世界最強だけど我が道を行く!!

ぶちこめダノ

文字の大きさ
115 / 117
7章 組織の暗躍

114.作戦完遂。そして身に覚えのある噂

しおりを挟む
ある程度、読み進めて視線を上げる。

これは誰かの体験談を纏めたものなのか、書類には報告書のように、事実だけが淡々と記されていた。

内容を要約すると、この世界は神によって管理されていて、定期的に異世界ーーつまり地球から人を連れてきている、と言うものだ。

俺が知っている神についての情報と、概ね矛盾はない。
会った事はないが、本当に俺たち以外にもこの世界に来た地球人がいるのだろう。


神に転生させられた俺にとっては、かなり馴染み深い内容だったが、スーとヒアにはそうではなかったらしい。
お互いに顔を見合わせて驚いた顔をしている。


「これって本当なの?」


ヒアは信じきれない様子で尋ねてくる。
だが、神本人からも聞いた話なので間違いない。


「事実だろうね。俺も神に連れて来られたし」


そう伝えると考え込むように口を閉ざす。


2人にとっては理解しがたい事だろう。
俺も最初に神を名乗る男と会った時は、胡散臭いと思って信じなかった。

それに、この世界には宗教のようなものが発展していない。
神という概念自体も曖昧なものなはずだ。

すぐには飲み込めないだろうと思っていたのだが……


「知らなかったけど、ラウトみたいな規格外の人?がいるのね……」


「ラウト様が2人は想像するだけで怖い」


2人は割とすんなり受け入れた。

どうやら神の存在を否定するほどの固定観念もなかったため、納得してしまったらしい。
知識不足が良い方向に働いたな。


「思ったより重要な情報が得られたね。一応、他にも有力な情報がないか探して帰ろうか」


「「了解」」


2人は頷くと、まだ手をつけていない書類の山を崩し始めた。

それからしばらく漁ったが、更なる発見は無かった。


これから転移で帰るわけだが、その前にやっておく事がある。

今回の作戦では複数人に姿を見られているので、放っておくと手配書が国中のあちこちに貼られかねない。

なので記憶を消す必要がある。
このために俺は前々から魔導具を作っていたのだ。

この魔導具の作成には、とても苦労した。
第一に、記憶を操る類いの魔法は、この世界には存在しないのだ。
なので、久しぶりに地球で使っていた魔法を使用した。
感覚を忘れていたので、思い出すのにかなり時間が掛かった。

さらに、俺だけが使えるのでは意味がないので、組織のみんなが使えるように魔導具に魔法を付与したのだが、それが難しかった。

付与は魔法を発動させずに、魔力の動きだけを再現するような技術なので、普通に魔法を使うより大変なのだ。

そんな苦労を経て作成した魔導具を、やっと使う時が来た。
魔力はすでに充填してあるので、起動をスーに頼む。

スーが魔導具に、ほんの少し魔力を流し込んで起動させる。
すると、魔導具に付与された魔法が発動して王城全体に効果を及ぼした。

これの効果は『直近の1時間に出会った人物の風貌を思い出せなくなる』と言うものだ。

スーやヒアも効果範囲内にいるので、ハルドの顔つきなどを思い出せないはずだ。


「スー、国王の顔を思い出せる?」


「……ダメ。思い出せない」


スーに聞いて、効果がちゃんと現れているのを確認する。

自分で確かめられれば良いのだが、魔導具に付与したのは俺の魔法なので自分には効果がないのだ。

ともかく、これで記憶の消去は完了だ。


「これで作戦は完遂だね。さあ帰ろうか」


「うん!」


ヒアが元気に返事して、スーも頷く。
それを確認して俺は転移魔法を発動させてシェルターへ飛ぶ。

こうして俺たちは王の書斎を後にした。







作戦から2日ほど経った日の事だった。
屋敷のテーブルを囲み、みんなでのんびりと食事をしていた時、暎斗が街で聞いた噂を話題に上げた。


「なんかよぉ、王都で怪しい組織が活動してるらしいぜ。図書館の書庫に侵入したとか、王城の衛兵達がたった3人相手に手も足も出なかったとか……」


「本当なら怖いね。まあハルくんがいるから大丈夫かな?」


穂花も暎斗に同調するように反応を示した。

そんな中、身に覚えのあるその噂にスーとエラは僅かに身を固くする。

2人にとっては反応し辛い会話だろうなと俺は思う。

噂の元凶が目の前にいるとも知らずに、穂花と暎斗は会話を広げる。
その状況は珍妙で見ていて少し面白かった。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

処理中です...