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4章 商人ピエールの訪れ
58.動き出す準備
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ケルビラに帰ってきた俺たちは久しぶりに4人揃って食卓を囲み、ご飯を食べながら雑談を楽しんでいた。
「俺たちがいない間になんか変わったことはあった?」
俺はギルドで冒険者達が話していたことを思い出して、そんな風に切り出した。
「そういえば、ピエールっていう商人がこの街に来るみたい」
「なんでも、一国と同等の財力があって、それを使って色んな街からお金を搾り取ってるらしいぞ」
穂花と暎斗も俺の聞いた『ピエール』という人物について知っていた。
俺の知らない情報もあったので聞いて正解だった。
「ギルドに寄ったときにエートルまで来てるって聞いたけど、冒険者達は街を出ようって言ってたな」
「私たちは大丈夫なんでしょうか?」
ルルが不安げに言う。
お金に余裕がないルルは人一倍不安が大きいのだろう。
ただ心配する必要はない。
国家並みの財力?
こっちのアイテムボックスにはダンジョンで3年間貯め続けた貨幣が山のようにある。
1番量の少ない金貨でさえ体育館が一杯になる程あるのだ。
銀貨はおそらくその数百倍はある。
銀貨の価値は金貨の十分の一くらいだが、それでもこれだけ有れば国家並みの財力も鼻で笑えるだろう。
おっと自慢になってしまうからこの位にしておこう。
つまり、財力で勝負するならダンジョンに3年以上篭ってからにしろ、と言うことだ。
「全く問題ないね」
「全く問題ねぇよ」
「うんうん」
穂花、暎斗、俺の意見が一致する。
穂花と暎斗は俺がお金を処理し切れないほど持っていることを知っているので、俺が帰ってきた時点でその心配はしていない。
「そうなんですか?」
「うん、俺もピエールと同等か以上に財力があるからね。むしろ心配なのは街の経済が破綻して俺たちは無事なのに、ここから離れなくちゃいけなくなることかな」
「それはダメです。ギルドの報酬が受け取れなくなってしまいます」
「そうだね」
ルルらしい言葉に苦笑いする。
ただ、理由は違えど俺もこの街が機能しなくなるのは困るのだ。
ここは地下シェルターに人間を集めるのに、とても都合が良いのだ。
スラムがあるためか、この街には奴隷を扱う店が結構多いのだ。
スーことスーシーもそうだが、違法奴隷は奴隷商人がスラムなどから攫って来ることが多い。
そういう事は治安が良い場所では起こりづらい。
しかしこの世界では、犯罪などに対する対応は個人に任せられる。
特にこの街は詰所以外の公的な機関が存在しないので、犯罪行為が簡単に出来てしまう。
奴隷商人が違法奴隷を作りやすいので、集まってくるのだ。
ちなみに、何故、奴隷を扱う店が多いと都合が良いかと言うと、従順な人材を集めるのが簡単だからだ。
簡単に裏切る人材は、俺には通じなくても、スーやその他の仲間を傷つける可能性はないとは言えない。
その点、奴隷は命令に背くことは出来ないから安心だ。
とは言え、酷い扱いをしようとしているわけではない。
スーのように衣食住は保証するし、趣味や娯楽も禁止するつもりはない。
仕事を忠実にしてくれれば、それ以外は自由にしてもらいたいくらいだ。
だから、この世界での酷い奴隷の扱われ方からも救うことができる。
一石二鳥とはこのことである。
話が逸れたが、そんな理由もあって、この街に破綻されては困る。
なので、少し策を講じるとしよう。
食事を終えて皆が眠りについた頃、俺は地下シェルターに足を運んだ。
スーは俺が与えた一室にいる事は探知で分かっている。
不動産屋の店主の偵察を頼んでおいたので、その成果を聞きに来たのだ。
ーーコンコン
俺はドアをノックして反応を待つ。
「誰?」
中からスーの声が聞こえた。
若干かたい声色なので警戒しているのだと分かる。
「ラウトだよ」
「ラウト様!!」
俺だと言うことが分かるとスーはすぐに扉を開けて抱きついてきた。
「おかえりなさい」
「ただいま、何か困った事はなかった?」
俺はここを離れるときに、スーには食料や生活に必要なものが買えるように、ある程度のお金を渡してあったが、すぐには助けに行けない状況だったのでかなり心配だった。
「大丈夫だった。これ余ったお金」
スーはそう言いながら、お金を差し出してくる。
見ると、渡した額からほとんど減っていない。おそらく、最低限の食事の分しか使っていないのだろう。
「そのお金はスーのものだよ。持っておきな。それにもっと好きなことにお金を使っても良いんだよ」
「でも、私は趣味とかないから」
そう言われて俺はスーの過去の扱いを思い出す。
確かに、趣味や娯楽をさせて貰える環境ではなかっただろう。
それならばと、俺はひとつ提案をする。
「今度、俺と少し遊びに行かないか?」
「2人で?」
「そう、好きなところに連れて行ってあげるよ。そしたら趣味も見つかるかもしれないし」
「・・・デート」
「ん?」
スーの声が小さくて聞き取れなかった。
「ううん、なんでもない。行きたい」
「じゃあ、決まりだね。でも、まずは偵察の成果を聞かせてくれる?」
「分かった」
俺が聞くとどこか機嫌良さげに話し始めた。
「俺たちがいない間になんか変わったことはあった?」
俺はギルドで冒険者達が話していたことを思い出して、そんな風に切り出した。
「そういえば、ピエールっていう商人がこの街に来るみたい」
「なんでも、一国と同等の財力があって、それを使って色んな街からお金を搾り取ってるらしいぞ」
穂花と暎斗も俺の聞いた『ピエール』という人物について知っていた。
俺の知らない情報もあったので聞いて正解だった。
「ギルドに寄ったときにエートルまで来てるって聞いたけど、冒険者達は街を出ようって言ってたな」
「私たちは大丈夫なんでしょうか?」
ルルが不安げに言う。
お金に余裕がないルルは人一倍不安が大きいのだろう。
ただ心配する必要はない。
国家並みの財力?
こっちのアイテムボックスにはダンジョンで3年間貯め続けた貨幣が山のようにある。
1番量の少ない金貨でさえ体育館が一杯になる程あるのだ。
銀貨はおそらくその数百倍はある。
銀貨の価値は金貨の十分の一くらいだが、それでもこれだけ有れば国家並みの財力も鼻で笑えるだろう。
おっと自慢になってしまうからこの位にしておこう。
つまり、財力で勝負するならダンジョンに3年以上篭ってからにしろ、と言うことだ。
「全く問題ないね」
「全く問題ねぇよ」
「うんうん」
穂花、暎斗、俺の意見が一致する。
穂花と暎斗は俺がお金を処理し切れないほど持っていることを知っているので、俺が帰ってきた時点でその心配はしていない。
「そうなんですか?」
「うん、俺もピエールと同等か以上に財力があるからね。むしろ心配なのは街の経済が破綻して俺たちは無事なのに、ここから離れなくちゃいけなくなることかな」
「それはダメです。ギルドの報酬が受け取れなくなってしまいます」
「そうだね」
ルルらしい言葉に苦笑いする。
ただ、理由は違えど俺もこの街が機能しなくなるのは困るのだ。
ここは地下シェルターに人間を集めるのに、とても都合が良いのだ。
スラムがあるためか、この街には奴隷を扱う店が結構多いのだ。
スーことスーシーもそうだが、違法奴隷は奴隷商人がスラムなどから攫って来ることが多い。
そういう事は治安が良い場所では起こりづらい。
しかしこの世界では、犯罪などに対する対応は個人に任せられる。
特にこの街は詰所以外の公的な機関が存在しないので、犯罪行為が簡単に出来てしまう。
奴隷商人が違法奴隷を作りやすいので、集まってくるのだ。
ちなみに、何故、奴隷を扱う店が多いと都合が良いかと言うと、従順な人材を集めるのが簡単だからだ。
簡単に裏切る人材は、俺には通じなくても、スーやその他の仲間を傷つける可能性はないとは言えない。
その点、奴隷は命令に背くことは出来ないから安心だ。
とは言え、酷い扱いをしようとしているわけではない。
スーのように衣食住は保証するし、趣味や娯楽も禁止するつもりはない。
仕事を忠実にしてくれれば、それ以外は自由にしてもらいたいくらいだ。
だから、この世界での酷い奴隷の扱われ方からも救うことができる。
一石二鳥とはこのことである。
話が逸れたが、そんな理由もあって、この街に破綻されては困る。
なので、少し策を講じるとしよう。
食事を終えて皆が眠りについた頃、俺は地下シェルターに足を運んだ。
スーは俺が与えた一室にいる事は探知で分かっている。
不動産屋の店主の偵察を頼んでおいたので、その成果を聞きに来たのだ。
ーーコンコン
俺はドアをノックして反応を待つ。
「誰?」
中からスーの声が聞こえた。
若干かたい声色なので警戒しているのだと分かる。
「ラウトだよ」
「ラウト様!!」
俺だと言うことが分かるとスーはすぐに扉を開けて抱きついてきた。
「おかえりなさい」
「ただいま、何か困った事はなかった?」
俺はここを離れるときに、スーには食料や生活に必要なものが買えるように、ある程度のお金を渡してあったが、すぐには助けに行けない状況だったのでかなり心配だった。
「大丈夫だった。これ余ったお金」
スーはそう言いながら、お金を差し出してくる。
見ると、渡した額からほとんど減っていない。おそらく、最低限の食事の分しか使っていないのだろう。
「そのお金はスーのものだよ。持っておきな。それにもっと好きなことにお金を使っても良いんだよ」
「でも、私は趣味とかないから」
そう言われて俺はスーの過去の扱いを思い出す。
確かに、趣味や娯楽をさせて貰える環境ではなかっただろう。
それならばと、俺はひとつ提案をする。
「今度、俺と少し遊びに行かないか?」
「2人で?」
「そう、好きなところに連れて行ってあげるよ。そしたら趣味も見つかるかもしれないし」
「・・・デート」
「ん?」
スーの声が小さくて聞き取れなかった。
「ううん、なんでもない。行きたい」
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