幼女な神様には旅をさせよ

ぶちこめダノ

文字の大きさ
6 / 26
1章 幼女な神様との出会いと過去

6.過去の話なんだが②

しおりを挟む
外には数十人の包囲が出来上がっていた。

突破しようだなんて思っていない。
この家の敷地を踏もうとする奴を刺し違えてでも返り討ちにする。
それだけがオレの出来ることだ。

包囲を構成している隊員の一人が斬り込んできた。
オレはそれを落ち着いて躱し、頭部の防具に全力でショートソードを振り下ろした。
その攻撃でその隊員は意識を刈り取られる。

魔物の攻撃すら防御できるその防具は硬く、貫くことはできないが、全力で剣を当てれば脳を揺らすことは容易い。

魔法は使えないオレだったが、剣の腕は誇れるものがあった。
同年代はおろか、それこそ大人相手でも負けることはなかった。

でもそれは一対一の話だ。
その圧倒的な人数差をひっくり返せるほどの力はなかった。

今度は3人がかりで来た。

拙いながらも連携をとって攻撃してくる3人に、オレは局所的に一対一を作ることで対抗する。
しかし、1人倒すと次のひとりが参戦して来て、どんどんとオレは疲弊させられた。

終いには、重装備の隊員が背後から押さえつけて来た。
ショートソードでは歯が立たず、あっという間に身動きを封じられてしまった。

そしてトドメとばかりに、魔法陣を展開した何人もの魔法使い達が、一斉にオレに向けて魔法を放った。


迫りくる炎や水の魔法。
もはやオレに成す術もない。
その身を固くして、訪れる痛みを待った。

異変が起こったのはその時だった。
魔法がオレに当たる直前、空中へ溶けるように消えてしまったのだ。

その出来事はオレは勿論、倒魔隊の人間をも困惑させた。


この時に気づくべきであった。

オレが魔法の素質を持っていながらも火、水、風、光、どの属性も使うことが出来なかった理由に。

火、水、風、光以外の属性が存在する可能性に。


『闇』という



隊員の困惑はすぐに危機感に変わった。
魔法使いたちは闇雲にオレに向けて魔法を放つ。

しかし、その魔法はオレに届く前に消えてしまう。


そしてある時、ついに異変は災厄へと変わった。

いきなり大量の魔法陣がオレの周りに現れたのだ。
その魔法陣からは凄まじい量の魔法が雨のごとく降り注ぎ、無差別に辺りを蹂躙していった。

気づけば家を包囲していた倒魔隊は壊滅していた。

当時は何が起きたか分からなかったが、今なら分かる。
闇属性の特性が暴走したのだ。

この意味を理解してもらうには、まず上位属性の特性というものを説明せねばなるまい。

光が上位属性と呼ばれるのには理由があった。
それが光属性の特性、『反射』と言うものだ。

効果はその名の通りで、光属性の素質を持つ者の魔力に、基本属性の魔法がぶつかると反射する。
つまり、相手が魔法で攻撃してくるだけで勝手に反撃してくれるのだ。
それは魔法を使える魔物との戦いにおいて、無類の強さを発揮する。

これこそ倒魔隊が異常なまでに光属性の素質があるルミエールに執着する理由であった。


そして闇属性にも上位属性としての特性があった。
それをオレは『吸収』と呼んでいる。

効果は基本属性の魔法を吸収してその魔力を自分のものに出来るというものだ。
自動で反撃したりはしないが、吸収した魔力で攻撃すれば同じ事だ。

その特性が暴走した結果がこの惨状だった。

その事実を知ったのはもっと後だったが、その時にも確かな事が1つあった。
それはオレが何人もの命を奪ったこと。
それだけは理解していた。


「お兄ちゃん……?……ッ!」


いきなり外の音が止んだので、様子を伺うため顔を覗かせたルミエールは、外の惨状を見て息を呑む。


「これ……お兄ちゃんがやったの……?」


返答を聞く前からルミエールの声には、オレへの恐怖が入り混じっていた。

それはそうだよな。
虫さえ殺すことを躊躇うルミエールにとって、人を殺してしまったオレが、どれ程恐ろしい存在かは考えるまでもない。


「ごめんな……ッ……本当にごめんな」


言いかけた「酷いお兄ちゃんで」という言葉を飲み込んで、ただ謝った。
オレにもう兄を名乗る資格なんてない。
そばにいる資格さえないのだろう。

オレは逃げた。
遠く、できるだけ遠くに。
もう二度とルミエールと出会ってしまう事がないように。

たったひとつの守るべきものさえ、オレは守りきる事が出来なかったのだ。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました

AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」 公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。 死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった! 人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……? 「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」 こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。 一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました

朔夜
ファンタジー
この世界は「アステルシア」。 魔法と魔物、そして“従魔契約”という特殊な力が存在する世界。代々、強大な魔力と優れた従魔を持つ“英雄の血筋”。 でも、生まれたばかりの私は、そんな期待を知らず、ただ両親と兄姉の愛に包まれて育っていった。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

処理中です...