秘密の館の主に囚われて 〜彼は姉の婚約者〜

七転び八起き

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月夜の帰路

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──月明かりが照らす部屋

私はカウリス様とシーツの中にいた。

背中を向ける私の髪を彼が撫でる。

「カウリス様、ここに来るのは今日が最後です」

彼の手が止まった。

「なぜだ」

「そんな事、言わないとわからないんですか?」

私は起き上がった。

「姉を陰で裏切っていることをどう思うんですか?」

カウリス様は顔色一つ変えない。

「裏切る?俺は結婚するつもりだが。レベッカと」

「ならこの関係は終わらすべきでしょう」

「それとこれは別だ。政略結婚に愛などない」

「愛は育むこともできますよ。私のことはもう放っておいてください」

私が立ち上がろうとすると、ベッドの中に引き戻された。

「ユミリア、俺のことどう思う」

真っ直ぐ見つめられた。

「わかりません……」

「君は好きでもない男と体を重ねることができるのか?」

言葉に詰まった。なにも答えられない。

──でも

「カウリス様……私、縁談がきているのです」

カウリス様の目が見開かれた。

「誰だ」

「それを言う必要はありません。縁談が上手くいけば、私は結婚するかもしれません。お互いのために、終わりにしましょう」

私は無理矢理立ち上がって服を着た。

「待て」

カウリス様の言葉を無視した。

彼の部屋を出て廊下を足早に駆け抜け、出口に向かった。

屋敷の裏手から外に出ると、大きな月と静かな湖が幻想的に輝いている。

夢のような光景だった。

私は帰路を歩いた。

ここから家まで歩いたら、一晩かかるかもしれない。

でも、ここにいる訳にはいかない。

暫く歩いていると、後方から何かが近づく音が聞こえた。

振り返ると馬車が近くまで迫ってきていた。

通り過ぎようとした時、馬車が停まった。

「ユミリア様」

馬車の中から女性の声がした。

よく見ると、今日私を屋敷に迎えにきた女性──カウリス様の妹だった。

「馬車に乗ってください。屋敷まで送ります」

私は悩んだが、その馬車に乗った。

彼女は迎えにきた時は無表情だったが、今は少し穏やかな顔をしている。

「兄と何かあったのですか?」

「ええ……少し口論になってしまって」

「そうなのですね」

その後、暫く馬車の走る音だけが響いていた。

「ユミリア様、今から言うことは他言無用でお願いします」

「……なんでしょうか」

彼女の瞳が月明かりに照らされて淡く光る。

「兄は、私のせいでこうなってしまったのかもしれません」

彼女の言葉に驚いて、息を呑んだ。
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