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二章 やっと始まるラウトの旅
31.ある計画は現実味を帯びて・・・
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ーーーside主人公ーーー
スーシー、略してスーがこの屋敷に忍び込んだ夜が明け、翌朝のこと。
俺はあの後、正式にスーを雇ってこの家の使用人という事になった。
しかし、3人にはまだスーの存在を秘密にしておく。
流石に侵入者を捕まえて使用人にしました、と言っても信用してくれないだろう。
だから、少し時間をおいて雇った使用人として紹介する事にした。
その間、スーには別の仕事をしてもらうつもりだ。
という事で、俺はスーを地下のシェルターに連れてきた。
「ここは?」
ついて来たスーが疑問の声を上げた。
「ここは、屋敷の地下にあるシェルターで、俺がこれから作ろうとしてる組織のアジトになる予定の場所」
「組織?」
「そう、俺はある人を探してるんだけど、その人の情報を集めるために、諜報組織を作ろうと思ってるんだ」
「理解。どれくらいの規模にするの?」
スーは俺の計画を理解し、即座に話を進めてくれる。
「スラムの仕事に困った人を雇うつもりだから、スラムの住人が雇われてくれるか次第だね。最悪、俺とスーの2人だね」
「そっか・・・2人だけ・・・」
スーが小声で呟く。
「無理そうなら断ってくれても良いよ?」
俺はスーが心配そうに見えたので、そう言った。
「ううん、心配なんかない。むしろ嬉しい」
「嬉しい?」
「なんでもない、続けて」
俺が聞き返すと、スーは若干顔を赤くして続きを促した。
頼られて嬉しいのかもしれない。
そういえば、スーの口調だが、奴隷だった期間が長く敬語は使えるが、俺との会話の時は普通の喋り方で良いと言ってある。
「それで、最初の内は俺とスーの2人で情報を集めに行くけど、ゆくゆくはスーだけで集めてもらいたい。人が増えたら、新人指導も頼むと思う。これは俺がメインでやるから、人手が欲しい時だけでいいかな」
「分かった」
今までの話でスーの仕事は、家事に、屋敷の管理に、裏の仕事と多忙過ぎると思うかもしれないが、意外とそうでもなかったりする。
実は、穂花とルルは料理好きで、朝夜の食事は作ってくれることが多い。
俺は綺麗好きな性格のため、屋敷の掃除は週に一度は必ずやっていた。
暎斗は自分が訓練するのに使いやすいように、庭の手入れをほぼ毎日してくれている。
他にも、俺の魔法のおかげで洗濯は10秒とかからず終わり、さらに干す必要もない。
それらを考慮に入れると、残る仕事はそこまで多くない。
「夜の仕事と昼の仕事がブッキングすることもあるかもだけど、その次の日は必ず休日にするから我慢してね」
「よ、夜の仕事・・・」
俺はスーの身体を慮って言ったのだが、変な誤解を与えてしまったらしく、スーは柄にもなく焦りを見せた。
「ああ、ごめん。いやらしい意味じゃなくて裏の仕事ってこと」
「・・・」
スーは自分の思考を恥じるように俯いた後、恨みがましい目で俺を見つめた。
プクッと頬を膨らました姿が子供らしく、微笑ましい。
(初めて、年相応の表情が見れたな)
俺は無表情に近かった表情に変化があった事に、少し達成感を感じた。
このまま、スーには人並みの表情を取り戻して欲しいものだ。
「ご主人様」
しばらく、視線を交差させていると、スーが話を変えるように口を開いた。
「ご主人様って俺のこと?」
「うん」
「ご主人様は恥ずかしいから名前で呼んで」
「じゃあ、ラウト様。魔法の事教えて」
スーが言っているのは、全属性使えると言った事についてだろう。
そう言えば、俺が転生者である事は言ってなかった。
説明しておくか。
「ああ、そうだね。ひとつ質問だけど、スーも魔法使えるよね?」
「うん、空間属性の魔法を使える」
「そうだよね。じゃあさあ、俺と模擬戦してみない?」
「模擬戦?」
スーは俺の言葉の意味が分からず、聞き返した。
まあ、文脈がおかしいから当たり前だ。
しかし、俺は言い間違えたわけではない。
ある程度実力のあるスーには戦って知ってもらった方が、言葉で説明するより早いと、思ったのだ。
「そう、模擬戦。俺も空間魔法を使って戦うから」
「分かった・・・」
スーはまだ、納得してない感じだったが、理解はしたらしく、模擬戦の準備に入った。
俺も、腰に差していた安物の剣を抜いて構えた。
「準備はいい?」
俺は正面で戦闘体勢になったスーに確認を取る。
「うん」
「これから戦う中で俺がどういう存在か教えてあげるから、本気でかかって来ていいよ」
「理解。そういう事なら本気でいく」
「じゃあ、このコインが地面に落ちたら開始するよ」
俺はそう宣言し、コインを指で弾いた。
そして、コインは綺麗に放物線を描いて地面へと落ちた。
スーシー、略してスーがこの屋敷に忍び込んだ夜が明け、翌朝のこと。
俺はあの後、正式にスーを雇ってこの家の使用人という事になった。
しかし、3人にはまだスーの存在を秘密にしておく。
流石に侵入者を捕まえて使用人にしました、と言っても信用してくれないだろう。
だから、少し時間をおいて雇った使用人として紹介する事にした。
その間、スーには別の仕事をしてもらうつもりだ。
という事で、俺はスーを地下のシェルターに連れてきた。
「ここは?」
ついて来たスーが疑問の声を上げた。
「ここは、屋敷の地下にあるシェルターで、俺がこれから作ろうとしてる組織のアジトになる予定の場所」
「組織?」
「そう、俺はある人を探してるんだけど、その人の情報を集めるために、諜報組織を作ろうと思ってるんだ」
「理解。どれくらいの規模にするの?」
スーは俺の計画を理解し、即座に話を進めてくれる。
「スラムの仕事に困った人を雇うつもりだから、スラムの住人が雇われてくれるか次第だね。最悪、俺とスーの2人だね」
「そっか・・・2人だけ・・・」
スーが小声で呟く。
「無理そうなら断ってくれても良いよ?」
俺はスーが心配そうに見えたので、そう言った。
「ううん、心配なんかない。むしろ嬉しい」
「嬉しい?」
「なんでもない、続けて」
俺が聞き返すと、スーは若干顔を赤くして続きを促した。
頼られて嬉しいのかもしれない。
そういえば、スーの口調だが、奴隷だった期間が長く敬語は使えるが、俺との会話の時は普通の喋り方で良いと言ってある。
「それで、最初の内は俺とスーの2人で情報を集めに行くけど、ゆくゆくはスーだけで集めてもらいたい。人が増えたら、新人指導も頼むと思う。これは俺がメインでやるから、人手が欲しい時だけでいいかな」
「分かった」
今までの話でスーの仕事は、家事に、屋敷の管理に、裏の仕事と多忙過ぎると思うかもしれないが、意外とそうでもなかったりする。
実は、穂花とルルは料理好きで、朝夜の食事は作ってくれることが多い。
俺は綺麗好きな性格のため、屋敷の掃除は週に一度は必ずやっていた。
暎斗は自分が訓練するのに使いやすいように、庭の手入れをほぼ毎日してくれている。
他にも、俺の魔法のおかげで洗濯は10秒とかからず終わり、さらに干す必要もない。
それらを考慮に入れると、残る仕事はそこまで多くない。
「夜の仕事と昼の仕事がブッキングすることもあるかもだけど、その次の日は必ず休日にするから我慢してね」
「よ、夜の仕事・・・」
俺はスーの身体を慮って言ったのだが、変な誤解を与えてしまったらしく、スーは柄にもなく焦りを見せた。
「ああ、ごめん。いやらしい意味じゃなくて裏の仕事ってこと」
「・・・」
スーは自分の思考を恥じるように俯いた後、恨みがましい目で俺を見つめた。
プクッと頬を膨らました姿が子供らしく、微笑ましい。
(初めて、年相応の表情が見れたな)
俺は無表情に近かった表情に変化があった事に、少し達成感を感じた。
このまま、スーには人並みの表情を取り戻して欲しいものだ。
「ご主人様」
しばらく、視線を交差させていると、スーが話を変えるように口を開いた。
「ご主人様って俺のこと?」
「うん」
「ご主人様は恥ずかしいから名前で呼んで」
「じゃあ、ラウト様。魔法の事教えて」
スーが言っているのは、全属性使えると言った事についてだろう。
そう言えば、俺が転生者である事は言ってなかった。
説明しておくか。
「ああ、そうだね。ひとつ質問だけど、スーも魔法使えるよね?」
「うん、空間属性の魔法を使える」
「そうだよね。じゃあさあ、俺と模擬戦してみない?」
「模擬戦?」
スーは俺の言葉の意味が分からず、聞き返した。
まあ、文脈がおかしいから当たり前だ。
しかし、俺は言い間違えたわけではない。
ある程度実力のあるスーには戦って知ってもらった方が、言葉で説明するより早いと、思ったのだ。
「そう、模擬戦。俺も空間魔法を使って戦うから」
「分かった・・・」
スーはまだ、納得してない感じだったが、理解はしたらしく、模擬戦の準備に入った。
俺も、腰に差していた安物の剣を抜いて構えた。
「準備はいい?」
俺は正面で戦闘体勢になったスーに確認を取る。
「うん」
「これから戦う中で俺がどういう存在か教えてあげるから、本気でかかって来ていいよ」
「理解。そういう事なら本気でいく」
「じゃあ、このコインが地面に落ちたら開始するよ」
俺はそう宣言し、コインを指で弾いた。
そして、コインは綺麗に放物線を描いて地面へと落ちた。
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