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聖者とのキス
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「………あんたに俺を、抱いてもらおうと思ってな…」
俺がそう言うと、聖者は眉をひそめた。
「どういうことだ?」
まあ、そうだろうな。
俺は男。聖者も男だ。
「あんたは神の代理人だ。そのあんたが穢れれば、この地に対する神の力が弱くなり、俺の仕える方々が地上に出てこられるってことさ」
「………おまえ、悪魔の僕か」
「ああ、そうだ」
険しい顔になった聖者に頷いて、ニヤリと笑ってみせた。
気分がいい。やっと一人の人間として認識されたような気がする。
さっきまでの、自分に救いを求める人間を見るような変に優しい目つきは、なんとなく見下されているようで気に食わなかったから。
「だから俺は、あんたを誘惑しにきたんだ」
唇が触れそうなほどに顔を近づけて囁いてやった。
聖者というくらいだ。きっと今まで女とだって、その手の事をしたことがないに決まってる。
その証拠に顔がみるみる赤く…
…ならないな?
驚きすぎて反応が返せないのかもしれないな。
予想とは違う反応だが、気にせず聖者に俺の顔を見せつける。
整っていると褒められ、時にトチ狂った男に「誘ってるんだろ?」と押し倒されかけることもある顔を。
睫毛が長く鼻筋は細く、切れ長の目に薄い唇。日にさらされても色の変わらない白い肌。
筋肉のつきにくいひょろりとした体型も相まって、時に女扱いされるこの顔は好きじゃない。
けれど今は都合がよかった。
聖者を誘惑するという目的においては。
こんな顔でも俺は男だ。
神の代理人である聖者が男を抱いたりすれば…どうなるかは想像に難くない。きっと聖者はその聖性を失い、地上への神の影響力は落ち、この世に悪魔や魔物があふれかえる。
悪魔たちも、多分そうなるんじゃないかと言っていた。だからきっと、そうなるに違いない。
…そうしてみせる。
「俺を誘惑…か。どうするつもりだ?」
落ちついた表情で俺を見上げる聖者の上に、脚を開いてまたがった。二人分の重みに抗議するかのように、ギシリと椅子が軋む。
聖者の顔が至近距離にある。
女顔の俺とは違う、整ってはいるけれど男らしい顔。
…俺もこういう顔に生まれていれば……
思い出したくもない過去を思い出して、眉間にシワが寄る。
「……こうするんだよ」
俺と聖者の唇が重なり、ちゅっと音が鳴った。
…俺の初めてのまともなキス。
キスどころか、俺は身体の全てをこの男に捧げなければならない。
この男を、堕落させる為に…。
夢の中でなら、悪魔たちに色々されてきた。
それこそ身体の隅々まで、散々いいようにされてきた。
けれど生身の男とこういう風に触れ合うのは、酔っ払いに無理矢理キスをされた経験くらいしかない。その時は怒りしか湧かなくて、思いきりぶん殴ったけど。
聖者とのキスに嫌悪を感じなかったことに驚きつつも、もう一度唇を触れ合わせた。
ちゅっ…
…意外と悪くないかもしれない。
そっと重なった唇を離すと、聖者が目を丸くしていた。
きっと初めてのキスだったのだろう。
なんとなく優越感で口角が上がる。
もう一度…
そう思って唇を近づけた時、聖者の手が俺の後頭部を強く掴んだ。
「…乙女か」
「え…?」
イラっとしたような声に戸惑う間も無く、唇が熱いもので塞がれ、ぬるりとした何かが口の中に入ってきた。
っ…これっ…
夢の中で、悪魔やその眷属達にされていたのと同じキス。
舌を絡める深いキス。
どうしてこいつがこんなの知ってーー
「んうっ…」
そんな疑問も長くは続かない。
激しく絡められる舌に、思考がかき乱されていく。
っ…キスっ…夢よりずっと…ヤバいっ…
悪魔たちから言われていた事がある。
神の結界が人間界と魔界を隔てている所為で、悪魔たちは夢を通じてしか俺と接触できない。夢の中で触れるその感覚は、現実の十分の一くらいにまで落ちると。
でも…こんなに違うなんてっ…
正直甘く見ていた。
十分の一とはいえキスはキスだと。
どうせ大差ないだろうと。
けれど舌をねっとりと絡められるたびに、頭が蕩け落ちそうだった。
頭を押さえているのとは反対側の聖者の手が、シャツの裾から入ってくる。そして直接、背中を撫で回し始めた。
「んっ…んんっ…んぅっ…」
「反応は悪くないな」
ボソリと呟いた聖者の唇がまた重ねられる。
舌もだけど唇の感触も気持ちいい。
弾力のある程よい厚さのそれが、俺の唇を啄んでは吐息を吹き込む。
…ヤバい…なんか……キス…気持ちいい……
俺がそう言うと、聖者は眉をひそめた。
「どういうことだ?」
まあ、そうだろうな。
俺は男。聖者も男だ。
「あんたは神の代理人だ。そのあんたが穢れれば、この地に対する神の力が弱くなり、俺の仕える方々が地上に出てこられるってことさ」
「………おまえ、悪魔の僕か」
「ああ、そうだ」
険しい顔になった聖者に頷いて、ニヤリと笑ってみせた。
気分がいい。やっと一人の人間として認識されたような気がする。
さっきまでの、自分に救いを求める人間を見るような変に優しい目つきは、なんとなく見下されているようで気に食わなかったから。
「だから俺は、あんたを誘惑しにきたんだ」
唇が触れそうなほどに顔を近づけて囁いてやった。
聖者というくらいだ。きっと今まで女とだって、その手の事をしたことがないに決まってる。
その証拠に顔がみるみる赤く…
…ならないな?
驚きすぎて反応が返せないのかもしれないな。
予想とは違う反応だが、気にせず聖者に俺の顔を見せつける。
整っていると褒められ、時にトチ狂った男に「誘ってるんだろ?」と押し倒されかけることもある顔を。
睫毛が長く鼻筋は細く、切れ長の目に薄い唇。日にさらされても色の変わらない白い肌。
筋肉のつきにくいひょろりとした体型も相まって、時に女扱いされるこの顔は好きじゃない。
けれど今は都合がよかった。
聖者を誘惑するという目的においては。
こんな顔でも俺は男だ。
神の代理人である聖者が男を抱いたりすれば…どうなるかは想像に難くない。きっと聖者はその聖性を失い、地上への神の影響力は落ち、この世に悪魔や魔物があふれかえる。
悪魔たちも、多分そうなるんじゃないかと言っていた。だからきっと、そうなるに違いない。
…そうしてみせる。
「俺を誘惑…か。どうするつもりだ?」
落ちついた表情で俺を見上げる聖者の上に、脚を開いてまたがった。二人分の重みに抗議するかのように、ギシリと椅子が軋む。
聖者の顔が至近距離にある。
女顔の俺とは違う、整ってはいるけれど男らしい顔。
…俺もこういう顔に生まれていれば……
思い出したくもない過去を思い出して、眉間にシワが寄る。
「……こうするんだよ」
俺と聖者の唇が重なり、ちゅっと音が鳴った。
…俺の初めてのまともなキス。
キスどころか、俺は身体の全てをこの男に捧げなければならない。
この男を、堕落させる為に…。
夢の中でなら、悪魔たちに色々されてきた。
それこそ身体の隅々まで、散々いいようにされてきた。
けれど生身の男とこういう風に触れ合うのは、酔っ払いに無理矢理キスをされた経験くらいしかない。その時は怒りしか湧かなくて、思いきりぶん殴ったけど。
聖者とのキスに嫌悪を感じなかったことに驚きつつも、もう一度唇を触れ合わせた。
ちゅっ…
…意外と悪くないかもしれない。
そっと重なった唇を離すと、聖者が目を丸くしていた。
きっと初めてのキスだったのだろう。
なんとなく優越感で口角が上がる。
もう一度…
そう思って唇を近づけた時、聖者の手が俺の後頭部を強く掴んだ。
「…乙女か」
「え…?」
イラっとしたような声に戸惑う間も無く、唇が熱いもので塞がれ、ぬるりとした何かが口の中に入ってきた。
っ…これっ…
夢の中で、悪魔やその眷属達にされていたのと同じキス。
舌を絡める深いキス。
どうしてこいつがこんなの知ってーー
「んうっ…」
そんな疑問も長くは続かない。
激しく絡められる舌に、思考がかき乱されていく。
っ…キスっ…夢よりずっと…ヤバいっ…
悪魔たちから言われていた事がある。
神の結界が人間界と魔界を隔てている所為で、悪魔たちは夢を通じてしか俺と接触できない。夢の中で触れるその感覚は、現実の十分の一くらいにまで落ちると。
でも…こんなに違うなんてっ…
正直甘く見ていた。
十分の一とはいえキスはキスだと。
どうせ大差ないだろうと。
けれど舌をねっとりと絡められるたびに、頭が蕩け落ちそうだった。
頭を押さえているのとは反対側の聖者の手が、シャツの裾から入ってくる。そして直接、背中を撫で回し始めた。
「んっ…んんっ…んぅっ…」
「反応は悪くないな」
ボソリと呟いた聖者の唇がまた重ねられる。
舌もだけど唇の感触も気持ちいい。
弾力のある程よい厚さのそれが、俺の唇を啄んでは吐息を吹き込む。
…ヤバい…なんか……キス…気持ちいい……
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