パラダイムシフト

べりる

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34国立病院

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リリアがロイドに連れられて来たのは、国の運営する大病院。

敷地内には緑に囲まれた散策路があり、病院の建物周囲に設けらた空間は明るく開放的だ。

国立病院を訪れた理由は、リリアが今使用している車椅子と松葉杖を体のサイズに合わせたものへの交換。

ロイドは病院の院長を兼任しているらしい。

「・・・???その若さで?!」

「前任の院長が退任する際、揉めていた院内派閥を抑制するべく無理矢理押し付けられたんだ。私は基本城に居るし、まあほとんどお飾りだ」

「押し付けられたって、誰に?」

独断的な勝手がまかり通るのかと、リリアはロイドを振り仰ぐ。

「理事長だな。先の国王に当たるお方から、指示を受けてな。まあ実際は理事長と前院長らに泣きつかれて、先代が強硬策きょうこうさくに出たんだ」

「異例中の異例での大抜擢ばってきだけど、反感あったんじゃ・・・」

「後ろに先代がいると解っていて、ケンカを吹っかけてくる間抜けは、そうはいない。それに私の場合は特異性を盾に・・・いや、おどしの武器かもしれないな」

「―――?他にも特殊な事情があったの?」

「メイリアス殿下が言っていただろう。私の役職は神官治療師だと」

「・・・神官で治療師で、大病院の医院長?兼任し過ぎてやしない?」

「他にも細々こまごま、色々とやっているがオルヴァーよりは多忙じゃないさ」

―――色々・・・色々ってなんだ。やけに意味深な言い回しは止めて頂けませんかね。気になるでしょうが。

なんとなくだが聞いてはいけない、不穏な気配をリリアは感じていた。

―――オルヴァーはロイドから見ても多忙なのか、そうか・・・。

オルヴァーに対し、リリアは手の平を合わせたくなってしまった。

―――オルヴァーの幸せを祈って・・・。今度なにかいたわってあげた方がいいのかもしれない。私自身の事でも、手間をかけさせているかもしれないし。

傍目はためから見ても気の毒な程の使われっぷりが透けて見えるオルヴァーを、不憫ふびんに思わずにはいられない。

建物へ近付くと、医療スタッフらしき男性が出迎えてくれた。

理学療法師のヒュードに、ロイドはデータの入ったカルテを手渡す。

「ヒュード、こいつのカルテだ。モノは準備出来ているか?」

「はい。指定された杖と車椅子はすでに用意してあります」

「昼まで頼む。王城まで送り届けてくれ。詳しい話はしている暇がない。今は盗賊団の件で立て込んでいるからな」

リリアをヒュードに任せると、ロイドは別件で慌ただしくどこかへ行ってしまった。

午前中いっぱいは理学師のヒュードが車椅子と杖の調節、使い方について指導してくれるそうだ。

ロイドに代わってヒュードに車椅子を押されながら、リリアは遠い目で昨日の事を思い出していた。
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