなかった。
 むしろ、どこか晴れやかだった。

「会えてよかった」

 青柳さんが窓の外を見る。
「もう未練はない」

 暫く、二人でギターを弾いた。

 ***

 四月の終わり。

 放課後、唯川と音楽室に行った。

「そこに座って」
 唯川に言う。

「うん」
 唯川が座る。

 ピアノの前に座る。
 鍵盤に手を置く。

 ゆっくりと弾き始める。
 歌を乗せる。

 唯川がじっと聞いている。

 もう桜は散っている。
 でも曲の中では咲き誇る。

 大きく響く和音。
 ゆっくりとアウトロを弾いて、曲が終わる。

「……いい曲だね」

 唯川がピアノに近づく。

「ねぇ、唯川も弾いて」
「え?」

 俺は立ち上がって唯川を座らせた。

「できたら歌って」
「え??」

 二回驚く。

「唯川の歌声も聞きたい」

 唯川が困っている。

「わかった、あまり知らない曲だから、少しなら…」
「ありがとう」

 リュックから楽譜を出して、唯川に見せる。
 それを見ながら唯川が弾く。

 美しい旋律が音楽室に広がる。
 まるで、今日が卒業式のようだ。

 つい歌詞を口ずさんでしまう。

 そして、二回目のサビで、静かに唯川が歌った。
 それをじっくりと聞く。

 唯川の澄んだ歌声。
 心に優しく響く。

 曲が終わる。

「すごいよかった。また歌ってほしい」
「俺は歌は自信ない」
「俺は好きだよ。唯川の声」

 唯川の隣に座る。
 キスをした。

 また夏がやってくる。

 きっとこれからもこの放課後は続いていく。

 ずっと。

 ──fin
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