世界最強だけど我が道を行く!!

ぶちこめダノ

文字の大きさ
59 / 117
4章 商人ピエールの訪れ

58.動き出す準備

しおりを挟む
ケルビラに帰ってきた俺たちは久しぶりに4人揃って食卓を囲み、ご飯を食べながら雑談を楽しんでいた。


「俺たちがいない間になんか変わったことはあった?」


俺はギルドで冒険者達が話していたことを思い出して、そんな風に切り出した。


「そういえば、ピエールっていう商人がこの街に来るみたい」


「なんでも、一国と同等の財力があって、それを使って色んな街からお金を搾り取ってるらしいぞ」


穂花と暎斗も俺の聞いた『ピエール』という人物について知っていた。
俺の知らない情報もあったので聞いて正解だった。


「ギルドに寄ったときにエートルまで来てるって聞いたけど、冒険者達は街を出ようって言ってたな」


「私たちは大丈夫なんでしょうか?」


ルルが不安げに言う。
お金に余裕がないルルは人一倍不安が大きいのだろう。

ただ心配する必要はない。

国家並みの財力?

こっちのアイテムボックスにはダンジョンで3年間貯め続けた貨幣が山のようにある。

1番量の少ない金貨でさえ体育館が一杯になる程あるのだ。
銀貨はおそらくその数百倍はある。
銀貨の価値は金貨の十分の一くらいだが、それでもこれだけ有れば国家並みの財力も鼻で笑えるだろう。

おっと自慢になってしまうからこの位にしておこう。

つまり、財力で勝負するならダンジョンに3年以上篭ってからにしろ、と言うことだ。


「全く問題ないね」


「全く問題ねぇよ」


「うんうん」


穂花、暎斗、俺の意見が一致する。
穂花と暎斗は俺がお金を処理し切れないほど持っていることを知っているので、俺が帰ってきた時点でその心配はしていない。


「そうなんですか?」


「うん、俺もピエールと同等か以上に財力があるからね。むしろ心配なのは街の経済が破綻して俺たちは無事なのに、ここから離れなくちゃいけなくなることかな」


「それはダメです。ギルドの報酬が受け取れなくなってしまいます」


「そうだね」


ルルらしい言葉に苦笑いする。

ただ、理由は違えど俺もこの街が機能しなくなるのは困るのだ。

ここは地下シェルターに人間を集めるのに、とても都合が良いのだ。
スラムがあるためか、この街には奴隷を扱う店が結構多いのだ。

スーことスーシーもそうだが、違法奴隷は奴隷商人がスラムなどから攫って来ることが多い。
そういう事は治安が良い場所では起こりづらい。
しかしこの世界では、犯罪などに対する対応は個人に任せられる。
特にこの街は詰所以外の公的な機関が存在しないので、犯罪行為が簡単に出来てしまう。

奴隷商人が違法奴隷を作りやすいので、集まってくるのだ。

ちなみに、何故、奴隷を扱う店が多いと都合が良いかと言うと、従順な人材を集めるのが簡単だからだ。
簡単に裏切る人材は、俺には通じなくても、スーやその他の仲間を傷つける可能性はないとは言えない。
その点、奴隷は命令に背くことは出来ないから安心だ。

とは言え、酷い扱いをしようとしているわけではない。
スーのように衣食住は保証するし、趣味や娯楽も禁止するつもりはない。
仕事を忠実にしてくれれば、それ以外は自由にしてもらいたいくらいだ。
だから、この世界での酷い奴隷の扱われ方からも救うことができる。
一石二鳥とはこのことである。


話が逸れたが、そんな理由もあって、この街に破綻されては困る。
なので、少し策を講じるとしよう。



食事を終えて皆が眠りについた頃、俺は地下シェルターに足を運んだ。
スーは俺が与えた一室にいる事は探知で分かっている。
不動産屋の店主の偵察を頼んでおいたので、その成果を聞きに来たのだ。

ーーコンコン

俺はドアをノックして反応を待つ。


「誰?」


中からスーの声が聞こえた。
若干かたい声色なので警戒しているのだと分かる。


「ラウトだよ」


「ラウト様!!」


俺だと言うことが分かるとスーはすぐに扉を開けて抱きついてきた。


「おかえりなさい」


「ただいま、何か困った事はなかった?」


俺はここを離れるときに、スーには食料や生活に必要なものが買えるように、ある程度のお金を渡してあったが、すぐには助けに行けない状況だったのでかなり心配だった。


「大丈夫だった。これ余ったお金」


スーはそう言いながら、お金を差し出してくる。
見ると、渡した額からほとんど減っていない。おそらく、最低限の食事の分しか使っていないのだろう。


「そのお金はスーのものだよ。持っておきな。それにもっと好きなことにお金を使っても良いんだよ」


「でも、私は趣味とかないから」


そう言われて俺はスーの過去の扱いを思い出す。
確かに、趣味や娯楽をさせて貰える環境ではなかっただろう。
それならばと、俺はひとつ提案をする。


「今度、俺と少し遊びに行かないか?」


「2人で?」


「そう、好きなところに連れて行ってあげるよ。そしたら趣味も見つかるかもしれないし」


「・・・デート」


「ん?」


スーの声が小さくて聞き取れなかった。


「ううん、なんでもない。行きたい」


「じゃあ、決まりだね。でも、まずは偵察の成果を聞かせてくれる?」


「分かった」


俺が聞くとどこか機嫌良さげに話し始めた。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

処理中です...