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96 謎の母娘
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ゲルググ邸の門から出ると、道沿いには人々が並んでいている原因は、
亜人協力国最高指導者を見たいがための目的であったのか、
鹿島が通り過ぎる後から拍手が起きていった。
銀行前では、
受付嬢を先頭に片膝をついて、鹿島に手を振り見送ってくれた。
手を振ることで、亜人協力国の民となった喜びと、
精一杯の平等を表現しているつもりだろう。
鹿島は城塞門から出てエミュ-を駆けださせながら、
「また来てください」
との声援に後ろを振り返ると、
城壁上から多くの手を振る人々が確認できたのか、
皆からの感謝だと受け取り、鹿島も手を振り返して声援に応えている。
感謝の意味は、食べ物や圧政などの心配がなく去ったことであろう。
時々一角羊の群れが、鹿島を道わきに追いやるが、
多くの品物を積んだ荷車を避けながら、
ひたすらに街道を駆けて、神降臨街を目指した。
鹿島は旅路途中で気が付いたのか、
高圧線が真っ直ぐに神降臨街の方へ伸びてはいたが、
高圧線の下は緑あふれる耕作や森の中で、遠くは山の峰髄である。
鹿島は近道ではと思ったようだが、
逆に時間はかかりそうだと思い直して、
タブレットパソコンに指示された街道を行くことにした。
州境の宿場町に着くと、今夜はここで宿を取る事にした様子である。
街中に入るとどの宿も満室との看板があり、
どうしたものかと宿の前の満室看板とにらめっこしていたら、
「何かお探しですか?」
と、どこかで見たか、
誰かに似ているような十歳前後の女の子が声をかけてきたが、
他人の空似だと思い直した。
「宿を探しているのだが、みんな満室のようだ。」
「なら。空いている宿屋に案内するよ。」
と言って、
鹿島の乗っているエミューの鼻先手綱を掴み先導しだした。
「お客さん。食事は?」
「お客さん?君は宿屋の人ですか?」
「はい。有難う御座います。案内します。
私はミルよろしくお願いいたします。」
あどけない子供の呼び込みに、鹿島は何と答えるべきかと思いながら、今夜野宿しないでも良さそうと思い直して、
「夕食と朝食にできれば弁当を、お願いしたい。」
「それだと、銀貨三枚、銅貨五枚だね。」
鹿島は安いと思えたが、
それなりの宿だろうと覚悟して、安い訳を問うための口は出さなかった。
「前金で銀貨二枚貰えませんか?」
「ごめんだけど。金貨しか持ち合わせがないのだ。」
娘は立ち止まり、
「騎士様にしては立派な鎧を着ているが、貴族様ですか?」
「嫌、貴族ではない。」
娘は納得してない顔で、エミューの手綱を再び引き肉屋の前で止まり、
「金貨を大銀貨と銀貨に替えるので、金貨を下さい。」
と手を差し伸べたので、鹿島は金貨を一貨渡した。
娘は駆け出して肉屋に飛び込み、二キロはあろう紐に結んだ肉を、
娘は抱きかかえるように持って現れた。
「肉をエミューの鞍に結んでいいですか?」
「いいですよー。」
娘は器用に後ろのエミューをひざまずかせて、鞍に肉を括り付けると、
「大銀貨九枚と、銀貨八枚を返します。
銀貨二枚は前金でいただきました。
残りの宿代は、テイクアウト後にお願いします。」
と、ポケットからお釣りを取り出して鹿島に差し出した。
次は雑貨食料品店に入りパンと油に胡椒を注文すると、
塩を箱からつまんで秤に乗せて二メモリ気持ち超えたところで、
「二グラム貰います。」
と言って、腰に結んである巾着袋に大事そうに入れている。
鹿島は二銅貨と書いてあるチョコレートと思える箱を見付けると、
二銀貨で十個購入した。
ミルちゃんはにこやかに笑っている女将さんに残りの銀貨を渡すと、エミューの手綱を引いている鹿島の横を歩きだした。
街外れの手入れされた花壇や、柑橘系を植えた一軒家に着いたが、
それなりの宿だろうと覚悟していたが、
宿屋の雰囲気でなくて、鹿島はあばら家との思いを打ち消すと、
大工手入れのなされてない、それなりの宿の前に着いたと考えた。
「お母様。お客様です。」
と言って、家の中に駆け込んだ。
「お客様?」
出てきたのは、美人と言えるほどの気品ある顔だが、
来ている服は清潔だが継ぎはぎだらけで、
意図的なセンスならば、色とりどりの化バイと思える服装である。
「どの宿屋も満室なので、困っている人をお連れしました。」
「ミルちゃん。強引な事はしてないですよね」
「いいえ私も助かります。野宿さえも覚悟していました。」
と、鹿島は微笑んだが、母親は不安顔で思案しだした。
「宿泊費は三銀貨と五銅貨で、前金で二銀貨いただいて、
肉もパンも油に胡椒と塩も、貰った宿代で買ってきたよ。
残り一銀貨と五銅貨は、泊り後に支払ってもらうと決めましたよ。」
と、ミルちゃんは満面の笑顔を母親に向けると、
母親は目を丸くして、ため息をついた後はにこやかな顔になった。
「ミルちゃん。奥の部屋を片して。」
と言われたミルちゃんは、
エミューから急ぎ肉を下ろすと家の中に駆け込んだ。
「むさくるしい屋敷ですが、お許し下さい。」
と言って鹿島を家の中に案内したが、
その態度は鹿島に対して少しおびえているように感じた。
部屋は薄暗く、まだ電線は引かれてなさそうである。
テーブルに着くと程なく白湯が出されて、
母親は鹿島と目を合わせることなく、
畑から野菜を台所に持っていき、料理を始めたようである。
ミルちゃんは部屋が整理できたと呼びに来たので、
鹿島は荷物をもって奥の部屋に向かい、タブレットパソコンを開いた。
タブレットパソコンには多くの報告メールが届いていて、
第一師団マルティーン司令官からのメールを開いた。
メールの内容は、
バーミーズ国では、カントリ国傭兵が突然行方知れずに消えたことで、
国運営者重臣の間では、全員がパニックに陥っている様子で、
更にカントリ国難民が治安を悪化させだしたことで、
カントリ国難民を、
カントリ国樹海に追いやるのに苦心しているようである。
バーミーズ国は亜人協力国に講和条約と治安要請をしてきたので、
ヘレニズ.サンビチョ知事と相談した後に、
更に、運営委員会室に相談したところ、
併合出来る様に要請されたが、すぐに取り消されたとの事であった。
再度の運営委員会室の要請は、
取り敢えず内容を確認して、
講和条約と治安の要請を受けるとの事である。
ヘレニズ.サンビチョ知事が全権をもって、
バーミーズ国特使を迎えて条約推進したのちに、
運営委員会室からの了解のもと、
講和条約締結と治安要請を了解したとの事である。
更に、トーマス元帥からの命令はバーミーズ国に向かい、
鉄の国との国境で鉄の国を牽制しろとの事であるが、
攻撃を受けて開戦となったならば、
直ちに鉄の国に攻め込めとの命をも受けたようである。
バーミーズ国の無血併合は、時間の問題だけであろう。
エルフ.ハービーハン司令官からは柳生の里砦の建設は終わり、
火の国と塩の国や鉄の国からの越境兵の対応には、
柳生一族の協力で蹴散らすのは可能であるとのことで、
柳生一族に三八歩兵銃を渡して訓練しながらも、
いつでも開戦に備えてとの事である。
ハービーハン司令官への柳生殿からの連絡事項は、
巴姫殿の婚約発表に伴い、三国同盟国との友好関係を維持して、
亜人協力国の援助を受けられる了解がなされていたのにも拘らず、
亜人協力国への肩入れで三国同盟が崩れたことに対する、
新井白石の責任追及が激しくなり、
日出国皇王は、巴姫殿への反感を持つ者たちを炙り出す為か、
責任を取らせる為と称して新井白石を老中から退かして、
国元に返したとのことである。
日出国皇王の表明は、娘可愛さでの反感者釣りで、
捨て身の内乱誘い掛けが秘められていそうな行動である。
鹿島はトーマス元帥と連絡を取り、日出国の推理内情を連絡すると、
「日出国皇王の目論見行動を援護優先とします。
それまではほかの軍事行動は中止します。」
との連絡で通信を切った。
その後で続々とトーマス元帥からメールが入り、
日出国の味方防御が強化されていく様子が知らされた。
過剰とも思える防衛準備先は、白石の居る城である。
ミルちゃんから夕飯ができたとの知らせで、
台所横のテーブルには、鹿島一人分の皿が置いてあった。
「お客は俺一人のようなので、一緒にどうですか?」
と尋ねると、ミルちゃんは、
「おじさんは大事なおきゃむ様ですから。
遠慮しないで食べてぇきゅさい。
お母様は裁縫が得意だけど、調理もおいしちぃよ。」
ミルちゃんは生唾を飲み込みながら、
口の中いっぱいに唾を溜めているのか、変な発音が聞き取れた。
「では、ミルちゃんだけでも一緒に食べてくれないかな。
みんなで食べたほうがおいしいでしょう。」
と、声掛けすると、
「じゃ~。お言葉に甘えて、ミルちゃんも行儀よく一緒に食べなさい。」
と言って、
パンと料理鍋を持って母親は台所から出て来た。
母親の後ろからミルちゃんは、
皿とホークを持ってきて、鹿島の向かいに座った。
母親は鹿島の皿に、肉を重点的に選び大盛りに料理を盛り、
二切れだけの肉に残り野菜だけの料理をミルちゃんの皿に移した。
「こんなにたくさんの量は、無理があります。半分ほどにしてください。」
「恥ずかしいのですが、お皿は二枚だけですので、
頑張って片付けてください。」
と、にこやかな顔で、母親は答えた。
鹿島はすでに手を付けて食べだしていたミルちゃんの皿を取り上げて、鹿島の大盛りに盛られた皿を、ミルちゃんの前に差し替えた。
「え~。こんなにいっぱい!嬉しいです。」
と、ミルちゃんは素直に喜んでくれた。
「ミルちゃんお肉をお客様にも分けてあげなさい。」
「いいえ私は、いつも肉は十分にとっていますので、
野菜の方がいいです。」
と、鹿島は本心から述べた。
食事最中に肉入り野菜スープを出されたのでそれを飲み干すと、
まだ食事中のミルちゃんを残して部屋に引き上げた。
鹿島は部屋に帰り、再度トーマス元帥と連絡を取り、
全部隊の配置図と侵攻作戦計画を訊ねた。
バーミーズ国との国境近く砦に補充兵二万人の兵を残して、
治安要請された三万の銃撃歩兵隊と機動車輌部隊から成る第一師団精鋭を、鉄の国国境手前でバーミーズ国側に待機させたとの事である。
ムー州と鉄の国の国境には、第三師団の大蛇丸司令官指揮する三万は、開戦を見据えてすでに配置についていた。
火の国への進行は、既に三方からの準備を終えており、
状況によっては、一隊はハービーハン独立師団と合流して、
ハービーハン司令官の指揮する独立師団に入る予定らしい。
ヒルルマ司令官指揮する第二師団本隊は、火の国首都に向かい、
別動隊は反乱部隊と思われる武装集団を吸収する予定のようである。
皇王の弟日出国反乱軍タダナガ公は、
新井白石領の関が原に集結し出した。
白石城を攻め落して、その勢いで日出国皇王軍を迎え撃つ予定であろう。
関が原には、
続々と新井白石の農地改革や厳しい法治政策に反感を持っている、
各藩の軍が集結中である様子だ。
反乱軍タダナガ公は先ず、
新井白石の政策に反感を持っている各藩の領主を集めて戦を起こして、なし崩し的に反日出国皇王軍に持ち込むことが予定のようである。
日出国での戦いは、既に謀略戦に突入しているようである。
「おじさん。水浴びなさいますか?」
とミルちゃんがドアの前で声がけした。
鹿島は直ぐにタブレットパソコンを閉じて、ベッドに投げ置いて、
「水浴び用のタライがあるのですか?」
「はい、有ります。じゃ~。川から水を汲んできます。」
「ちょっと待って。お湯は魔法で出せます。」
と鹿島は言って、
ドアを開けるとすでに外は暗くなりかけていた。
鹿島はミルちゃんをドアの外に待たせて、
着替えとタオルに浴用セットに全方位ライトを持って部屋を出た。
ミルちゃんはその明るさを怖がるように、
鹿島の手を力いっぱい握りしめて、体を密着するように傍にいた。
全方位ライトの明るさに、
室内用小型松明を用意している母親もびっくりしたようで、
目を白黒させだした。
「魔法使い様ですか?」
「はい、そうです。」
魔法使いとの肯定返事を予想していないかったと言わんばかりに、
母親は恐怖顔で後退りしだした。
鹿島はタライを借りて、
少し熱い位のお湯をタライに噴射したがかなりの熱さで、
慌てて水の噴射を加えた。
二人は不思議そうに家の中から鹿島とタライを眺めている。
鹿島は全方位ライトを片手に家に入り、
松明をかけてある壁にセットすると、
真っ暗になった外で再びタライのそばに行き、
脇にある手持ちタライにお湯を移すと、
真っ暗な状況だから、許されるだろうと全てを脱いだ。
頭をシャンプーしたのちに、石鹸の付いたタオルで身体を拭き、
泡を流して湯船となったタライに入った。
鹿島は着替えをすまして家に入ると、
家の土間にある椅子に二人は腰掛けている。
鹿島は、ミルちゃんにシャンプーと石鹸を渡すと、
二人を連れて外に連れ出してからタライいっぱいにお湯を噴射した後に、手持ちタライも満杯にお湯を注いだ。
今度はお湯の感覚が残っていたので、
その温度のイメージで噴射したかいがあり、適温のお湯を用意できた。
先にミルちゃんに入ってもらうことにして、
終わったならば、お湯の追加をするので、
部屋にいる鹿島に声掛けを頼んで部屋に戻った。
窓をノックするので窓を開けると、
すでに着替えの終わったミルちゃんがいて、お湯の追加を頼まれた。
お湯の追加を終えて、
ミルちゃんと全方位ライトを置いてある土間に向かい、
全方位ライトを手に持って台所脇のテーブルに腰掛けてから、
昼間買っておいたチョコレートをミルちゃんにあげた、
そして、何で二人だけで住んでいるのかを尋ねた。
ミルちゃんはサンビチョ王国が亜人協力国になったために、
此処へ逃げてきたと言い出した。
これは捨て置けない話を鹿島は聞いてしまった。
「二人だけでの生活は、どうしているの?」
「お母様が裁縫内職で、時々仕事を貰って、お金を稼いでいるの。」
「ミルちゃん。学校は?」
「家から学校は遠いので、お母様に教わっています。」
母親は、そんなやり取りを聞いていたのか、
「すみません。お客様、私共には詮索されたくない事情がございます。お許し下さい。」
と、頭を下げた。
これ以上は強く拒否されそうなので、
残りのチョコレートを三人で分けて、
白湯を飲みながら食べた。
詮索されたくない事情ならば、
詮索しない方がいいだろうと鹿島は思うが、
捨て置けない話は気になるが、食べ終わると直ぐに部屋に帰った。
掌ライトをかざして部屋に帰り、亜人協力国に併合されて、
不幸になっている人もいる事にショックがあり、
なかなか寝付かれないでいる。
さらに寝付けを悪くする報告がコーA.Iから入った。
宿の周りで五人の男らが、鹿島達を監視しているとの報告である。
鹿島は、男達はどの時点から、監視しだしたのかの報告を求めると、現在監視衛星はトーマス元帥の下でフル活動中らしく、
鹿島の周り監視は頭上と前方のみでしか稼働できない状況で、
後ろの監視がおろそかになっているとの事である。
男たちには動きがなく、
あたかも宿の外だけを警戒しているようだとの事である。
鹿島は、ゲルググ知事からの隠れ護衛ではとも思えた。
朝、鹿島は寝つきが悪かった為か寝坊してしまったようで、
「おじさん。朝ごはんができています。」
と、ミルちゃんに起こされた。
ミルちゃんに手を引かれて、川から運んできたのか、
水がいっぱいの手持ちタライに案内されて、夕べ干してあったタオルと、洗い終わっている脱いでいた服を渡された。
テーブルに行くと、生野菜を大盛りにしたポールが置かれていて、
皿の上にはパンと薄くにスライスした肉が二切れと、
野菜スープが用意されていた。
皿の横には、
大きな肉がはみ出ている葉っぱに包んだ弁当が置かれている。
矢張り鹿島だけの朝食のようであるので、ミルちゃんを呼ぶと、
「あたしたちは、もうパンを食べたから、
今日は一緒に食事はできないよ。」
と言って、鹿島の脇にしゃがみこんだ。
生野菜には、
柑橘系の香りと共に油の味覚もあるが、少し塩が少ないと思った。
鹿島は思い切って、ミルちゃんの将来のことを母親に尋ねた。
「ミルちゃんの将来のためにも友達は必要でしょう。
それに学校で多くのことを学べると、選べる人生の幅が広がります。
ミルちゃんの為に真剣に検討して頂ければ、私は何なりと協力します。」
「私たちを引き裂かないと、ガイア様に誓えますか?」
「貴女に正義があれば、必ず守るとガイア様に誓います。」
「ミルは私が生んだ、私の子供です。これは正義でしょう。」
「話せる範囲で、お話しください。
私には特別なガイア様の加護があります。」
「私はたった一度だけ強姦されて孕みましたが、
強姦した男の家族と配下に、
生まれたばかりのミルを取り上げられました。
戦い後の混乱で、ミルを保護して連れ出してここに逃げてきました。
ミルは私の子です。ミルを連れ去った家族らは敵から辱められて自害し、男は敵に殺されて死んでしまいましたが、
だけど男の一族はまだ指導者として生き延びています。」
神降臨街教会では弱者救済として、
独立資本金を中央銀行からの融資保証人となり、
生活基盤を整えているので、
鹿島はミルちゃん親子の為にその活用を進めようと、
「あなたの事情は理解しました。貴女は裁縫が得意なようですが、
神降臨街では手に職を持った方は、かなりの良い待遇だとのことですが、ミルちゃんと一緒に行きませんか?
そこでテテサ教皇様にすがってみましょう。
良い結果をもたらしてくれると思います。」
母親は滝のように涙を流して、鹿島をにらんでいる。
「ミルはおじさんと一緒に行きたい。友達もいっぱいほしい。」
と、ミルちゃんは立ち上がり、泣いている母親にすがった。
「天国のような街との神降臨街のうわさは聞いています。
テテサ教皇様とお知り合いですか?」
「はい、よく相談に載って貰っています。」
「今の言葉をガイア様に誓って貰えますか?」
「ガイア様に誓います。」
「やったー!おじさんと一緒に旅ができるし、友達もいっぱい作れる。」
ミルちゃんの強い希望で母親も折れてしまい、
鹿島はミルちゃんと母親を伴い、
少ない手荷物と夜具をエミューに乗せて宿場町に向かった。
宿場町で幌荷車とエミューを買い、
食事用旅用品を買ってから服屋に行き、
安い宿代のお礼に服をそれぞれプレゼントした。
後はミルちゃんたちの住んでいた住宅の家賃を払いに、
遠い親戚になる大家である雑貨食料品店で、母親は今までの家賃を払い、鹿島はたっぷりの塩と後は食料品を積み込むだけである。
ミルちゃんに手を引かれて雑貨食料品店に入り、
いろんな香辛料とタップリの塩も買い、
定番のチョコレートを箱ごと買った。
「いい男だね。ミルちゃんもなついているし、
それに懐も暖かそうで、頑張りな。」
と、雑貨食料品店の女将は、
力いっぱいこぶしを握り締めて母親に微笑むと、
母親は真っ赤な顔で首と手を横に振った。
鹿島の又、下手なエミュー操作で神降臨街に向かって出発した。
ミルちゃんは鹿島の横に座り、鹿島の手を握りしめながら大きな声で、
「だったらいいな♬~だったらいいな♪~♪」
と、鹿島の手を振り、鹿島の顔を見ながら歌いだした。
少し休んでは同じ歌詞を繰り返して、鹿島の顔に振り向き歌い続ける。
その歌は楽しいメロディーで、鹿島の心をウキウキとさせた。
コーA.Iからの補佐で、
昼飯用のヒトコブ兎をレーザー銃で仕留めて昼飯の準備に入った。
鹿島の水魔法で水をジャバラバケツに溜めて、
食事の支度を母親に任せながら、ミルちゃんと草笛の練習をした。
肉いっぱいの弁当とヒトコブ兎の料理に、
塩味の利いたスープを頂いて次の宿場に向かった。
次の宿場では難無く二部屋を確保出来たが、
大銀貨二貨幣を宿代と食事代として取られたが、
夕飯は神降臨街名物の肉シチューの触れ込みで出された食事に、
ミルちゃんはお代わりした。
夜、トーマス元帥から連絡が入り、反白石派は全体の三分の一で、
三分の一が皇王のもとに集まり、
残りは日和見(ひよりみ)を決め込んだようである。
日和見(ひよりみ)を決め込んだ領主たちは、
関ヶ原の山並みの裏で待機したまま、山を越えないようである。
トーマス元帥は白石城の攻防戦は、
皇王が到着するまで決着をつけずに、
反白石派をくぎ付けにする為だけにただ防衛のみに徹するようである。
皇王が到着したならば、
一気にハービーハン主力師団四千騎馬隊と、
機動車輌と共に蹴散らすとの事である。
火の国の襲来には、柳生一族が森に誘い込んで、
後ろからヒルルマ第二師団の一部が攻めたてて崖の下に誘い込み、
柳生一族に渡しておいた三八歩兵銃にて打ち取る予定で、
さらにその後で、柳生一族は皇王軍に合流したがっているらしい。
塩の国と鉄の国に対しては、砦の大砲と、
イアラ率いる攻撃型ヘリコプター五機の女傑団空挺部隊が援護して、
エルフエミュー銃撃隊千人が対応するようである。
遅くに、五人の正体不明男たちも同じ宿に宿泊したようだが、
高級宿なのでゆっくりとくつろいでほしいと、
鹿島は、体を休める様にとの心の中でエールを送った。
亜人協力国最高指導者を見たいがための目的であったのか、
鹿島が通り過ぎる後から拍手が起きていった。
銀行前では、
受付嬢を先頭に片膝をついて、鹿島に手を振り見送ってくれた。
手を振ることで、亜人協力国の民となった喜びと、
精一杯の平等を表現しているつもりだろう。
鹿島は城塞門から出てエミュ-を駆けださせながら、
「また来てください」
との声援に後ろを振り返ると、
城壁上から多くの手を振る人々が確認できたのか、
皆からの感謝だと受け取り、鹿島も手を振り返して声援に応えている。
感謝の意味は、食べ物や圧政などの心配がなく去ったことであろう。
時々一角羊の群れが、鹿島を道わきに追いやるが、
多くの品物を積んだ荷車を避けながら、
ひたすらに街道を駆けて、神降臨街を目指した。
鹿島は旅路途中で気が付いたのか、
高圧線が真っ直ぐに神降臨街の方へ伸びてはいたが、
高圧線の下は緑あふれる耕作や森の中で、遠くは山の峰髄である。
鹿島は近道ではと思ったようだが、
逆に時間はかかりそうだと思い直して、
タブレットパソコンに指示された街道を行くことにした。
州境の宿場町に着くと、今夜はここで宿を取る事にした様子である。
街中に入るとどの宿も満室との看板があり、
どうしたものかと宿の前の満室看板とにらめっこしていたら、
「何かお探しですか?」
と、どこかで見たか、
誰かに似ているような十歳前後の女の子が声をかけてきたが、
他人の空似だと思い直した。
「宿を探しているのだが、みんな満室のようだ。」
「なら。空いている宿屋に案内するよ。」
と言って、
鹿島の乗っているエミューの鼻先手綱を掴み先導しだした。
「お客さん。食事は?」
「お客さん?君は宿屋の人ですか?」
「はい。有難う御座います。案内します。
私はミルよろしくお願いいたします。」
あどけない子供の呼び込みに、鹿島は何と答えるべきかと思いながら、今夜野宿しないでも良さそうと思い直して、
「夕食と朝食にできれば弁当を、お願いしたい。」
「それだと、銀貨三枚、銅貨五枚だね。」
鹿島は安いと思えたが、
それなりの宿だろうと覚悟して、安い訳を問うための口は出さなかった。
「前金で銀貨二枚貰えませんか?」
「ごめんだけど。金貨しか持ち合わせがないのだ。」
娘は立ち止まり、
「騎士様にしては立派な鎧を着ているが、貴族様ですか?」
「嫌、貴族ではない。」
娘は納得してない顔で、エミューの手綱を再び引き肉屋の前で止まり、
「金貨を大銀貨と銀貨に替えるので、金貨を下さい。」
と手を差し伸べたので、鹿島は金貨を一貨渡した。
娘は駆け出して肉屋に飛び込み、二キロはあろう紐に結んだ肉を、
娘は抱きかかえるように持って現れた。
「肉をエミューの鞍に結んでいいですか?」
「いいですよー。」
娘は器用に後ろのエミューをひざまずかせて、鞍に肉を括り付けると、
「大銀貨九枚と、銀貨八枚を返します。
銀貨二枚は前金でいただきました。
残りの宿代は、テイクアウト後にお願いします。」
と、ポケットからお釣りを取り出して鹿島に差し出した。
次は雑貨食料品店に入りパンと油に胡椒を注文すると、
塩を箱からつまんで秤に乗せて二メモリ気持ち超えたところで、
「二グラム貰います。」
と言って、腰に結んである巾着袋に大事そうに入れている。
鹿島は二銅貨と書いてあるチョコレートと思える箱を見付けると、
二銀貨で十個購入した。
ミルちゃんはにこやかに笑っている女将さんに残りの銀貨を渡すと、エミューの手綱を引いている鹿島の横を歩きだした。
街外れの手入れされた花壇や、柑橘系を植えた一軒家に着いたが、
それなりの宿だろうと覚悟していたが、
宿屋の雰囲気でなくて、鹿島はあばら家との思いを打ち消すと、
大工手入れのなされてない、それなりの宿の前に着いたと考えた。
「お母様。お客様です。」
と言って、家の中に駆け込んだ。
「お客様?」
出てきたのは、美人と言えるほどの気品ある顔だが、
来ている服は清潔だが継ぎはぎだらけで、
意図的なセンスならば、色とりどりの化バイと思える服装である。
「どの宿屋も満室なので、困っている人をお連れしました。」
「ミルちゃん。強引な事はしてないですよね」
「いいえ私も助かります。野宿さえも覚悟していました。」
と、鹿島は微笑んだが、母親は不安顔で思案しだした。
「宿泊費は三銀貨と五銅貨で、前金で二銀貨いただいて、
肉もパンも油に胡椒と塩も、貰った宿代で買ってきたよ。
残り一銀貨と五銅貨は、泊り後に支払ってもらうと決めましたよ。」
と、ミルちゃんは満面の笑顔を母親に向けると、
母親は目を丸くして、ため息をついた後はにこやかな顔になった。
「ミルちゃん。奥の部屋を片して。」
と言われたミルちゃんは、
エミューから急ぎ肉を下ろすと家の中に駆け込んだ。
「むさくるしい屋敷ですが、お許し下さい。」
と言って鹿島を家の中に案内したが、
その態度は鹿島に対して少しおびえているように感じた。
部屋は薄暗く、まだ電線は引かれてなさそうである。
テーブルに着くと程なく白湯が出されて、
母親は鹿島と目を合わせることなく、
畑から野菜を台所に持っていき、料理を始めたようである。
ミルちゃんは部屋が整理できたと呼びに来たので、
鹿島は荷物をもって奥の部屋に向かい、タブレットパソコンを開いた。
タブレットパソコンには多くの報告メールが届いていて、
第一師団マルティーン司令官からのメールを開いた。
メールの内容は、
バーミーズ国では、カントリ国傭兵が突然行方知れずに消えたことで、
国運営者重臣の間では、全員がパニックに陥っている様子で、
更にカントリ国難民が治安を悪化させだしたことで、
カントリ国難民を、
カントリ国樹海に追いやるのに苦心しているようである。
バーミーズ国は亜人協力国に講和条約と治安要請をしてきたので、
ヘレニズ.サンビチョ知事と相談した後に、
更に、運営委員会室に相談したところ、
併合出来る様に要請されたが、すぐに取り消されたとの事であった。
再度の運営委員会室の要請は、
取り敢えず内容を確認して、
講和条約と治安の要請を受けるとの事である。
ヘレニズ.サンビチョ知事が全権をもって、
バーミーズ国特使を迎えて条約推進したのちに、
運営委員会室からの了解のもと、
講和条約締結と治安要請を了解したとの事である。
更に、トーマス元帥からの命令はバーミーズ国に向かい、
鉄の国との国境で鉄の国を牽制しろとの事であるが、
攻撃を受けて開戦となったならば、
直ちに鉄の国に攻め込めとの命をも受けたようである。
バーミーズ国の無血併合は、時間の問題だけであろう。
エルフ.ハービーハン司令官からは柳生の里砦の建設は終わり、
火の国と塩の国や鉄の国からの越境兵の対応には、
柳生一族の協力で蹴散らすのは可能であるとのことで、
柳生一族に三八歩兵銃を渡して訓練しながらも、
いつでも開戦に備えてとの事である。
ハービーハン司令官への柳生殿からの連絡事項は、
巴姫殿の婚約発表に伴い、三国同盟国との友好関係を維持して、
亜人協力国の援助を受けられる了解がなされていたのにも拘らず、
亜人協力国への肩入れで三国同盟が崩れたことに対する、
新井白石の責任追及が激しくなり、
日出国皇王は、巴姫殿への反感を持つ者たちを炙り出す為か、
責任を取らせる為と称して新井白石を老中から退かして、
国元に返したとのことである。
日出国皇王の表明は、娘可愛さでの反感者釣りで、
捨て身の内乱誘い掛けが秘められていそうな行動である。
鹿島はトーマス元帥と連絡を取り、日出国の推理内情を連絡すると、
「日出国皇王の目論見行動を援護優先とします。
それまではほかの軍事行動は中止します。」
との連絡で通信を切った。
その後で続々とトーマス元帥からメールが入り、
日出国の味方防御が強化されていく様子が知らされた。
過剰とも思える防衛準備先は、白石の居る城である。
ミルちゃんから夕飯ができたとの知らせで、
台所横のテーブルには、鹿島一人分の皿が置いてあった。
「お客は俺一人のようなので、一緒にどうですか?」
と尋ねると、ミルちゃんは、
「おじさんは大事なおきゃむ様ですから。
遠慮しないで食べてぇきゅさい。
お母様は裁縫が得意だけど、調理もおいしちぃよ。」
ミルちゃんは生唾を飲み込みながら、
口の中いっぱいに唾を溜めているのか、変な発音が聞き取れた。
「では、ミルちゃんだけでも一緒に食べてくれないかな。
みんなで食べたほうがおいしいでしょう。」
と、声掛けすると、
「じゃ~。お言葉に甘えて、ミルちゃんも行儀よく一緒に食べなさい。」
と言って、
パンと料理鍋を持って母親は台所から出て来た。
母親の後ろからミルちゃんは、
皿とホークを持ってきて、鹿島の向かいに座った。
母親は鹿島の皿に、肉を重点的に選び大盛りに料理を盛り、
二切れだけの肉に残り野菜だけの料理をミルちゃんの皿に移した。
「こんなにたくさんの量は、無理があります。半分ほどにしてください。」
「恥ずかしいのですが、お皿は二枚だけですので、
頑張って片付けてください。」
と、にこやかな顔で、母親は答えた。
鹿島はすでに手を付けて食べだしていたミルちゃんの皿を取り上げて、鹿島の大盛りに盛られた皿を、ミルちゃんの前に差し替えた。
「え~。こんなにいっぱい!嬉しいです。」
と、ミルちゃんは素直に喜んでくれた。
「ミルちゃんお肉をお客様にも分けてあげなさい。」
「いいえ私は、いつも肉は十分にとっていますので、
野菜の方がいいです。」
と、鹿島は本心から述べた。
食事最中に肉入り野菜スープを出されたのでそれを飲み干すと、
まだ食事中のミルちゃんを残して部屋に引き上げた。
鹿島は部屋に帰り、再度トーマス元帥と連絡を取り、
全部隊の配置図と侵攻作戦計画を訊ねた。
バーミーズ国との国境近く砦に補充兵二万人の兵を残して、
治安要請された三万の銃撃歩兵隊と機動車輌部隊から成る第一師団精鋭を、鉄の国国境手前でバーミーズ国側に待機させたとの事である。
ムー州と鉄の国の国境には、第三師団の大蛇丸司令官指揮する三万は、開戦を見据えてすでに配置についていた。
火の国への進行は、既に三方からの準備を終えており、
状況によっては、一隊はハービーハン独立師団と合流して、
ハービーハン司令官の指揮する独立師団に入る予定らしい。
ヒルルマ司令官指揮する第二師団本隊は、火の国首都に向かい、
別動隊は反乱部隊と思われる武装集団を吸収する予定のようである。
皇王の弟日出国反乱軍タダナガ公は、
新井白石領の関が原に集結し出した。
白石城を攻め落して、その勢いで日出国皇王軍を迎え撃つ予定であろう。
関が原には、
続々と新井白石の農地改革や厳しい法治政策に反感を持っている、
各藩の軍が集結中である様子だ。
反乱軍タダナガ公は先ず、
新井白石の政策に反感を持っている各藩の領主を集めて戦を起こして、なし崩し的に反日出国皇王軍に持ち込むことが予定のようである。
日出国での戦いは、既に謀略戦に突入しているようである。
「おじさん。水浴びなさいますか?」
とミルちゃんがドアの前で声がけした。
鹿島は直ぐにタブレットパソコンを閉じて、ベッドに投げ置いて、
「水浴び用のタライがあるのですか?」
「はい、有ります。じゃ~。川から水を汲んできます。」
「ちょっと待って。お湯は魔法で出せます。」
と鹿島は言って、
ドアを開けるとすでに外は暗くなりかけていた。
鹿島はミルちゃんをドアの外に待たせて、
着替えとタオルに浴用セットに全方位ライトを持って部屋を出た。
ミルちゃんはその明るさを怖がるように、
鹿島の手を力いっぱい握りしめて、体を密着するように傍にいた。
全方位ライトの明るさに、
室内用小型松明を用意している母親もびっくりしたようで、
目を白黒させだした。
「魔法使い様ですか?」
「はい、そうです。」
魔法使いとの肯定返事を予想していないかったと言わんばかりに、
母親は恐怖顔で後退りしだした。
鹿島はタライを借りて、
少し熱い位のお湯をタライに噴射したがかなりの熱さで、
慌てて水の噴射を加えた。
二人は不思議そうに家の中から鹿島とタライを眺めている。
鹿島は全方位ライトを片手に家に入り、
松明をかけてある壁にセットすると、
真っ暗になった外で再びタライのそばに行き、
脇にある手持ちタライにお湯を移すと、
真っ暗な状況だから、許されるだろうと全てを脱いだ。
頭をシャンプーしたのちに、石鹸の付いたタオルで身体を拭き、
泡を流して湯船となったタライに入った。
鹿島は着替えをすまして家に入ると、
家の土間にある椅子に二人は腰掛けている。
鹿島は、ミルちゃんにシャンプーと石鹸を渡すと、
二人を連れて外に連れ出してからタライいっぱいにお湯を噴射した後に、手持ちタライも満杯にお湯を注いだ。
今度はお湯の感覚が残っていたので、
その温度のイメージで噴射したかいがあり、適温のお湯を用意できた。
先にミルちゃんに入ってもらうことにして、
終わったならば、お湯の追加をするので、
部屋にいる鹿島に声掛けを頼んで部屋に戻った。
窓をノックするので窓を開けると、
すでに着替えの終わったミルちゃんがいて、お湯の追加を頼まれた。
お湯の追加を終えて、
ミルちゃんと全方位ライトを置いてある土間に向かい、
全方位ライトを手に持って台所脇のテーブルに腰掛けてから、
昼間買っておいたチョコレートをミルちゃんにあげた、
そして、何で二人だけで住んでいるのかを尋ねた。
ミルちゃんはサンビチョ王国が亜人協力国になったために、
此処へ逃げてきたと言い出した。
これは捨て置けない話を鹿島は聞いてしまった。
「二人だけでの生活は、どうしているの?」
「お母様が裁縫内職で、時々仕事を貰って、お金を稼いでいるの。」
「ミルちゃん。学校は?」
「家から学校は遠いので、お母様に教わっています。」
母親は、そんなやり取りを聞いていたのか、
「すみません。お客様、私共には詮索されたくない事情がございます。お許し下さい。」
と、頭を下げた。
これ以上は強く拒否されそうなので、
残りのチョコレートを三人で分けて、
白湯を飲みながら食べた。
詮索されたくない事情ならば、
詮索しない方がいいだろうと鹿島は思うが、
捨て置けない話は気になるが、食べ終わると直ぐに部屋に帰った。
掌ライトをかざして部屋に帰り、亜人協力国に併合されて、
不幸になっている人もいる事にショックがあり、
なかなか寝付かれないでいる。
さらに寝付けを悪くする報告がコーA.Iから入った。
宿の周りで五人の男らが、鹿島達を監視しているとの報告である。
鹿島は、男達はどの時点から、監視しだしたのかの報告を求めると、現在監視衛星はトーマス元帥の下でフル活動中らしく、
鹿島の周り監視は頭上と前方のみでしか稼働できない状況で、
後ろの監視がおろそかになっているとの事である。
男たちには動きがなく、
あたかも宿の外だけを警戒しているようだとの事である。
鹿島は、ゲルググ知事からの隠れ護衛ではとも思えた。
朝、鹿島は寝つきが悪かった為か寝坊してしまったようで、
「おじさん。朝ごはんができています。」
と、ミルちゃんに起こされた。
ミルちゃんに手を引かれて、川から運んできたのか、
水がいっぱいの手持ちタライに案内されて、夕べ干してあったタオルと、洗い終わっている脱いでいた服を渡された。
テーブルに行くと、生野菜を大盛りにしたポールが置かれていて、
皿の上にはパンと薄くにスライスした肉が二切れと、
野菜スープが用意されていた。
皿の横には、
大きな肉がはみ出ている葉っぱに包んだ弁当が置かれている。
矢張り鹿島だけの朝食のようであるので、ミルちゃんを呼ぶと、
「あたしたちは、もうパンを食べたから、
今日は一緒に食事はできないよ。」
と言って、鹿島の脇にしゃがみこんだ。
生野菜には、
柑橘系の香りと共に油の味覚もあるが、少し塩が少ないと思った。
鹿島は思い切って、ミルちゃんの将来のことを母親に尋ねた。
「ミルちゃんの将来のためにも友達は必要でしょう。
それに学校で多くのことを学べると、選べる人生の幅が広がります。
ミルちゃんの為に真剣に検討して頂ければ、私は何なりと協力します。」
「私たちを引き裂かないと、ガイア様に誓えますか?」
「貴女に正義があれば、必ず守るとガイア様に誓います。」
「ミルは私が生んだ、私の子供です。これは正義でしょう。」
「話せる範囲で、お話しください。
私には特別なガイア様の加護があります。」
「私はたった一度だけ強姦されて孕みましたが、
強姦した男の家族と配下に、
生まれたばかりのミルを取り上げられました。
戦い後の混乱で、ミルを保護して連れ出してここに逃げてきました。
ミルは私の子です。ミルを連れ去った家族らは敵から辱められて自害し、男は敵に殺されて死んでしまいましたが、
だけど男の一族はまだ指導者として生き延びています。」
神降臨街教会では弱者救済として、
独立資本金を中央銀行からの融資保証人となり、
生活基盤を整えているので、
鹿島はミルちゃん親子の為にその活用を進めようと、
「あなたの事情は理解しました。貴女は裁縫が得意なようですが、
神降臨街では手に職を持った方は、かなりの良い待遇だとのことですが、ミルちゃんと一緒に行きませんか?
そこでテテサ教皇様にすがってみましょう。
良い結果をもたらしてくれると思います。」
母親は滝のように涙を流して、鹿島をにらんでいる。
「ミルはおじさんと一緒に行きたい。友達もいっぱいほしい。」
と、ミルちゃんは立ち上がり、泣いている母親にすがった。
「天国のような街との神降臨街のうわさは聞いています。
テテサ教皇様とお知り合いですか?」
「はい、よく相談に載って貰っています。」
「今の言葉をガイア様に誓って貰えますか?」
「ガイア様に誓います。」
「やったー!おじさんと一緒に旅ができるし、友達もいっぱい作れる。」
ミルちゃんの強い希望で母親も折れてしまい、
鹿島はミルちゃんと母親を伴い、
少ない手荷物と夜具をエミューに乗せて宿場町に向かった。
宿場町で幌荷車とエミューを買い、
食事用旅用品を買ってから服屋に行き、
安い宿代のお礼に服をそれぞれプレゼントした。
後はミルちゃんたちの住んでいた住宅の家賃を払いに、
遠い親戚になる大家である雑貨食料品店で、母親は今までの家賃を払い、鹿島はたっぷりの塩と後は食料品を積み込むだけである。
ミルちゃんに手を引かれて雑貨食料品店に入り、
いろんな香辛料とタップリの塩も買い、
定番のチョコレートを箱ごと買った。
「いい男だね。ミルちゃんもなついているし、
それに懐も暖かそうで、頑張りな。」
と、雑貨食料品店の女将は、
力いっぱいこぶしを握り締めて母親に微笑むと、
母親は真っ赤な顔で首と手を横に振った。
鹿島の又、下手なエミュー操作で神降臨街に向かって出発した。
ミルちゃんは鹿島の横に座り、鹿島の手を握りしめながら大きな声で、
「だったらいいな♬~だったらいいな♪~♪」
と、鹿島の手を振り、鹿島の顔を見ながら歌いだした。
少し休んでは同じ歌詞を繰り返して、鹿島の顔に振り向き歌い続ける。
その歌は楽しいメロディーで、鹿島の心をウキウキとさせた。
コーA.Iからの補佐で、
昼飯用のヒトコブ兎をレーザー銃で仕留めて昼飯の準備に入った。
鹿島の水魔法で水をジャバラバケツに溜めて、
食事の支度を母親に任せながら、ミルちゃんと草笛の練習をした。
肉いっぱいの弁当とヒトコブ兎の料理に、
塩味の利いたスープを頂いて次の宿場に向かった。
次の宿場では難無く二部屋を確保出来たが、
大銀貨二貨幣を宿代と食事代として取られたが、
夕飯は神降臨街名物の肉シチューの触れ込みで出された食事に、
ミルちゃんはお代わりした。
夜、トーマス元帥から連絡が入り、反白石派は全体の三分の一で、
三分の一が皇王のもとに集まり、
残りは日和見(ひよりみ)を決め込んだようである。
日和見(ひよりみ)を決め込んだ領主たちは、
関ヶ原の山並みの裏で待機したまま、山を越えないようである。
トーマス元帥は白石城の攻防戦は、
皇王が到着するまで決着をつけずに、
反白石派をくぎ付けにする為だけにただ防衛のみに徹するようである。
皇王が到着したならば、
一気にハービーハン主力師団四千騎馬隊と、
機動車輌と共に蹴散らすとの事である。
火の国の襲来には、柳生一族が森に誘い込んで、
後ろからヒルルマ第二師団の一部が攻めたてて崖の下に誘い込み、
柳生一族に渡しておいた三八歩兵銃にて打ち取る予定で、
さらにその後で、柳生一族は皇王軍に合流したがっているらしい。
塩の国と鉄の国に対しては、砦の大砲と、
イアラ率いる攻撃型ヘリコプター五機の女傑団空挺部隊が援護して、
エルフエミュー銃撃隊千人が対応するようである。
遅くに、五人の正体不明男たちも同じ宿に宿泊したようだが、
高級宿なのでゆっくりとくつろいでほしいと、
鹿島は、体を休める様にとの心の中でエールを送った。
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