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鹿島が子供たちに夢中になっている間に、戦況は大きく動いていた。
キョクトウ知事と鉄の国テルモト王との講和条約は、
① 亜人協力国は鉄の国テルモト王を代表と決めて援護し、鉄の国を独立国家として認める。
② 商取引は互いに自由として、国境の通過は互いの民であれが自由とする。
③ 鉄の国は、亜人協力国からの輸入に対しては無課税とする。
④ 鉄の国は侵略行為を放棄して、治安維持専守防衛のみとする。
⑤ 鉄の国は人道的な政策を優先する。
⑥ 亜人協力国の民に対しては、鉄の国は逮捕権を放棄して、被告は領事裁判を受ける権利がある。
⑦ 亜人協力国民の生命財産を保証して、脅かすことはできない。
⑧ 主要港の永久借地権。
⑨ 亜人協力国と鉄の国は安保条約を結び、鉄の国は安保負担金を負う。
九ヶ条約の内容は、
マーガレットが聞いたら、卒倒しそうな隠された結果内容がある。
鉄の国から見たら、
③ 関税自主権の放棄。
④ 軍隊放棄。
⑤ 内政干渉 。
⑥ 治外法権。
⑦ 一方的な保証。
⑧ 自治権放棄。
⑨ 献上義務。
鉄の国からしたら無条件降伏であり、完全なる不平等条約である。
ジョシュー知事の狙いは、
鉄の国の崩壊を見据えての条件であろうから、
鹿島は全権を委託しているので、承諾するしかないだろう。
そしてこの条約は、これからの各国家間との基本条約の範となった。
火の国都での第二師団の戦闘は、二重の防壁を難なく破壊して、
反乱軍と反獅子王領主達が中心となって火の国と交渉している最中に、火の国行政内部でクーデターが起こり、
市民の安全と兵への懲罰免除を保証条件に、
獅子王の首を持って現れ降伏してきた。
火の国の新王は、
御前会議にて切腹した火の国獅子団百人頭団長裂熊丸の弟で、
反乱軍指揮官裂虎丸となった。
最初、裂虎丸は反獅子王領主の手前、
火の国をまとめきれないと新国王になるのを拒んだが、
トーマス元帥の説得により、新国王の地位に着いたとの事である。
裂虎丸はすぐに即位して、亜人協力国との将来併合を宣言した。
トーマス元帥は新国王の宣誓を受けて、
直ちに保護国となった火の国への、
出先機関である統監府設置を宣言して、
統監督に第二師団ヒルルマ司令官を任じた。
ヒルルマ司令官は統監督を受けて、第二師団将校に逮捕権を与えると、ガイア教会と協力して人道的に行動するように命じ、
直ちに火の国中の砦と町に兵を分散した。
火の国中の腐敗指導者らの撲滅を目指したトーマス元帥の意向を、
ヒルルマ統監督は理解したようである。
追いはぎハルチャン達の村の人々も無事に探し出されて、
ザツ村の人々が移住している樹海跡地に全員も入植できたので、
子供達全員が無事に両親達と再会できた。
鹿島も運営委員会に火の国総監府の設置を申請した後に、
独立師団ハスネ副司令官を推薦するつもりである。
統監府から総監府に名称を変えるのは、
火の国を保護から正式に亜人協力国州に組み込むためである。
塩の国では、第三師団とハスネ副司令官指揮する独立師団に、
白石軍と柳生軍が加わり、塩の国国王コバヤカ丸を追放して、
日出国の支配下に入った。
第一師団マルティーン司令官は鉄の国から引き返すと、
バーミーズ国王と会見した後に、
あっさりと亜人協力国の州に組み込んでしまった。
マルティーン司令官は、
カントリ国樹海脇の砦に残してきた二万の兵と共に、
バーミーズ国都に両面から進撃したので、
バーミーズ国王は恐怖に駆られて、
自らの命を保証してもらうための併合であった。
鹿島は直ちにバーミーズ国王をバーミーズ州知事に任命し、
バーミーズ国兵を第一師団に組み込むようマルティーン司令官に命じた。
カントリ国難民の扱いは、
すべての難民をカントリ樹海に帰すようバーミーズ州知事に命じて、
カントリ国難民に必要なものを持たせると、
再び樹海の開墾をさせるために呪いの樹海へと追い帰して、
カントリ国を鎖国封鎖させた。
これで闇の樹海から大河までの国々は、
全て統治とコントロール下に入った。
後は、鉄の国と日出国の併合だけであるが、
それは時間の問題で、すべてが亜人協力国の州となるであろう。
トーマス元帥の提案で、
全てを統治した祝賀会が十日後に大ホールにて行われる事が決定した。
鹿島は祝賀会までの十日は、テテサの部屋に寝泊まりしながら、
毎日輸送艦の最上階一等VIP室に通い、子供らの顔を見ていた。
鹿島は子供達と会っている間にもツル殿とミルチャンの事が気になり、
開店したばかりの服仕立て屋に向かうと、
元王女イアラが店を覗き込むように中を伺っている。
「イアラ。何をしているのだ?」
と鹿島が声掛けすると、イアラは一目散に逃げだした。
「待て、待て~。止まれイアラ!」
と声掛けすると、イアラは諦めた様に止まり俯いている。
イアラを伴い近くの甘茶屋に入り、
鹿島は珈琲を注文してイアラは紅茶にした。
「ごめんなさい。テテサ教皇様には、強く念を押されてはいたのですが、どうしても兄上様の子供ミルの事が気になり、
会えないものかと、いえ、一目見ようと思ってしまいました。」
鹿島は腕を組んで考えた結論は、
鹿島は親バカなのか子供には多くの保護者が必要だと思い、
「イアラ。俺の故郷の服装に興味があるかい。
興味があるなら良い店を紹介できるのだが。」
暫くイアラは意味を理解できないのか、きょとんとしているので、
「さっき覗いていた服装店は、
俺の故郷の服を仕立ててくれるらしいのだ。」
イアラはすぐに理解したのか目を輝かした。
「ぜひ紹介してください。十着ぐらい注文します。」
「先ずは一着か二着手ぐらいでいいだろう。」
「はい。ぜひ紹介してください!」
とイアラは席を立ち、目にいっぱいの涙をためて懇願してきた。
不幸な出来事ばかりが続いたイアラであったが、
カントリ国によって占拠された王宮から忽然と消えてしまった姪御を、イアラは必死に探したが、
生みの親ツルも王宮での混乱中に行くか他知れずとなっていたので、
探しようがない状態であった。
捜査官の報告は、
最悪の事態であるカントリ国兵によって既に国外に連れ去らわれたか、最悪の結果になったのではとの報告を聞きたくなかったがために、
捜査は継続されたが、報告をせかすつもりはなかった。
イアラからすれば、
捜査から手を引いてしまったとの自責の念に囚われていた。
鹿島はミルチャンへのお土産に、
多数のケーキを買い込んでイアラを伴い、
開店したばかりの服仕立て屋に向かう事にした。
イアラもやはり多数のケーキを買い込んでいた。
服仕立て屋の扉を開くと、そこでは既に一人の客がいて、
ツルはお客の寸法を測っていた。
鹿島は、客に夢中のツルではなくて、
寸法測りを手伝っていた猫亜人娘と目を合わせて手招きすると、
手土産のケーキ箱をかざしながら、
「こんにちは~。服を注文しに来ました。」
と、にこやかな顔で手土産のケーキ箱を振っている。
鹿島の声に気が付いたツルは、鹿島の顔を見るなり真っ赤な顔になり、
「よくいらしてくださいました。本当によくいらして下さいました。
有難う御座います。」
と言って、寸法測定中のメジャーを猫亜人娘に渡すと、
お客に頭を下げるとすぐに鹿島の前に飛んできた。
「これお土産。そして外で偶然に会ったこの方は、
俺の知り合いで入管局に勤めているイアラ殿です。
こちらの服に興味を持っている様子なので、
一緒に服を注文したいのですが?
こちらの方には借りがあるので支払いは私です」
と言って、ツルの顔に微笑みイアラを紹介しながら、
手土産のケーキ箱を差し出した。
イアラの顔を見たツルの顔は、赤色から青色に変わって絶句している。
「ちょっとお待ちになっていてください。」
と言って、鹿島達に椅子を勧めた後に、
青い顔したまま寸法測定に向かった。
主人のツルの顔を見た猫亜人娘は心配そうな顔になり、
軽蔑目で鹿島達の方に注視している。
隣に居るイアラは震えながら下を向いたままであり、
寸法測定中のツルの手も震えている。
寸法測定中のお客もツルの異常さに気が付いて、
「ツルさん、ちょっと急な用事を思い出したので、
寸法取りは明日にして頂けませんか?」
と言って、お客はツルに微笑んだ。
「閣下には貸しですよ。」
と、鹿島の横を通りながら軽く頭を下げてその婦人は店を出た。
「あのひとは誰?」
と鹿島の前に来たツルに尋ねた。
「商業長官夫人です。」
「ムースン夫人!何の借りを作ったのだろう?」
「私の商品の販売権でしょう。」
「早~。すでに目をつけた!」
「閣下のおかげで御座います。有難う御座います。
私もムースン商会を通しての販売に期待しています。」
と言って、鹿島達を客室に案内しながら、
猫亜人娘にお土産のケーキ箱を渡して、
「ミルに、シン様がお越しくださっているので、
買っておいた珈琲を点(た)てて、
持ってくるように伝えていただけませんか。」
鹿島達三人が気まずく沈黙していると、
子供達のにぎやかな声がドアの外でしだした。
ドアを開くなり、
「シン閣下様。珈琲です。」
と、鹿島にウルウルした目を向けながらのミルちゃんと、
大勢の子供達は危なし気にコーヒーカップを持って入ってきた。
入ってきた多くの子供達は多種多様人種である。
ミルちゃんの手に持ったカップを心配したツルの手を、
ミルちゃんは避けるようにしてコーヒーカップを鹿島の前に置き、
鹿島の横に座った。
「あ~。本当だ!だったらいいなの人は、提督閣下様だ!」
とそれぞれが手にした珈琲とケーキを乗せた皿を手にしながら、
多種多様な人種の子供達が騒ぎ出した。
「ね~、お母様。ここであたしたちもシン閣下様と一緒に食べたいです。だめですか?」
「いいのでね~。一緒に食べよう。」
と、鹿島が提案するなり子供達は部屋を飛び出していき、
各自がいろんな種類のジュースと皿に二個のケーキを乗せて再度入ってきた。
客室の椅子はそれぞれ満員となり、
弾き出された様にミルちゃんは鹿島の膝に乗ってきた。
それを見ているイアラの目は涙ぐんでいる。
「俺と彼女からの注文を、お受けできますでしょうか?」
ツルも落ち着いた様子で、顔色も少し桃色がかっている。
「喜んでお受けします。
先にイアラ様の注文希望からで宜しいでしょうか?」
と言って、傍の女性モデル表紙本をイアラに差し出した。
そこには、銀河連合の街中を歩く女性モデルがいて、
「文字と、、、閣下の故郷の街ですか?」
と、イアラは女性モデルよりも、
理解出来ないビルと空中に浮かぶ道路を見つけ出したようで、
目を丸くしだした。
「やっぱり、イアラ様もそこに気が付かれましたか?」
と、ツルの顔がほころんだ。
「マーガレット様から聞いたのですが、
閣下様達の故郷では一般の街だそうです。」
と得意げにツルはイアラに説明し出した。
女性モデルはそっち抜きで、ツルは表紙本をめくりながら、
街の表情を的確に説明をしだした。
二人は表紙本の街並みに感動しながら、意気投合し始めている。
亜人を含んだ子供達はケーキに夢中であるが、
ミルちゃんは表紙本の街並みに興味を持ったようで、
鹿島を払いのけてイアラの膝に座ると、母親の説明に聞き入っていた。
それに気づいたツルは驚いたように、
「あら!矢張り血は濃いようですね。」
と、イアラの膝に座って居るミルちゃんを見つめた。
イアラは申し訳なさそうな顔をして、ミルちゃんを強く抱きしめた。
「ミル。後ろの人は、ミルの叔母さんでお父様の妹さんですよ。」
と、ツル殿はすべてが吹き切れたように微笑んでいる。
「和解出来そうですか?」
と、鹿島はツル殿に問いかけた。
「和解も何も。ミルが認めているのに、
私だけの我儘はできないでしょう。」
と目に涙をためて頭を縦に振っている
二人の会話にイアラは大声で泣きだして、
「本当に申し訳ありませんでした。如何様にも償いは致します。
無態度であった兄上様とわれら一族をお許しください。」
とミルちゃんを抱きしめながら、イアラの大泣き声は続いた。
イアラとミルちゃん達を客室に残して、
鹿島の背広仕立て寸法取りの最中に、
「閣下様お願いがございます。」
「いいですよ。俺にできることであれば、何なりと。」
「平常な一夜を供に。」
と、か細い声で呟いた。
「え、、。」鹿島が低い声で驚きの声を出すと、
「あの事件以来、男性恐怖症になり、
以後男性に近寄られますと鳥肌が立つのですが、
なぜか、、、最初から閣下様とは平気な人だと感じていました。
閣下様から平常な、、、正常なお情けをいただければ、
男性恐怖症は治るかもしれません。」
ツルは手を震わせて声を絞るようにうめきにも似た、
か細い独り言を言っているような感じで告白している。
「分かった。俺から改めてお願いします。」
と赤い微粒子に聞こえないように小声で返事した。
その夜の夕食にイアラと鹿島は、
ツルの手料理ハンバーグをご馳走になり、イアラを送り出したのちに、ツルの寝室に留まった。
行為前にはツルは震えていたが、
震えはすぐに収まり正常な反応を示した。
そして鹿島は打ち上げの花火の開花寸前に、
何者かに尻を掴まれてツルの腹を汚した。
キョクトウ知事と鉄の国テルモト王との講和条約は、
① 亜人協力国は鉄の国テルモト王を代表と決めて援護し、鉄の国を独立国家として認める。
② 商取引は互いに自由として、国境の通過は互いの民であれが自由とする。
③ 鉄の国は、亜人協力国からの輸入に対しては無課税とする。
④ 鉄の国は侵略行為を放棄して、治安維持専守防衛のみとする。
⑤ 鉄の国は人道的な政策を優先する。
⑥ 亜人協力国の民に対しては、鉄の国は逮捕権を放棄して、被告は領事裁判を受ける権利がある。
⑦ 亜人協力国民の生命財産を保証して、脅かすことはできない。
⑧ 主要港の永久借地権。
⑨ 亜人協力国と鉄の国は安保条約を結び、鉄の国は安保負担金を負う。
九ヶ条約の内容は、
マーガレットが聞いたら、卒倒しそうな隠された結果内容がある。
鉄の国から見たら、
③ 関税自主権の放棄。
④ 軍隊放棄。
⑤ 内政干渉 。
⑥ 治外法権。
⑦ 一方的な保証。
⑧ 自治権放棄。
⑨ 献上義務。
鉄の国からしたら無条件降伏であり、完全なる不平等条約である。
ジョシュー知事の狙いは、
鉄の国の崩壊を見据えての条件であろうから、
鹿島は全権を委託しているので、承諾するしかないだろう。
そしてこの条約は、これからの各国家間との基本条約の範となった。
火の国都での第二師団の戦闘は、二重の防壁を難なく破壊して、
反乱軍と反獅子王領主達が中心となって火の国と交渉している最中に、火の国行政内部でクーデターが起こり、
市民の安全と兵への懲罰免除を保証条件に、
獅子王の首を持って現れ降伏してきた。
火の国の新王は、
御前会議にて切腹した火の国獅子団百人頭団長裂熊丸の弟で、
反乱軍指揮官裂虎丸となった。
最初、裂虎丸は反獅子王領主の手前、
火の国をまとめきれないと新国王になるのを拒んだが、
トーマス元帥の説得により、新国王の地位に着いたとの事である。
裂虎丸はすぐに即位して、亜人協力国との将来併合を宣言した。
トーマス元帥は新国王の宣誓を受けて、
直ちに保護国となった火の国への、
出先機関である統監府設置を宣言して、
統監督に第二師団ヒルルマ司令官を任じた。
ヒルルマ司令官は統監督を受けて、第二師団将校に逮捕権を与えると、ガイア教会と協力して人道的に行動するように命じ、
直ちに火の国中の砦と町に兵を分散した。
火の国中の腐敗指導者らの撲滅を目指したトーマス元帥の意向を、
ヒルルマ統監督は理解したようである。
追いはぎハルチャン達の村の人々も無事に探し出されて、
ザツ村の人々が移住している樹海跡地に全員も入植できたので、
子供達全員が無事に両親達と再会できた。
鹿島も運営委員会に火の国総監府の設置を申請した後に、
独立師団ハスネ副司令官を推薦するつもりである。
統監府から総監府に名称を変えるのは、
火の国を保護から正式に亜人協力国州に組み込むためである。
塩の国では、第三師団とハスネ副司令官指揮する独立師団に、
白石軍と柳生軍が加わり、塩の国国王コバヤカ丸を追放して、
日出国の支配下に入った。
第一師団マルティーン司令官は鉄の国から引き返すと、
バーミーズ国王と会見した後に、
あっさりと亜人協力国の州に組み込んでしまった。
マルティーン司令官は、
カントリ国樹海脇の砦に残してきた二万の兵と共に、
バーミーズ国都に両面から進撃したので、
バーミーズ国王は恐怖に駆られて、
自らの命を保証してもらうための併合であった。
鹿島は直ちにバーミーズ国王をバーミーズ州知事に任命し、
バーミーズ国兵を第一師団に組み込むようマルティーン司令官に命じた。
カントリ国難民の扱いは、
すべての難民をカントリ樹海に帰すようバーミーズ州知事に命じて、
カントリ国難民に必要なものを持たせると、
再び樹海の開墾をさせるために呪いの樹海へと追い帰して、
カントリ国を鎖国封鎖させた。
これで闇の樹海から大河までの国々は、
全て統治とコントロール下に入った。
後は、鉄の国と日出国の併合だけであるが、
それは時間の問題で、すべてが亜人協力国の州となるであろう。
トーマス元帥の提案で、
全てを統治した祝賀会が十日後に大ホールにて行われる事が決定した。
鹿島は祝賀会までの十日は、テテサの部屋に寝泊まりしながら、
毎日輸送艦の最上階一等VIP室に通い、子供らの顔を見ていた。
鹿島は子供達と会っている間にもツル殿とミルチャンの事が気になり、
開店したばかりの服仕立て屋に向かうと、
元王女イアラが店を覗き込むように中を伺っている。
「イアラ。何をしているのだ?」
と鹿島が声掛けすると、イアラは一目散に逃げだした。
「待て、待て~。止まれイアラ!」
と声掛けすると、イアラは諦めた様に止まり俯いている。
イアラを伴い近くの甘茶屋に入り、
鹿島は珈琲を注文してイアラは紅茶にした。
「ごめんなさい。テテサ教皇様には、強く念を押されてはいたのですが、どうしても兄上様の子供ミルの事が気になり、
会えないものかと、いえ、一目見ようと思ってしまいました。」
鹿島は腕を組んで考えた結論は、
鹿島は親バカなのか子供には多くの保護者が必要だと思い、
「イアラ。俺の故郷の服装に興味があるかい。
興味があるなら良い店を紹介できるのだが。」
暫くイアラは意味を理解できないのか、きょとんとしているので、
「さっき覗いていた服装店は、
俺の故郷の服を仕立ててくれるらしいのだ。」
イアラはすぐに理解したのか目を輝かした。
「ぜひ紹介してください。十着ぐらい注文します。」
「先ずは一着か二着手ぐらいでいいだろう。」
「はい。ぜひ紹介してください!」
とイアラは席を立ち、目にいっぱいの涙をためて懇願してきた。
不幸な出来事ばかりが続いたイアラであったが、
カントリ国によって占拠された王宮から忽然と消えてしまった姪御を、イアラは必死に探したが、
生みの親ツルも王宮での混乱中に行くか他知れずとなっていたので、
探しようがない状態であった。
捜査官の報告は、
最悪の事態であるカントリ国兵によって既に国外に連れ去らわれたか、最悪の結果になったのではとの報告を聞きたくなかったがために、
捜査は継続されたが、報告をせかすつもりはなかった。
イアラからすれば、
捜査から手を引いてしまったとの自責の念に囚われていた。
鹿島はミルチャンへのお土産に、
多数のケーキを買い込んでイアラを伴い、
開店したばかりの服仕立て屋に向かう事にした。
イアラもやはり多数のケーキを買い込んでいた。
服仕立て屋の扉を開くと、そこでは既に一人の客がいて、
ツルはお客の寸法を測っていた。
鹿島は、客に夢中のツルではなくて、
寸法測りを手伝っていた猫亜人娘と目を合わせて手招きすると、
手土産のケーキ箱をかざしながら、
「こんにちは~。服を注文しに来ました。」
と、にこやかな顔で手土産のケーキ箱を振っている。
鹿島の声に気が付いたツルは、鹿島の顔を見るなり真っ赤な顔になり、
「よくいらしてくださいました。本当によくいらして下さいました。
有難う御座います。」
と言って、寸法測定中のメジャーを猫亜人娘に渡すと、
お客に頭を下げるとすぐに鹿島の前に飛んできた。
「これお土産。そして外で偶然に会ったこの方は、
俺の知り合いで入管局に勤めているイアラ殿です。
こちらの服に興味を持っている様子なので、
一緒に服を注文したいのですが?
こちらの方には借りがあるので支払いは私です」
と言って、ツルの顔に微笑みイアラを紹介しながら、
手土産のケーキ箱を差し出した。
イアラの顔を見たツルの顔は、赤色から青色に変わって絶句している。
「ちょっとお待ちになっていてください。」
と言って、鹿島達に椅子を勧めた後に、
青い顔したまま寸法測定に向かった。
主人のツルの顔を見た猫亜人娘は心配そうな顔になり、
軽蔑目で鹿島達の方に注視している。
隣に居るイアラは震えながら下を向いたままであり、
寸法測定中のツルの手も震えている。
寸法測定中のお客もツルの異常さに気が付いて、
「ツルさん、ちょっと急な用事を思い出したので、
寸法取りは明日にして頂けませんか?」
と言って、お客はツルに微笑んだ。
「閣下には貸しですよ。」
と、鹿島の横を通りながら軽く頭を下げてその婦人は店を出た。
「あのひとは誰?」
と鹿島の前に来たツルに尋ねた。
「商業長官夫人です。」
「ムースン夫人!何の借りを作ったのだろう?」
「私の商品の販売権でしょう。」
「早~。すでに目をつけた!」
「閣下のおかげで御座います。有難う御座います。
私もムースン商会を通しての販売に期待しています。」
と言って、鹿島達を客室に案内しながら、
猫亜人娘にお土産のケーキ箱を渡して、
「ミルに、シン様がお越しくださっているので、
買っておいた珈琲を点(た)てて、
持ってくるように伝えていただけませんか。」
鹿島達三人が気まずく沈黙していると、
子供達のにぎやかな声がドアの外でしだした。
ドアを開くなり、
「シン閣下様。珈琲です。」
と、鹿島にウルウルした目を向けながらのミルちゃんと、
大勢の子供達は危なし気にコーヒーカップを持って入ってきた。
入ってきた多くの子供達は多種多様人種である。
ミルちゃんの手に持ったカップを心配したツルの手を、
ミルちゃんは避けるようにしてコーヒーカップを鹿島の前に置き、
鹿島の横に座った。
「あ~。本当だ!だったらいいなの人は、提督閣下様だ!」
とそれぞれが手にした珈琲とケーキを乗せた皿を手にしながら、
多種多様な人種の子供達が騒ぎ出した。
「ね~、お母様。ここであたしたちもシン閣下様と一緒に食べたいです。だめですか?」
「いいのでね~。一緒に食べよう。」
と、鹿島が提案するなり子供達は部屋を飛び出していき、
各自がいろんな種類のジュースと皿に二個のケーキを乗せて再度入ってきた。
客室の椅子はそれぞれ満員となり、
弾き出された様にミルちゃんは鹿島の膝に乗ってきた。
それを見ているイアラの目は涙ぐんでいる。
「俺と彼女からの注文を、お受けできますでしょうか?」
ツルも落ち着いた様子で、顔色も少し桃色がかっている。
「喜んでお受けします。
先にイアラ様の注文希望からで宜しいでしょうか?」
と言って、傍の女性モデル表紙本をイアラに差し出した。
そこには、銀河連合の街中を歩く女性モデルがいて、
「文字と、、、閣下の故郷の街ですか?」
と、イアラは女性モデルよりも、
理解出来ないビルと空中に浮かぶ道路を見つけ出したようで、
目を丸くしだした。
「やっぱり、イアラ様もそこに気が付かれましたか?」
と、ツルの顔がほころんだ。
「マーガレット様から聞いたのですが、
閣下様達の故郷では一般の街だそうです。」
と得意げにツルはイアラに説明し出した。
女性モデルはそっち抜きで、ツルは表紙本をめくりながら、
街の表情を的確に説明をしだした。
二人は表紙本の街並みに感動しながら、意気投合し始めている。
亜人を含んだ子供達はケーキに夢中であるが、
ミルちゃんは表紙本の街並みに興味を持ったようで、
鹿島を払いのけてイアラの膝に座ると、母親の説明に聞き入っていた。
それに気づいたツルは驚いたように、
「あら!矢張り血は濃いようですね。」
と、イアラの膝に座って居るミルちゃんを見つめた。
イアラは申し訳なさそうな顔をして、ミルちゃんを強く抱きしめた。
「ミル。後ろの人は、ミルの叔母さんでお父様の妹さんですよ。」
と、ツル殿はすべてが吹き切れたように微笑んでいる。
「和解出来そうですか?」
と、鹿島はツル殿に問いかけた。
「和解も何も。ミルが認めているのに、
私だけの我儘はできないでしょう。」
と目に涙をためて頭を縦に振っている
二人の会話にイアラは大声で泣きだして、
「本当に申し訳ありませんでした。如何様にも償いは致します。
無態度であった兄上様とわれら一族をお許しください。」
とミルちゃんを抱きしめながら、イアラの大泣き声は続いた。
イアラとミルちゃん達を客室に残して、
鹿島の背広仕立て寸法取りの最中に、
「閣下様お願いがございます。」
「いいですよ。俺にできることであれば、何なりと。」
「平常な一夜を供に。」
と、か細い声で呟いた。
「え、、。」鹿島が低い声で驚きの声を出すと、
「あの事件以来、男性恐怖症になり、
以後男性に近寄られますと鳥肌が立つのですが、
なぜか、、、最初から閣下様とは平気な人だと感じていました。
閣下様から平常な、、、正常なお情けをいただければ、
男性恐怖症は治るかもしれません。」
ツルは手を震わせて声を絞るようにうめきにも似た、
か細い独り言を言っているような感じで告白している。
「分かった。俺から改めてお願いします。」
と赤い微粒子に聞こえないように小声で返事した。
その夜の夕食にイアラと鹿島は、
ツルの手料理ハンバーグをご馳走になり、イアラを送り出したのちに、ツルの寝室に留まった。
行為前にはツルは震えていたが、
震えはすぐに収まり正常な反応を示した。
そして鹿島は打ち上げの花火の開花寸前に、
何者かに尻を掴まれてツルの腹を汚した。
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ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
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ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
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