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二章 やっと始まるラウトの旅
9.2つの旅はどこかで交わるのか?
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とある山奥に小さな村があった。
そこはどこか沈んだ雰囲気で空気が重たいところだった。
そこで今、1人の少女が旅に出ようとしていた。
「ルル、本当に行くんだな?」
「はい、私は決めました。街に出て冒険者になります。今まで育ててくれてありがとうございました、お父さん」
『ルル』と呼ばれた銀髪の少女は寂しそうに、しかし意思は固いという様子で答えた。
「そうか・・・ごめんな、この村が貧しいから、村長の娘なのに窮屈な生活を強いることになってしまった」
「いえ、私はこの村での生活に満足していました。ですが、冬が来るたびに飢餓で人が死ぬ現状を少しでも変えたいのです」
「本当にありがとな。でも、よく聞いてくれ。確かにお前は強い。だが、お人好しというか、素直すぎるというか、何というか・・・バカだ」
「そうなんですか!?」
ルルは驚愕の事実とばかりに驚く仕草をした。
「まあ、そこもいい所ではあるんだが、しかし悪い奴に騙されないか心配なんだ。だから早く信頼できる人を見つけるんだぞ」
「わかりました!!」
「お前がこの村を変えてくれることを祈ってるぞ。母さんもな」
「はい!!」
(お母さん、行ってきます!!お母さんの願いは私が叶えます!)
ルルは手を胸の前で合わせて、天を仰いで祈った。
ルルのお母さんは、ルルが幼い頃に病気で亡くなっている。そしてルルのお母さんの夢は冒険者となって、貧しい村々を救うことだった。
「行ってきます!!」
少女はそう元気良く言った後、村の門を抜けて森へと歩いていった。
こうして始まった彼女の旅には、結構すぐに素敵な出会いが待っていることを、まだ誰も知らない。
=====side主人公=======
ラウト、穂花、暎斗の3人はダンジョンから出てすぐの森を歩いていた。
「とりあえずこれからの方針を決めようか」
「そうだね。まずは街に行くよね?」
「そうなるね」
「それなら、冒険者登録しておく?」
穂花はそう提案した。
冒険者になることは俺も考えていたことだ。
(確かに、2人が有名な冒険者らしいし、聞く限りダンジョンでモンスターを討伐していたような感じでいいみたいだから、俺にもできるか?)
俺はそう考えて、少し疑問に思ったことを聞いてみた。
「冒険者になるとデメリットってある?」
「デメリットかぁ・・・」
「緊急クエストってのがあるぞ。街の近くでモンスターが大量発生した時とかに、Cランク以上の冒険者が強制で防衛戦に参加しなくちゃいけないって奴だ」
穂花が考え込む素振りをしたのを見て、暎斗がそう答えた。
「なるほど」
「そういえば、デメリットって言えるかは人それぞれかもだけど、有名になると貴族たちに目をつけられるよね。私たちは、貴族ってあまりいいイメージないから、全部断ってたけど、何度も専属の冒険者にならないかって勧誘されたよね」
「あったなぁ」
穂花が思い出したように言った言葉に暎斗もうんざりという顔で頷く。
(なるほど、そういう面もあるのか。なら目立つのは控えたいな。できるだけ自由に動きまわりたいからな。専属なんてもってのほかだ)
「俺も貴族と関わりたくはないな。目立たないように気をつける」
「じゃあ、ラウトも冒険者登録するんだね」
「一応な。お金には困ってないから、クエストはあまり受けないと思うけどな」
「えっ?ラウトお金持ってるの?」
穂花は俺が剣しか持っていないので、少し不思議そうに尋ねてきた。
(そういえば、アイテムボックスのことは言ってなかったっけ)
「あぁ、ダンジョンでドロップしたやつを魔法で保管してるんだよ。ほら、こうやって」
俺はそう言いながら、手を広げて穂花に見えるように腕を伸ばす。
そこにアイテムボックスから金貨を数枚出して見せた。
アイテムボックスは出したい物を念じると、手の平でも、地面でも好きな所に出すことができるのだ。
ただし出せるのは3メートルの範囲内くらいだ。
収納の時も入れと念じればパッと消えてアイテムボックスに保管される。
ちなみにアイテムボックスの中は時間の概念がないから、入れた時の状態のまま保管される。
簡単に言えば、某アニメに出てくる四次元ポ○ットだ。
「そんな魔法があるんだ・・・金貨は何枚くらいあるの?」
「うーん、正確には分からないけど、金貨だけで体育館がいっぱいになるくらい」
「・・・大金持ちだね」
「そうなのか?何せ価値が分からないからな。どれくらいの価値があるんだ?」
「金貨一枚で1万円くらいの価値かな・・・」
「そうなんだ」
「あれ?驚かないの?」
「まあ、金、銀、銅貨しかドロップしなかったし、それくらいかなとは思ってたからね」
「そっか・・・」
穂花は俺が驚くのが見たかったらしく、少し残念そうだった。
そう簡単には俺を驚かせんぞ。
まあ、さっきあそこがダンジョンだったと聞いて盛大に驚いたが・・・
それはともかく、俺は知らぬ間に億万長者になっていたらしい。
とは言え、冒険者になるのは、何もお金のためだけではない。
「冒険者になれば情報も集まりそうだから、冒険者ランクを上げるかは置いといて、まずは登録だけしとくよ」
「じゃあ、街に着いたらギルドに行こう!」
「オッケー」
さしあたりの方針が決まったし、頑張ろう。
さあ、異世界の街とはどんな所だろうか。
ワクワクしながら俺は歩みを進めた。
そこはどこか沈んだ雰囲気で空気が重たいところだった。
そこで今、1人の少女が旅に出ようとしていた。
「ルル、本当に行くんだな?」
「はい、私は決めました。街に出て冒険者になります。今まで育ててくれてありがとうございました、お父さん」
『ルル』と呼ばれた銀髪の少女は寂しそうに、しかし意思は固いという様子で答えた。
「そうか・・・ごめんな、この村が貧しいから、村長の娘なのに窮屈な生活を強いることになってしまった」
「いえ、私はこの村での生活に満足していました。ですが、冬が来るたびに飢餓で人が死ぬ現状を少しでも変えたいのです」
「本当にありがとな。でも、よく聞いてくれ。確かにお前は強い。だが、お人好しというか、素直すぎるというか、何というか・・・バカだ」
「そうなんですか!?」
ルルは驚愕の事実とばかりに驚く仕草をした。
「まあ、そこもいい所ではあるんだが、しかし悪い奴に騙されないか心配なんだ。だから早く信頼できる人を見つけるんだぞ」
「わかりました!!」
「お前がこの村を変えてくれることを祈ってるぞ。母さんもな」
「はい!!」
(お母さん、行ってきます!!お母さんの願いは私が叶えます!)
ルルは手を胸の前で合わせて、天を仰いで祈った。
ルルのお母さんは、ルルが幼い頃に病気で亡くなっている。そしてルルのお母さんの夢は冒険者となって、貧しい村々を救うことだった。
「行ってきます!!」
少女はそう元気良く言った後、村の門を抜けて森へと歩いていった。
こうして始まった彼女の旅には、結構すぐに素敵な出会いが待っていることを、まだ誰も知らない。
=====side主人公=======
ラウト、穂花、暎斗の3人はダンジョンから出てすぐの森を歩いていた。
「とりあえずこれからの方針を決めようか」
「そうだね。まずは街に行くよね?」
「そうなるね」
「それなら、冒険者登録しておく?」
穂花はそう提案した。
冒険者になることは俺も考えていたことだ。
(確かに、2人が有名な冒険者らしいし、聞く限りダンジョンでモンスターを討伐していたような感じでいいみたいだから、俺にもできるか?)
俺はそう考えて、少し疑問に思ったことを聞いてみた。
「冒険者になるとデメリットってある?」
「デメリットかぁ・・・」
「緊急クエストってのがあるぞ。街の近くでモンスターが大量発生した時とかに、Cランク以上の冒険者が強制で防衛戦に参加しなくちゃいけないって奴だ」
穂花が考え込む素振りをしたのを見て、暎斗がそう答えた。
「なるほど」
「そういえば、デメリットって言えるかは人それぞれかもだけど、有名になると貴族たちに目をつけられるよね。私たちは、貴族ってあまりいいイメージないから、全部断ってたけど、何度も専属の冒険者にならないかって勧誘されたよね」
「あったなぁ」
穂花が思い出したように言った言葉に暎斗もうんざりという顔で頷く。
(なるほど、そういう面もあるのか。なら目立つのは控えたいな。できるだけ自由に動きまわりたいからな。専属なんてもってのほかだ)
「俺も貴族と関わりたくはないな。目立たないように気をつける」
「じゃあ、ラウトも冒険者登録するんだね」
「一応な。お金には困ってないから、クエストはあまり受けないと思うけどな」
「えっ?ラウトお金持ってるの?」
穂花は俺が剣しか持っていないので、少し不思議そうに尋ねてきた。
(そういえば、アイテムボックスのことは言ってなかったっけ)
「あぁ、ダンジョンでドロップしたやつを魔法で保管してるんだよ。ほら、こうやって」
俺はそう言いながら、手を広げて穂花に見えるように腕を伸ばす。
そこにアイテムボックスから金貨を数枚出して見せた。
アイテムボックスは出したい物を念じると、手の平でも、地面でも好きな所に出すことができるのだ。
ただし出せるのは3メートルの範囲内くらいだ。
収納の時も入れと念じればパッと消えてアイテムボックスに保管される。
ちなみにアイテムボックスの中は時間の概念がないから、入れた時の状態のまま保管される。
簡単に言えば、某アニメに出てくる四次元ポ○ットだ。
「そんな魔法があるんだ・・・金貨は何枚くらいあるの?」
「うーん、正確には分からないけど、金貨だけで体育館がいっぱいになるくらい」
「・・・大金持ちだね」
「そうなのか?何せ価値が分からないからな。どれくらいの価値があるんだ?」
「金貨一枚で1万円くらいの価値かな・・・」
「そうなんだ」
「あれ?驚かないの?」
「まあ、金、銀、銅貨しかドロップしなかったし、それくらいかなとは思ってたからね」
「そっか・・・」
穂花は俺が驚くのが見たかったらしく、少し残念そうだった。
そう簡単には俺を驚かせんぞ。
まあ、さっきあそこがダンジョンだったと聞いて盛大に驚いたが・・・
それはともかく、俺は知らぬ間に億万長者になっていたらしい。
とは言え、冒険者になるのは、何もお金のためだけではない。
「冒険者になれば情報も集まりそうだから、冒険者ランクを上げるかは置いといて、まずは登録だけしとくよ」
「じゃあ、街に着いたらギルドに行こう!」
「オッケー」
さしあたりの方針が決まったし、頑張ろう。
さあ、異世界の街とはどんな所だろうか。
ワクワクしながら俺は歩みを進めた。
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