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7章 組織の暗躍
113.王の書斎
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「ど、どこから入ってきた!?」
「ずっとここに居ましたよ。この2人と一緒に入ってきたんで……」
スーとヒアが部屋に入ってきた時には、冷静さを保っていたハルドも、俺が姿を現すと明らかに動揺した。
その理由を俺は知っている。
それは魔力探知に、俺の反応がなかったからだろう。
この部屋には城内で唯一、魔力探知の結界が張られている。
ハルドはヒアとスーの実力に驚きはしたものの、2人の反応を魔力探知で捉えられていたため、なんとか落ち着いていられたのだ。
しかし、俺の反応は姿を現すその瞬間までなかった。
それはハルドにとって理解の範疇を超える事実だった。
「嘘をつくでない!」
ハルドは何かの間違いだと、俺の言ったことが嘘なのだと主張する。
そう思うのも仕方がない。
これが目視できないだけなら、まだハルドにも理解できた。
しかし、魔力探知に反応がないなど、あり得ないことなのだ。
魔力探知は間違いなく、この世界で最も信用できる探知方法である。
ハルドだけでなく、獣人やエルフ達もこの探知魔法に絶対の信頼を寄せている。
それは魔力探知から逃れる術がないからだ。
量の差はあれど、魔物も人も等しく魔力を持っている。
そして魔力を失えば、ヒアのように気を失ってしまうため、隠すことも消すことも困難である。
それが常識なのだ。
ハルドは何も間違った事は言っていない。
ただ、その常識が通じない相手がいただけだ。
「別に嘘は言っていませんが、そう思うのでしたら構いませんよ」
俺は議論するつもりもないので、反論もしない。
ヒアを抱きかかえると、ヒアの指差した部屋の隅へと向かって歩く。
その後をスーが追う。
「せめて目的だけでも教えてはくれぬか?」
呼び止めるようにハルドは声をかけてくる。
時間稼ぎのつもりだろうが、俺たちは相手にしない。
ヒアが指差した部屋の隅を探っていると、壁が押せて通路が現れた。
その様子をハルドは「ぐぬぬ」と唸って見ていた。
てっきり妨害してくると思っていたが、自分ではどうにも出来ないと理解しているのか、手出しして来なかった。
俺とスーは躊躇いなく通路に入っていく。
図書館の時と違い、通路は明かりが灯っていて進みやすかった。
「スーは残り魔力は大丈夫?」
「まだ平気」
流石に2人とも抱きかかえて移動するのは無理なので、確認を取っておく。
少し歩くと、分かれ道にぶつかった。
ヒアの代わりに俺が風魔法で正しい道を判断しながら進む。
いくつかの分かれ道を経て、ようやく目的の部屋に辿り着く。
建物の中のはずだが、10分近く歩かされた。
城内も隠し通路も不親切な設計で困る。
隠し通路の先にあったのは書斎のような部屋だった。
「本があんまりない」
スーがその部屋を見てそんな感想を漏らす。
確かに本というより書類や証書のようなものが重ねられている。
俺たちが書斎に入ろうとした所で、俺の肩に顔を乗せていたヒアが「……うーん」と声を漏らす。
魔力が少し回復して意識を取り戻したのだろう。
「起きた?」
「う……うん……起き……ッ!」
ヒアは目を開いて自分の状況を理解すると、顔を真っ赤にして俺から距離を取った。
抱きかかえられていたのが、恥ずかしかったらしい。
「……あ、ありがと」
深呼吸をして落ち着いたヒアはお礼を言った。
「ところで、あれからどうなったの?」
「ヒアが見つけた隠し通路を進んで、ここに来たんだよ。これから探し始めるところ」
「オッケー!じゃあ早速、探そっか!」
まだ羞恥があるのか、ヒアは早口で返事をすると、書斎を漁り始めた。
俺とスーも後に続く。
俺は雑に重ねられた書類の山を見つけた。
一番上の一枚を取って見てみると、国家間の決め事を記した証書だった。
すでに効力はないようだが、流石は国王が管理する書斎。規模が大きい。
国家間で共有している情報もあるはずだ。
それを探して書類をひっくり返す。
「……ん?」
ペラペラと紙をめくっていると、目につく文字があった。
それは『神の存在について』と言うタイトルの書類だった。
興味を引かれて開いてみる。
「……あれ?中身がない?」
表紙をめくると裏表紙が現れた。
中身が抜け落ちているらしい。
「2人とも、これの中身を見なかった?」
俺は表紙をスーとヒアに見せる。
ヒアは首を振ったが、スーが目の前の書類を何やら探し始めた。
待っていると、表紙のないひと綴りの書類を持ち上げて見せてきた。
「これかも?表紙が無かったから無視してた」
スーの見つけたそれと表紙を合わせてみるとピッタリ重なった。
当たりだったようだ。
内容を読み始めると、スーとヒアが横から覗き込んで来る。
そして、その内容に2人は驚愕を露わにした。
「ずっとここに居ましたよ。この2人と一緒に入ってきたんで……」
スーとヒアが部屋に入ってきた時には、冷静さを保っていたハルドも、俺が姿を現すと明らかに動揺した。
その理由を俺は知っている。
それは魔力探知に、俺の反応がなかったからだろう。
この部屋には城内で唯一、魔力探知の結界が張られている。
ハルドはヒアとスーの実力に驚きはしたものの、2人の反応を魔力探知で捉えられていたため、なんとか落ち着いていられたのだ。
しかし、俺の反応は姿を現すその瞬間までなかった。
それはハルドにとって理解の範疇を超える事実だった。
「嘘をつくでない!」
ハルドは何かの間違いだと、俺の言ったことが嘘なのだと主張する。
そう思うのも仕方がない。
これが目視できないだけなら、まだハルドにも理解できた。
しかし、魔力探知に反応がないなど、あり得ないことなのだ。
魔力探知は間違いなく、この世界で最も信用できる探知方法である。
ハルドだけでなく、獣人やエルフ達もこの探知魔法に絶対の信頼を寄せている。
それは魔力探知から逃れる術がないからだ。
量の差はあれど、魔物も人も等しく魔力を持っている。
そして魔力を失えば、ヒアのように気を失ってしまうため、隠すことも消すことも困難である。
それが常識なのだ。
ハルドは何も間違った事は言っていない。
ただ、その常識が通じない相手がいただけだ。
「別に嘘は言っていませんが、そう思うのでしたら構いませんよ」
俺は議論するつもりもないので、反論もしない。
ヒアを抱きかかえると、ヒアの指差した部屋の隅へと向かって歩く。
その後をスーが追う。
「せめて目的だけでも教えてはくれぬか?」
呼び止めるようにハルドは声をかけてくる。
時間稼ぎのつもりだろうが、俺たちは相手にしない。
ヒアが指差した部屋の隅を探っていると、壁が押せて通路が現れた。
その様子をハルドは「ぐぬぬ」と唸って見ていた。
てっきり妨害してくると思っていたが、自分ではどうにも出来ないと理解しているのか、手出しして来なかった。
俺とスーは躊躇いなく通路に入っていく。
図書館の時と違い、通路は明かりが灯っていて進みやすかった。
「スーは残り魔力は大丈夫?」
「まだ平気」
流石に2人とも抱きかかえて移動するのは無理なので、確認を取っておく。
少し歩くと、分かれ道にぶつかった。
ヒアの代わりに俺が風魔法で正しい道を判断しながら進む。
いくつかの分かれ道を経て、ようやく目的の部屋に辿り着く。
建物の中のはずだが、10分近く歩かされた。
城内も隠し通路も不親切な設計で困る。
隠し通路の先にあったのは書斎のような部屋だった。
「本があんまりない」
スーがその部屋を見てそんな感想を漏らす。
確かに本というより書類や証書のようなものが重ねられている。
俺たちが書斎に入ろうとした所で、俺の肩に顔を乗せていたヒアが「……うーん」と声を漏らす。
魔力が少し回復して意識を取り戻したのだろう。
「起きた?」
「う……うん……起き……ッ!」
ヒアは目を開いて自分の状況を理解すると、顔を真っ赤にして俺から距離を取った。
抱きかかえられていたのが、恥ずかしかったらしい。
「……あ、ありがと」
深呼吸をして落ち着いたヒアはお礼を言った。
「ところで、あれからどうなったの?」
「ヒアが見つけた隠し通路を進んで、ここに来たんだよ。これから探し始めるところ」
「オッケー!じゃあ早速、探そっか!」
まだ羞恥があるのか、ヒアは早口で返事をすると、書斎を漁り始めた。
俺とスーも後に続く。
俺は雑に重ねられた書類の山を見つけた。
一番上の一枚を取って見てみると、国家間の決め事を記した証書だった。
すでに効力はないようだが、流石は国王が管理する書斎。規模が大きい。
国家間で共有している情報もあるはずだ。
それを探して書類をひっくり返す。
「……ん?」
ペラペラと紙をめくっていると、目につく文字があった。
それは『神の存在について』と言うタイトルの書類だった。
興味を引かれて開いてみる。
「……あれ?中身がない?」
表紙をめくると裏表紙が現れた。
中身が抜け落ちているらしい。
「2人とも、これの中身を見なかった?」
俺は表紙をスーとヒアに見せる。
ヒアは首を振ったが、スーが目の前の書類を何やら探し始めた。
待っていると、表紙のないひと綴りの書類を持ち上げて見せてきた。
「これかも?表紙が無かったから無視してた」
スーの見つけたそれと表紙を合わせてみるとピッタリ重なった。
当たりだったようだ。
内容を読み始めると、スーとヒアが横から覗き込んで来る。
そして、その内容に2人は驚愕を露わにした。
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