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44カナリア街の開戦
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監視衛星から送られるスクリーンには、明け方なのに、どんよりとした薄暗い雲の下で、六時頃から始まったカナリア街、外壁の戦闘が映し出されている。
ヒット王国は短期決戦と決めたのか、長い梯子を担いだ三万のほとんどの軍が、カナリア街外壁東門目指して突撃しだしたが、一点集中的な攻め方は、
火力の強い相手では、多数の死傷者を出してしまうし、防御も厚く守られてしまう最悪の攻め方である。
七人の戦士に持たせた大砲は、三十門全て東門側城壁上に並べられている。
トーマスは東門城壁上で、指揮を執っているのが確認された。
副教育参謀三名は七人の戦士を使い、各砲門の点検をさせているようで、
七人の戦士はせわしなく走り回っている。
ヒット王国軍の先頭が、壁から五十メートル辺りに迫った頃、
密集した集団の中央あたりで、火炎爆裂が起きたのは、樽に積み込まれていたガソリンに火が着火したのだろう。
火炎爆裂は戦場辺りを黒い煙で周りを闇にしてしまった。
ヒット王国軍は火だるまとなり、炎に包まれて駆け廻っている者もいる。
戦場中央辺りは、残酷な地獄火炎修羅場となっているのが確認できた。
ソリンに火が着火した近くの兵は、かなり死傷したであろう。
それでも砲門の怒り声は慈悲の欠片もなく、惨劇が起き続けていても止む事も無く続いている。
梯子を担いだ先頭集団は、後ろの惨事から逃れるように城壁に向かって行くが、梯子を壁に立てかける前に矢と火炎瓶に襲われている。
先頭集団は後衛からの矢の援護など無く、壁に取り付くことも出来ないまま、ほとんどが死傷している。
ヒット王国本陣首脳の視界からは、黒い煙が戦場を覆ってしまっている為に、兵の残酷な惨事を把握できない事で、戦況を見極めきれないでいる。
ヒット王国本陣首脳は、物見を頻繁に出すのだが、誰一人と戻ってこない様子である。
爆裂を合図に、南門と北門から二隊のエルフ騎馬隊が出陣すると、その後を追うように、
シリーと娘達に大蛇丸軍が北門から、ジョシュー知事軍は南門から、
東門の戦場へ向かっている。
エルフ騎馬隊は、黒煙と戦場を避けるように大きく後ろを迂回して、
ヒット王国本陣を両方から目指しているようである。
ヒット王国兵は黒煙と噴煙の中で、どちらに進めばよいのか分からず、
その場で右往左往している。
最初に敵と遭遇したのは、ジョシュー知事軍である。
爆裂音が止み、ジョシュー知事軍の後ろから強い風が吹き、
戦場の煙と埃が吹き払われると、多数の死傷者が横たわった光景が目に入った。
戦場の煙と埃の中から現れたジョシュー知事軍を目にしたヒット王国軍は、
本陣とジョシュー知事軍を避ける様に、戦場場から武器を投げ出し駈け逃げ出した。
ジョシュー知事は、戦場に残った唖然と整列したまま、身動きできないでいる百人足らずのグループ兵目指して突撃を命じた。
ヒット王国百人隊長は、戦場に累々と横たわっている自軍の数の多さに、
状況を把握出来ずに立ちすくんでいると、味方の兵が向かってくる後ろから、
千にも満たない敵軍が、逃げ惑う味方兵を追ってくる。
ヒット王国百人隊長は、煙と埃に視界を妨げられていたが、
後方に完全武装の万余の味方兵を確認すると、迫ってくるジョシュー知事軍に、逃げることなく配下の兵に迎撃戦を命じた。
ジョシュー知事軍の勢いは強く、配下の兵だけでは多勢に無勢であるが、
百人隊長は後方の味方兵からの援護を信じて待ったが、ほんの数百メートル後ろの万余の味方兵は、救援に来てくれなかった。
ヒット王国軍後衛の一部を指揮していたササリ侯爵は、
目の前の強烈な爆裂と、炎の惨劇戦場を恐怖顔で見ていた。
何が起きているのかを理解できない放心状態のようで、
ササリ侯爵の前方を横切る、武器を放り投げて逃げてくる味方兵を、咎めることなく唖然として見送った。
一方的な殺戮を受けながらも、敵は遥か遠く過ぎる上に壁に守られていて、刃向かう事さえも出来ないし、ましてや抗うことも許されない炎相手の戦場で、ササリ侯爵は、前進も後退もできないでいた。
ササリ侯爵は、配下の兵を動かすことは、
自殺行為だと身体中が覆っている所へ強い風が吹き、戦場の煙と埃が吹き払われた先に、
前国王の旗印を掲げた軍が現れたことで、さらに身体が硬直してしまった。
現国王の旗印に忠誠を誓っていたササリ侯爵は、前国王の旗印に身体が硬直化してしまった事で、
自分の敵は反乱軍と偽善亜人協力国であるが、王族の内紛にかかわる理由はないし、
ましてや前国王の旗印に挑めるわけがないと、恐怖から逃れる理由を付けで自分を納得させた。
ササリ侯爵軍の前で、逃げまどう敗残兵と交差するように、
エミューに乗った伝説の鱗甲冑らしき姿で、前国王の旗印を持った女騎士団の中に、
本陣方向に向かうエミューに乗ったシリー.ヒット元王女を確認した。
エルフ騎馬隊は、ヒット王本陣の後ろに回り込み、戦場に相応しくない、
羽飾りをつけた甲冑姿の近衛兵に守られた、ヒット王ドーミイとタリア伯爵を確認すると、
カナリア街のトーマス元帥に砲撃の救援を仰いだ。
砲弾は的確にドーミイとタリア伯爵を避けるように着弾した。
爆裂は三百の近衛兵を半数以下にしてしまった。
エルフ騎馬隊は、解き放されて逃げ去るエミューと共に四散する近衛兵は放ておき、
まだ整然と並んでいるヒット王軍後衛の方へ、徒歩で逃げ向かうドーミイ王とタリア伯爵を確認すると、二人を護衛している周りの近衛兵を、エルフ騎馬隊は片っ端から銃で狙い撃ちした。
エミューに乗ったシリーと娘達に大蛇丸軍は歩兵隊を引き連れて、
ヒット王軍後衛前を通り過ぎると、エルフ騎馬隊に追われて、
徒歩で逃げてくるドーミイ王とタリア伯爵が前方から現れたのを確認した。
そして、ジョシュー知事軍も戦場方向から、逃げるドーミイ王とタリア伯爵を追ってきた。
羽飾りをつけた甲冑姿の近衛兵は逃げ足が遅い様子で、逃げ遅れた全ての近衛兵は、
エルフ騎馬隊の銃剣で次々と殺傷されていく。
ドーミイ王とタリア伯爵は、ジョシュー知事軍と、シリーや娘達に、エルフ騎馬とに囲まれてしまい立ち尽くしかない。
シリーと娘達はエミューから飛び降りると、ドーミイ王とタリア伯爵の前に向かった。
シリーと二人の女戦士は、ドーミイ王と対峙した。
ジャネットと二人の女戦士は、タリア伯爵と向き合った。
これは事前に打ち合わせ済みのようである。
早々と決着をつけたのがジャネットで、トーマス元帥流の肉を切らせて骨を切る戦法で挑み、触れるものみな断ち切るように、タリア伯爵の振り下ろした刃もろ共、腕までも切り落とすと、両脇の女戦士はタリア伯爵の甲冑を貫き通す様に、
発動した尾刃剣で、鎧越しに深々と脇下に刃を突き込み刺しこんだ。
そして、ジャネットは返す刃でタリア伯爵の首を落とした。
シリーの方は相手が仇であっても、人を切る事、ましてや相手は叔父上であり、
ためらいがあるようで切り込めずにいた。
シリー達の中に割り込んできたのがジョシュー知事で、ドーミイ王に剣ごと体当たりをしたが、ドーミイ王も中々の様で、ジョシュー知事の剣を払いのけたが、
体当たりは避けきれなかったようである。
ジョシュー知事とドーミイ王は転がりながら、剣を持った相手の腕を互いに握り締めて、
互いの攻撃を防ぎながらも、互いに上下に入れ替わりを繰り返していたが、
互いに組み合ったまま、猛烈に転がりながら優位に立とうとせめぎあっている。
ドーミイ王がジョシュー知事に馬乗りになるや、シリーに付き従っていた二人の女戦士は、両脇からドーミイ王の横腹に、発動した尾刃剣を深々と刺すと、
「王女様早く首を!」
と、叫んだ。
その声を聴いたシリーの腕と身体は反射的に、ドーミイ王に向かいざま首をはねた。
「快感がない。」
と、シリーは呟き、返り血を浴びたままその場へへたり込んだ。
強い雨の中、ササリ侯爵の用意したゲルの中で、シリーは虚脱感に囚われている。
ジャネットはそんなシリーを横目に、まだ健在なヒット王軍に命令して、テントの設置をさせ、まだ息のある傷兵の収拾を命じた。
カナリア街とヒット王軍からかき集めたゲルやテントが、城壁外に立ち並び、粗末ながらも野戦病院と化した。
ヒット王国は短期決戦と決めたのか、長い梯子を担いだ三万のほとんどの軍が、カナリア街外壁東門目指して突撃しだしたが、一点集中的な攻め方は、
火力の強い相手では、多数の死傷者を出してしまうし、防御も厚く守られてしまう最悪の攻め方である。
七人の戦士に持たせた大砲は、三十門全て東門側城壁上に並べられている。
トーマスは東門城壁上で、指揮を執っているのが確認された。
副教育参謀三名は七人の戦士を使い、各砲門の点検をさせているようで、
七人の戦士はせわしなく走り回っている。
ヒット王国軍の先頭が、壁から五十メートル辺りに迫った頃、
密集した集団の中央あたりで、火炎爆裂が起きたのは、樽に積み込まれていたガソリンに火が着火したのだろう。
火炎爆裂は戦場辺りを黒い煙で周りを闇にしてしまった。
ヒット王国軍は火だるまとなり、炎に包まれて駆け廻っている者もいる。
戦場中央辺りは、残酷な地獄火炎修羅場となっているのが確認できた。
ソリンに火が着火した近くの兵は、かなり死傷したであろう。
それでも砲門の怒り声は慈悲の欠片もなく、惨劇が起き続けていても止む事も無く続いている。
梯子を担いだ先頭集団は、後ろの惨事から逃れるように城壁に向かって行くが、梯子を壁に立てかける前に矢と火炎瓶に襲われている。
先頭集団は後衛からの矢の援護など無く、壁に取り付くことも出来ないまま、ほとんどが死傷している。
ヒット王国本陣首脳の視界からは、黒い煙が戦場を覆ってしまっている為に、兵の残酷な惨事を把握できない事で、戦況を見極めきれないでいる。
ヒット王国本陣首脳は、物見を頻繁に出すのだが、誰一人と戻ってこない様子である。
爆裂を合図に、南門と北門から二隊のエルフ騎馬隊が出陣すると、その後を追うように、
シリーと娘達に大蛇丸軍が北門から、ジョシュー知事軍は南門から、
東門の戦場へ向かっている。
エルフ騎馬隊は、黒煙と戦場を避けるように大きく後ろを迂回して、
ヒット王国本陣を両方から目指しているようである。
ヒット王国兵は黒煙と噴煙の中で、どちらに進めばよいのか分からず、
その場で右往左往している。
最初に敵と遭遇したのは、ジョシュー知事軍である。
爆裂音が止み、ジョシュー知事軍の後ろから強い風が吹き、
戦場の煙と埃が吹き払われると、多数の死傷者が横たわった光景が目に入った。
戦場の煙と埃の中から現れたジョシュー知事軍を目にしたヒット王国軍は、
本陣とジョシュー知事軍を避ける様に、戦場場から武器を投げ出し駈け逃げ出した。
ジョシュー知事は、戦場に残った唖然と整列したまま、身動きできないでいる百人足らずのグループ兵目指して突撃を命じた。
ヒット王国百人隊長は、戦場に累々と横たわっている自軍の数の多さに、
状況を把握出来ずに立ちすくんでいると、味方の兵が向かってくる後ろから、
千にも満たない敵軍が、逃げ惑う味方兵を追ってくる。
ヒット王国百人隊長は、煙と埃に視界を妨げられていたが、
後方に完全武装の万余の味方兵を確認すると、迫ってくるジョシュー知事軍に、逃げることなく配下の兵に迎撃戦を命じた。
ジョシュー知事軍の勢いは強く、配下の兵だけでは多勢に無勢であるが、
百人隊長は後方の味方兵からの援護を信じて待ったが、ほんの数百メートル後ろの万余の味方兵は、救援に来てくれなかった。
ヒット王国軍後衛の一部を指揮していたササリ侯爵は、
目の前の強烈な爆裂と、炎の惨劇戦場を恐怖顔で見ていた。
何が起きているのかを理解できない放心状態のようで、
ササリ侯爵の前方を横切る、武器を放り投げて逃げてくる味方兵を、咎めることなく唖然として見送った。
一方的な殺戮を受けながらも、敵は遥か遠く過ぎる上に壁に守られていて、刃向かう事さえも出来ないし、ましてや抗うことも許されない炎相手の戦場で、ササリ侯爵は、前進も後退もできないでいた。
ササリ侯爵は、配下の兵を動かすことは、
自殺行為だと身体中が覆っている所へ強い風が吹き、戦場の煙と埃が吹き払われた先に、
前国王の旗印を掲げた軍が現れたことで、さらに身体が硬直してしまった。
現国王の旗印に忠誠を誓っていたササリ侯爵は、前国王の旗印に身体が硬直化してしまった事で、
自分の敵は反乱軍と偽善亜人協力国であるが、王族の内紛にかかわる理由はないし、
ましてや前国王の旗印に挑めるわけがないと、恐怖から逃れる理由を付けで自分を納得させた。
ササリ侯爵軍の前で、逃げまどう敗残兵と交差するように、
エミューに乗った伝説の鱗甲冑らしき姿で、前国王の旗印を持った女騎士団の中に、
本陣方向に向かうエミューに乗ったシリー.ヒット元王女を確認した。
エルフ騎馬隊は、ヒット王本陣の後ろに回り込み、戦場に相応しくない、
羽飾りをつけた甲冑姿の近衛兵に守られた、ヒット王ドーミイとタリア伯爵を確認すると、
カナリア街のトーマス元帥に砲撃の救援を仰いだ。
砲弾は的確にドーミイとタリア伯爵を避けるように着弾した。
爆裂は三百の近衛兵を半数以下にしてしまった。
エルフ騎馬隊は、解き放されて逃げ去るエミューと共に四散する近衛兵は放ておき、
まだ整然と並んでいるヒット王軍後衛の方へ、徒歩で逃げ向かうドーミイ王とタリア伯爵を確認すると、二人を護衛している周りの近衛兵を、エルフ騎馬隊は片っ端から銃で狙い撃ちした。
エミューに乗ったシリーと娘達に大蛇丸軍は歩兵隊を引き連れて、
ヒット王軍後衛前を通り過ぎると、エルフ騎馬隊に追われて、
徒歩で逃げてくるドーミイ王とタリア伯爵が前方から現れたのを確認した。
そして、ジョシュー知事軍も戦場方向から、逃げるドーミイ王とタリア伯爵を追ってきた。
羽飾りをつけた甲冑姿の近衛兵は逃げ足が遅い様子で、逃げ遅れた全ての近衛兵は、
エルフ騎馬隊の銃剣で次々と殺傷されていく。
ドーミイ王とタリア伯爵は、ジョシュー知事軍と、シリーや娘達に、エルフ騎馬とに囲まれてしまい立ち尽くしかない。
シリーと娘達はエミューから飛び降りると、ドーミイ王とタリア伯爵の前に向かった。
シリーと二人の女戦士は、ドーミイ王と対峙した。
ジャネットと二人の女戦士は、タリア伯爵と向き合った。
これは事前に打ち合わせ済みのようである。
早々と決着をつけたのがジャネットで、トーマス元帥流の肉を切らせて骨を切る戦法で挑み、触れるものみな断ち切るように、タリア伯爵の振り下ろした刃もろ共、腕までも切り落とすと、両脇の女戦士はタリア伯爵の甲冑を貫き通す様に、
発動した尾刃剣で、鎧越しに深々と脇下に刃を突き込み刺しこんだ。
そして、ジャネットは返す刃でタリア伯爵の首を落とした。
シリーの方は相手が仇であっても、人を切る事、ましてや相手は叔父上であり、
ためらいがあるようで切り込めずにいた。
シリー達の中に割り込んできたのがジョシュー知事で、ドーミイ王に剣ごと体当たりをしたが、ドーミイ王も中々の様で、ジョシュー知事の剣を払いのけたが、
体当たりは避けきれなかったようである。
ジョシュー知事とドーミイ王は転がりながら、剣を持った相手の腕を互いに握り締めて、
互いの攻撃を防ぎながらも、互いに上下に入れ替わりを繰り返していたが、
互いに組み合ったまま、猛烈に転がりながら優位に立とうとせめぎあっている。
ドーミイ王がジョシュー知事に馬乗りになるや、シリーに付き従っていた二人の女戦士は、両脇からドーミイ王の横腹に、発動した尾刃剣を深々と刺すと、
「王女様早く首を!」
と、叫んだ。
その声を聴いたシリーの腕と身体は反射的に、ドーミイ王に向かいざま首をはねた。
「快感がない。」
と、シリーは呟き、返り血を浴びたままその場へへたり込んだ。
強い雨の中、ササリ侯爵の用意したゲルの中で、シリーは虚脱感に囚われている。
ジャネットはそんなシリーを横目に、まだ健在なヒット王軍に命令して、テントの設置をさせ、まだ息のある傷兵の収拾を命じた。
カナリア街とヒット王軍からかき集めたゲルやテントが、城壁外に立ち並び、粗末ながらも野戦病院と化した。
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