世界最強だけど我が道を行く!!

ぶちこめダノ

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7章 組織の暗躍

111.一夜の出来事

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重厚な扉の先は細い通路になっていた。

俺は魔法で足元を照らしながら進む。
ヒアとスーは自ら光を生み出す術を持っていないので、左腕と右腕にしがみついている。


「あれ?行き止まり?」


ヒアが通路の先を見つめて困惑する。
視線の先、そこには壁があるように見えたのだ。


「いや多分、下だよ。ほら」


「本当だ。階段があるね」


行き止まりに見えた壁は、実際には階段の天井だった。

段差の小さな石畳の階段には、ほとんど光が届いておらず、先が見えない。

そんな階段を3人は慎重に降りていく。
書庫は暗く長い階段の奥にあった。

書物が酸化するのを防ぐため、空気の通る隙間もないこの空間に、光の入る余地はない。
どこまでも暗闇が支配していた。

階段を十分に照らしていた魔法の光も、周囲をぼんやりと明るくするだけで、あまり役に立っていない。

そこで俺は光量を増やして、天井の近くまで移動させた。
すると、体育館ほどの大きさの空間が一気に照らされた。

綺麗に整列した本棚には、いかにも貴重そうな書物が隙間なく並んでいる。

そのひとつを無作為に取って開いてみると、何かの研究なのか、図や計算の羅列がページを埋め尽くしていた。


「どんな書物を探せば良い?」


俺が見ていた本を元に戻していると、ヒアがいくつかの本を手に尋ねて来た。


「異世界に関する書物がないか探してみてくれる?」


「分かったけど、異世界なんてあるの?」


「あれ、言ってなかった?俺は異世界から転生してきたんだよ」


「……えっ?」


「私は知ってた」


「知らないの私だけ!?」


スーが知っていたことに驚きを隠せない様子のヒア。


「でも、エラは知らないんじゃない?」


回復魔法で腕を治してはあげたが、異世界から来たことは教えていないはずだ。
俺の言葉にヒアがホッとしたのも束の間、スーがそれを否定する。


「ううん、エラも知ってる。私が教えた」


「えぇ~!やっぱり知らないの私だけじゃん……!」


ほぼ同時期に仲間に入ったエラさえ知っていた事がショックだったのか項垂れる。

そこまで残念がることかと疑問に思うが、落ち込むヒアを慰めるように「今度、面白い魔法を教えてあげるよ」と言うと、嘘のように元気を取り戻した。


「異世界に関する本を探せば良いのね!」


ヒアはそう意気込んで本棚に向かって行った。
スーと俺も後を追うように探し始めた。



俺は本棚に並ぶ本の見出しを順に眺める。

『魔法研究』『魔導具研究』『魔物研究』…


(やっぱり研究系の本が多いな……)


本棚を移ってもジャンルが変わるだけで研究の見出しばかりが並んでいる。
貴重な情報なのだろうが、俺たちにとっては何の価値もない。


俺がまた別の本棚に移動しようとした時、ヒアが一冊の書物を持って差し出してきた。

見ると見出しには『異世界ーーー』と記されていた。
だいぶ古いのか後半は滲んで読めないが、異世界についての本に間違いないだろう。

早速、開いて中を覗いてみる。
研究のような式や図はなく、文章が書かれていた。
中身も字が消えかかっていたが、なんとか内容を読み進める。
少し読んでみたが、どうやら物語らしい。
最初の方しか読んでいないが『魔法が使えない世界』をテーマにした作品だと思う。
地球とはまるっきり逆の発想に少し笑ってしまった。

求めていたものとは違うが、これが書庫にあると言う事は異世界に関する情報は一般的には出回っていないのだろう。
そうでなければ、物語を書庫に入れておく必要はない。
それが分かっただけでも収穫だ。

俺はヒアにお礼を言って本を返す。

さらに他の有力な情報はないかと探したが、見つけられなかった。
ヒアとスーにも何か見つけられたか聞いたが、2人とも首を振った。

この書庫で得られる情報はもう無さそうだ。


「そろそろ帰ろうか」


「「うん」」


帰る前に俺は、書庫全体に『リフレッシュ』の魔法を掛けた。
触った本に汚れが残らないための配慮だ。


転移で3人が去った後、書庫はまた暗闇に支配される。

朝、気絶から覚めた衛兵が異変に気づいて調査に入ったが、誰かが侵入した痕跡は見つからなかった。
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